子羊は魔法で踊る
予想どおり、彼は昔いつも逃げ込んでいた崩れた壁の後ろにいた
「アーサーさん」
「だめ、菊、来ちゃだめぇ」
「嫌です」
華奢な背中に抱きついて首筋に顔をうずめる
「俺、皆に嫌われてるから、俺と一緒に居たら菊も嫌われちゃう」
「大丈夫です。皆さんの事は叱っておきました。もう貴方に話しかけたらいけないって言いました。だからもう大丈夫です。アーサーさん」
アーサーの顔を覗き込むと確かに、泣いていた
とても美しい
白磁の頬は薔薇色に染まって薄く涙の線がその上をつたっている
明るい緑の瞳は表面に涙の幕をはって潤んでおり、眼元は赤く染まっている
思わず眼元に吸い付いて涙を拭う
「ひぁっ」
「アーサーさんの涙は甘いですねぇ」
「や、だめぇ、菊ぅ汚い」
「・・・・・前にも言ったでしょう?」
貴方の体から流れたものなのだから
「愛してますよアーサー」
その言葉に潤む瞳がとうとう決壊したのがたまらなくて抱きしめる力を強くした