千日紅
女同士では到底できない口付を自分が男になって、男女でやる。
「……どうだ?」
「上手い……負けた。でも、あたし以外にやったらダメだからね。絶対惚れられておかしなことになるからね」
「あぁ、絶対にしない。ほかの女は気持ち悪くて無理だ」
それからしばらく、二人はおとなしく布団の上で座っていたが、助三郎が突然早苗に向い手を下につき頭を下げた。
「期日までに、男に戻れなかったら、代りにお仕事頼みます」
「わかった。しっかりやってくるから心配するな」
「そう?じゃあ、心配はしない」
「……それより、出立まで俺とずっと一緒に居てくれるか?」
「……居てあげる。会えなくなるまではずっと居てあげる」
「ありがとな…」
二人はしっかりと互いを抱きしめ、愛情を確かめ合った。
ずっと離さず、一緒のまま、逆転夫婦の夜が更けていった。