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スピカ@黒桜
スピカ@黒桜
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子羊は魔法で踊る

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ピピピ、と冷たい電気音で叩き起こされた朝は最悪だ。

それも、幸せな昔の思い出を夢見ていた日なんかは特に。

いってきます、の挨拶もせずに家を飛び出しヘルメットの顎紐を止めずに自転車を車より早く走らせる
「やべぇ、また遅刻かよ・・・」
ふと目に映った公園の時計は午前8時過ぎを指しておりますます希望が消えていく
どうせならさぼってしまおうか
学校に行ったって大していい事はない
だけど自分の足は自然と古びた校舎へと自転車を走らせる

半ば放り投げるようにして自転車を置き、ロッカーへと走る
春だというのに夏のように元気な太陽はジリジリと肌を焦がしてコンクリートを温める
なんとかロッカーについて、そしてため息をつく
また、だ。
他と比べてやけにボロボロになった俺の空間には昨日、確かに入れたはずの靴がない
典型的なその行為にむしろ笑ってしまう
「またかよ・・・」
どうせゴミ捨て場か、体育館裏の茂みか、そんなとこに隠れているんだろう。
今から取りに行っては自転車で駆け抜けた意味もなくなってしまうが仕方がない

こんな姿をクラスにいる彼は知らないのだから



重い足を叱咤して校舎の裏にまで回る
道路沿いに設置されたゴミ捨て場に、ソレはあった
「あーよかった。まだ回収されてないな」
奇跡的に残っていた靴に履きかえて教室へ向かう
靴の外側に汚れがないのも助かった
油性ペンで書かれるとまた新しく買わなければいけないからだ
先週買ったばかりなため、これ以上新調すると流石に気づかれる
よかった、と胸をなでおろしながら教室のスライド式の扉を開けるとちょうど担任の連絡の最中だったらしくあきれ顔をされながらも席に着くように促された
すみません、と頭を下げて歩きながらも痛いほどの視線が俺を貫く
クスクスと押し殺したような笑い声は学年一男好きな某女子の声だろう
微かに落書きされた後の残る椅子に座って大して重要ではない話を聞く
今日も、いつもと変化はないようだ



「アーサーさん、また遅刻しちゃったんですか?」
菊が頬を膨らませながら問いかけてきたのは一限目の数学が終わってからの事だった
「悪ぃ、少し寝坊しちまって」
「全く・・・仕方のない方ですね。昔から変わらない」
「う、うるせぇ」
「そろそろ成長してくださいよ?」
菊のデコピンに痛ぇと声を上げると次は優しく撫でてきた
「菊、」
「どうしましたか?」
「ありがとう」
「えぇ!?私何かしましたか?」
「いや、別に」
「・・・おかしな人」

クスリと含み笑いをした彼は知らない
その後ろで同じようでいて全く違う笑い声を漏らす人々の視線の意味を


作品名:子羊は魔法で踊る 作家名:スピカ@黒桜