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千日紅

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「あ、抱っこの方が良いか?足が疲れたろ?」

「うるさい!歩けるからいい!」

「すぐ怒るなぁ。いいから行こう」

笑いながらも、またも大きな手を差しのべる妻にぽーっとなった助三郎は思わず取ってしまった。
少し早苗に驚ろかれたが、彼女はすぐさま夫の小さな手を握り返し、微笑んだ。

「帰ろう。美帆」


薄暗くなりつつある道を歩く人は少なくなっていた。
人目をはばからず、手をつないで歩ける時間帯。
早苗は悠々と歩いていたが、助三郎は真っ赤になっていた。
いくら早苗が話しかけても、助三郎は一切返事をしなかった。


「さぁ、ついた。なぁ、さっきから一言もしゃべらないがどうかしたか?」

「……どうもしない」

「……あ、恥ずかしかったか。ふぅん」

本当は恥ずかしくてたまらなかったが、からかわれたくはない。
必死に抵抗した。

「違う!恥ずかしくなんかない!」

「本当か?」

突然、ぐいっと顔を覗きこんだ早苗のせいで、助三郎の心臓は鼓動が速くなった。
血が下の方から上り、顔が熱くなるのが感じられた。

「顔真っ赤だぞ美帆ちゃん」

その言葉で我にかえった助三郎は、猛烈に反発した。

「ちゃんって言わないの!」

「なんでそんなに怒るんだ?、あぁ可愛いから良いけど」

なぜか態度がおかしい妻に、不満を感じた助三郎だった。


なんで、こんなに男っぽい?
こいつ、こんな色男じゃなかったはずだぞ。
中身が女のはずなのに。
こいつの調子に引きずり込まれて女にされそうだ……

妻のおふざけに巻き込まれない様に、落ち着こうと決めた助三郎だったが、無残にその努力は打ち砕かれた。

気付くと、格之進にじっと見つめられ低い声でささやかれた。

「……俺が好きか?」

「……え、うん」

嫌いなわけがなかった。誰よりも愛する妻で親友。
いいえとは言えないし、言いたくはない。

「……ありがとな」

「……え?」

格之進の顔がやけに近づいたと思った途端、助三郎の意識は吹っ飛んだ。






早苗は、冗談半分で助三郎の頬に口付していた。
しかし、欲求不満爆発寸前の助三郎の起爆剤になってしまったようだった。

「え?おい、美帆!?」

夫は噴火してしまったらしく。
顔が真っ赤になったまま、立ち尽くしていた。
まるで、男に全く慣れていない女がなるような症状に陥っていた。

「発散のしようがないからな。相当溜めこんでるな……どうしたもんか」

元が女で欲が少ない早苗はいい。
元は男で若くて元気な助三郎には、禁欲同然の日々で欲求がたまりにたまっていた。
ちょっとした刺激で、おかしくなる。
哀れな夫に早苗は同情した。
一方で、立ち尽くしたままの助三郎をほっておくわけにもいかず、揺さぶって声をかけた。

「美帆!聞こえるか?」

すぐに、意識を取り戻し、驚いた様子で早苗を見上げた。

「え?あ、格さん。どうしたの?」

「あぁ、良かった。元に戻った」

「……そういえば。なにしたの!?」

状況を把握した助三郎は、早苗に向って怒り始めた。

「チュってした。ハハハ。イヤか?」

「いきなりやめてよ!」

顔を真っ赤にして尚も怒る助三郎を見て、早苗はこれ以上からかっては可哀想と思い、
打ち切ることにした。

「悪い。もうしないからさ。もう戻るな」

「ちょっと!」

夫から止められそうになったが、逃げきった。
女の姿に戻った途端、睨みつける助三郎と同じ目線の高さになったので早苗は内心ぎくりとした。

「……美帆、わたしの弟との逢引おもしろかった?」

「早苗!」

早苗の言葉に火が付いた助三郎は、彼女に掴みかかろうとした。
しかし、すかさず早苗は逃げた。

「きゃー!美帆が怒った」

「待ちなさい!ふざけないの!」

「やっぱり、怒った美帆怖い!」


女同士に戻り、姉妹喧嘩のようなものが勃発した。

作品名:千日紅 作家名:喜世