子羊は魔法で踊る
「どうです?本田さん」
「俺達頑張ったんですよ、どうやったらアイツ泣かせられるか考えて」
「アイツ絶対本田さんの事好きじゃないですか、だから」
「やべぇよな、気持ち悪ぃ」
「わざわざ付き合ってやってんのに逆に懐きやがって」
「すっげーうぜぇ」
ギャハハハハと笑うクラスメイトに菊はそっと笑いかける
「なかなか酷い事をなさいますね」
「だろ?」
「全く、私の言ったことがよく理解できていないようで・・・この駄犬共が」
菊の低い声に笑い声がピタリとやむ
「・・・・え?」
「私はアーサーさんを泣かせろとは言いましたけど苛めろなんて言ってませんよ?泣かせるために暴力しか思いつかないなんて全く単純思考な頭ですね。本当に人間ならもっと頭を使って下さいな・・・それとも本当に犬なんですか?」
「おい、てめぇ言わせておけば」
「自分でやれよな女王様?」
喧嘩っ早い事で知られる男子生徒が向かってくる
が、
「お黙りなさい。家ごとつぶして差し上げましょうか?」
この一言でぴたりと静まる
次期社長の名はこういうときに役立つ
「もうあなた方に頼むのは止めにします。もう私にもアーサーさんにも話しかけないで下さいね?汚らわしい」
それだけ言ってクルリと静まった教室に背を向けてアーサーの後を追う
傷ついただろうか、彼は
涙を流しただろうか
あのエメラルドのような瞳から雫を零れさせているのだろうか
「何処にいるかなんて分かってるんですから」
クスリと笑みを浮かべてアーサーの影を追った