ギャグマンガ日和をいい話にしてみた
調子丸の話によると、太子の命令で、何人かの人達がボートで陸にこの事を伝えに来たという具合だ。
「じゃあ、太子達はまだ・・・」
「はい」
僕は、考えもせずに部下に命じた。
「すぐに、船を何艘か用意して!
それと水夫達を集めて!早く!」
「妹子君!それは無茶だ!」
「でも太子達を助けないと!」
「太子達はもう助かる訳ないだろ。
諦めるんだ。太子の代わりは幾らでもいる」
「うるさいっ!!!!!!!
つべこべ言ってる暇あったら早く船を用意しろっ!!!」
僕はいつに無くかっとなってしまった。
自分でも自分の状態に気がつかない。
「小野様。船と水夫の用意ができました」
「ありがとう」
僕はここではっと閃いた。
「フィッシュ竹中さんを呼んで!
いつもの池にいるはず・・・」
竹中さんは溺れる事もあるが、泳ぎは得意な人なのでできるだけ手を借りたい。
「呼んだか?」
竹中さんは既に現れていた。
太子の友人としてやはり放っておけないのだろう。
「ぐずぐずしえる暇はない!
速く行くぞイナフ!」
「はい!」
「太子!
大丈夫ですか!」
辺りは大雨だ。
視界も暗くてよくわからない。
私は水夫の手伝いをして嵐を回避する事に集中していた。
もう二時間はこの状態だ。
四時間前に陸に伝達するために人を遣った。
今は摂政だのなんだの言っている暇はない。
ボートには全員を乗せられるほどの余裕は無い。
「私は大丈夫だ!
お前達はボートで逃げろ!」
「でも・・・」
「大丈夫だといっているだろう、日文。
私は摂政だぞ。
大丈夫。妹子なら絶対助けに来てくれる。
妹子だけじゃない。馬子やフィッシュ竹中さんや、ゴーレム吉田さんもいる。
私は彼らを信じる。だから心配するな!」
私はこの言葉で彼らを納得させてきた。
日文も泣きながら、ボートで逃げていった。
あの水夫達がいるなら大丈夫だ。
しかしこの遣隋使船にはもう水夫は残っていない。
居るとすれば私と数人の小智ぐらいだ。
他の部下は全員避難させた。
ボートに乗れなかった人たちには本当に申し訳ない。
船が沈み始めた。
私ももう終わりかな。
私は身を乗り出し、海に向かって叫んだ。
「フィッシュ竹中さん、ゴーレム吉田さん、馬子、調子丸、
妹子・・・!
今まで楽しかったぞ!
本当に、ありがとな!」
私は今までの人生に満足した。
せめて彼女くらいは欲しかったが、やりたい事は存分にやった。
思い残す事は、特に無いなあ。
妹子にだけでも別れは言いたかったが。
彼にはずいぶん大変な思いをさせてきた。
私はリアルな走馬灯を見た。
懐かしい。
「諦めてんじゃねえ、馬鹿摂政!!!!!」
この声は今の走馬灯にも出てきた。
まさか・・・
「妹子っ!!!!!」
妹子は助けに来てくれた。
信じてて良かったなあ。
「ぼさっとしてないで早く乗ってください。
皆さんも!」
「ああ!!!
帰ったら昇進させてやるっ!」
私は船に乗った。
だが油断はできない。
これからが本番だ。
相変わらず視界はよく見えないし、体温も低下している。
「妹子。そのジャージで来るとはアホだな。死ぬぞ?」
「僕は太子ほどアホじゃありません。
落ちた太子を上げる事を考えたんですが必要なかったですね」
その時、ボートがぐらっと揺れた。
「うわっ!」
「太子!」
落ちかけた私を助けようと妹子が腕を引っ張った。
しかし、私は妹子を巻き込んで海に落ちてしまった。
もう本当におしまいだ。
巻き込んでしまった妹子に心から詫びたい。
すまん・・・妹子・・・
あの時は本当に死んだと思った。
「今度は平気だよな妹子。
私も行けなくて残念だ」
「さすがに連続は無いでしょう。
水夫の数も増やしましたし。
本当に竹中さんに感謝ですね」
あの時太子と共に落ちた僕をフィッシュ竹中さんが泳いで助けてくれたのだ。
やっぱり本気を出すと凄いんだなあの人。
「ま、頑張って来いよ妹子。
絶対解けないなぞなぞ作って待ってるからな」
「それより仕事してくれたらありがたいんですけどね」
「わかってるよ。
そういうとこは、うるさいんだよな。
あっ、いい事思いついたぞ!」
「なんですか?
どうせロクな事じゃないだろうけど・・・」
「妹子のお見合い相手を探して紹介してやろう!決まり!」
「なっ///」
作品名:ギャグマンガ日和をいい話にしてみた 作家名:蔦野海夜