東方南十字星 the SouthernCross Wars二
オレは眉間にしわを寄せる。
だがこの状況を打開すべくオレは笑う。
「おもろそうやのう。話、聞こかい」
―――Side岡島―――
俺は現在、医療現場のような場所にいる。
その名のとうり怪我人を応急処置、および治療をする場所なのだが、異様に数が多すぎる。
怪我の仕方も不自然だ。
溶かされたような皮膚や肉、非常に深く食い込んでいる切り傷・・・・・・・・。
種類をあげればその数はとても多い。
一部の人に尋ねたところ、驚くべき情報が入った。
要点をまとめるとこうだ。
『突然空飛ぶ円盤が大量にあらわれ、蟻や蜘蛛のような姿をした巨大な蟲に襲われた。さらに小さい
円盤もいて人間よく分からない光線で意図も簡単に殺していた』
怪我人のはとんどは、どうやらその巨大生物によってつけられたものらしい。
そこへ吉本がやってきた。もう一人女性を連れている。
「どうした?」
「岡島、井野村と羽田を探してくれ。大至急言わんといけんことがあるんや」
「分かった。そちらのお方は?」
「はじめまして。私は八雲紫。貴方があの『天才軍師』の岡島ね?」
天才軍師?まぁそう呼ばれたことはあったが、それはEDFに所属していた頃の話だ。
俺は自分から誰かに他言したりはしないし、自慢話もしない。
でも彼女、八雲紫は俺の昔の呼び名を知っている?・・・・不自然だ。
「なぜその呼び名を?」
まぁ、吉本は知っているし、勝手に話したと思えばいい事だろうが、一応聞いておく。
(いや、別に言われた時点でどうというわけではないけども・・・・)
が、帰ってきた返答は驚くべきものだった。
「ずっと見ていたからよ」
「なに?」
意味が分からない。まるで過去にとんで見てきたような言い方だな。
「どうやって?」
「これで」
すると紫は、空間に穴というか、裂け目のようなものを創りだす。
俺は当然ながら唖然としている。
すると口を開いたのは吉本だった。
「どうやら、オレ達全員の活動を見てきたらしいんや。戦い方、職、傭兵としての活動もな」
「・・・・いつからだ?」
そのときの俺は、なぜかその返答しか出来なかった。
「大体三週間前かしら」
ちょうどベトナム政府との合同演習、パキスタンでのクーデター組織撃滅作戦があった期間だ。
他にもあったような・・・・・なかったような・・・・・・・・。
「つまりは・・・依頼か?」
「そうらしいで」
吉本が返答する。なるほど、コイツにはもう言ってあったか。
「分かった。至急集合させる。ただし、条件がある」
ここは傭兵として、はっきりと言っておくべきところがある。
「なんです?」
「傭兵はタダじゃないぞ?金のために依頼を受け、金のために戦う。それが傭兵だ。俺達を雇うなら、
それなりの報酬を用意しておけ」
「できるだけ多く出すわ」
「交渉成立やな」
俺は一度頷くと、残りの二人のケータイにつないだ。
―――Side Out―――
呼び出しを食らった二人は、参道右脇へ集合する。もちろん井野村と羽田である。
なにしろ依頼だ。ここがどこかという事を聞くついでに、金まで貰える。
今の彼らには一番嬉しいことであった。
宿舎にいたとき、実は羽田以外財布を忘れてしまったのだ。
今後のことを考えると、依頼は喜んで受けるべきであろう。
集合場所に着いた二人が目にしたのは、岡島と吉本と、もう一人の女性だった。
「おぉ・・・んで、こいつらが隊長の井野村と羽田や」
いつのまにか吉本が勝手に紹介を終わらせたようだ。
「あ、はじめまして。今紹介があったとうり、羽田といいます。うちの二人がお世話になったようで」
「・・・・それで、依頼とは?」
羽田が言い終えると、井野村が女性に話しかける。
「えぇ。もう一通り話は聞いていると思うけど、私は八雲紫。
いまここには妙な『異変』が起こっているの。
蟻にや蜘蛛に似た大きい蟲から、この世界では考えられない弾幕を撃ってくる円盤、さらに大きな
爆発する弾を撃ってくる歩くキカイのようなもの・・・・そいつらのおかげでここは壊滅しそうなの。
それに今でもそいつらの正体が分からず、おまけに攻撃が効かないヤツが多いのよ」
「その脅威からの援護および撃滅、それが依頼ですね?」
「そうよ。やってくれるわね?」
「もちろんです」
「ちょっとまて!」
「「「「・・・・?」」」」
岡島以外の四人が黙り込む。
「お前らなに抜かしてんだ!?銃の一つも持ってないのに依頼をうけるだ!?装備なんざどこに「あるわよ?」・・・どこにだ?」
「ここに」
すると紫は、空間の裂け目のような場所を開き、中からなにかを引き出す。
出てきたのは、なんと四人の装備品一式だった。
初めてその様子を目の当たりにする井野村と羽田は、驚きの表情を隠せなかった。
「これで全部かしら?」
紫がたずねると、吉本が返答しようとするが・・・・
「あぁ(ドゴーン!!)なんや!?」
遠くにいた人だかりが騒ぎ始める。
「・・・・来たわね。さぁ、貴方達の力を見せて頂戴」
「あいよ!」
いつのまにか装備を完了している吉本と羽田がいた。
「先に僕らが威力偵察がてら行きます。井野村さん岡島さんは通信が入り次第すぐに来てください」
「分かった。気をつけてな」
「何かあったらすぐに呼べ」
「「ラジャー!!」」
声を合わせて二人、吉本はブーツのローラーダッシュで、羽田は走って人ごみの向こうへ消えた。
そんななか、八雲 紫は思っていた。
(頑張って頂戴ね。幻想郷の運命は貴方達にかかっているのだから・・・・・・)
上までだいぶ上がった太陽の下を、夏の風が、吹き抜けた。