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桜が咲いた。

愛しの恋人が珍しくウキウキと興奮した声で受話器の奥からソレを告げるのを聞いて心なしか自分も笑顔になる。
毎年、桜が咲くと菊は俺を２回花見に誘う。
１回目はいつもの騒がしいメンバーと共に、
２回目は勿論、俺と２人だけで。・・・所詮、デートというやつだ
もう何十年もそのやり方でやってきたから今年もそうだと思っていた。
だから、菊の言葉に俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった
「今年は始めにアーサーさんと二人で行きたいのです」
「え？」
気づいたときには遅く、俺の裏返った声は回線を通じて地球の反対側に居る菊の耳に届いてしまったらしい。
クスクスと小さな笑い声が聞こえる
「笑うなよ・・・」
「すみません。あまりに可愛らしかったもので」
「フォローになってねぇよ！！もう嫌だ。菊なんて、」
「嫌い、ですか？」
「・・・・・・・・・・・好きにきまってんだろ。ばかぁ」
小さく「ツンデレ萌！」とか聞こえた気がするが空耳だと願いたい
「んで、先に俺と、その―――――デートしたいんだ？」
「いえ、全くの思い付きなんですけど」
未だに笑いを含んだ甘い声で菊は呟く
「いつも皆さんとの花見を桜の盛りの時期に合わせるのでアーサーさんと見る桜は悲しい事になってしまうなぁ、と」
「今更気づいたのかよ」
「すみません。いつもあなたの顔を見るのに必死で桜を気にしてなかったんですよ」
私は花より団子派なので。

なんて囁いた言葉に思わず赤面する
コイツは普段ストイックで恋愛なんて全然って表情してるくせに何故か俺を前にすると慎みとか八ッ橋とか色んな大事なものが飛んでいく。フランシスなんかよりもよっぽどたちが悪い。
「まぁそういう事で、今年ぐらいは貴方と満開の桜を望みたいなぁと思いまして」
「じ、じゃあ今からお前の家に向かう」
「それはずいぶんと気の早い」
「いや、仕事も大体終わってることにしとくから！気にすんな！」
「アーサーさん！お仕事は大切にしてください！」
「うるせぇ！俺がやる分は終わってんだよ」
大部無理があったがゴリ押しで何とか菊の家に向かう許可を得ることが出来た。
仕事なんてやってられるか！！