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スピカ@黒桜
スピカ@黒桜
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子羊は魔法で踊る

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爽やかな初夏の木漏れ日は崩れかけた壁に遮られてここまで入ってこない
薄暗く、ジメジメとしたその場所は正に自分に似合いの場所だ。
ここならば誰にも見つからない
だからこそ、自分は今ここに隠れているのだ

地面は常に湿っているから零れ落ちた涙の後も残らない
ガラスの欠片がいっぱい転がっているから体中に散らばる傷跡の責任を押し付けられる
それに、誰にも見つからない。
フゥとため息をつけば限界だったのか瞳から生ぬるくて塩辛い液体が零れ落ちる
跡を残すことなく地に沁み込んでいくソイツが羨ましくなった
「俺も地面に溶けちゃえばいいのに」
そうやって跡形もなく消え去ればこの苦しみは消えるのだろうか
そうすれば楽になれるんじゃないだろうか
いっそのこと散らばるガラス片で手首だか首だかを貫いてしまえば、

小さく震える白い手が一番鋭そうな欠片を握りしめる
冷たいソレが肉に切り込んで手のひらに薄く紅が滲んだ
これを青白い手首にあてがえたのなら、
深く押し付けてしまえたのなら、
そんなとき

「やれやれ、こんなところにいましたか」
手元が暗くなった
おずおずと見上げると艶めく黒髪を春風になびかせた姿があった
「おいでなさいアーサーさん」
体が魔法にかけられたように勝手に動きだす
「菊、」
「あぁ、血が滲んでいます。後で手当てをせねば・・・」
「ご、ごめん」
「謝らずともよいのですよ」
やわらかくて暖かい手が自分の病的な白さのソレを包む
「菊、汚れちゃう」
「貴方から流れ出たものなのですから、」
そう言って菊は俺の手に口づける

「さぁ、ちゃんと綺麗になったらおやつの時間ですよ」
その言葉にコクリとうなずき、俺は菊に手を引かれて自分の居場所にサヨナラと手を振った



作品名:子羊は魔法で踊る 作家名:スピカ@黒桜