雪柳
助三郎はそっと早苗に伺った。
「……一緒に、入るか?」
すると、小さな声で返事が返ってきた。
「……うん」
クロは早苗と助三郎とともに広い温泉に浸かった。
中で思いっきり泳ぎ、身体の芯まで暖め、綺麗な着物に着替えた。
助三郎はクロに感想を聞いた。
「風呂はどうだった?」
「気持ち良かった! 暖かかったしね!」
「良かったな。また入ろうな」
「うん!」
その日夕餉、クロは二人の間に行儀よく座り、残さず綺麗に箸で平らげた。
その様子を夫婦だけでなく光圀もお銀も眺め、楽しい一時になった。
しかし、三人が別室で床につこうとした時、光圀からお呼びがかかった。
呼び出しは配下二人のどちらでもなく、クロだった。
二人だけになると、光圀はクロに向かって言った。
「クロ。お前さんに頼みごとがある」
「なに?」
「お前さんにしかできない事じゃ。良く聞きなさい」
クロと光圀はある約束を交わした。