雪柳
可笑しな問答を繰り広げた後、二人と一匹は朝餉を囲んだ。
しかし、クロは食べようとした矢先、早苗に叱られた。
「クロ、手掴みはダメよ!」
「……口付けてもダメ?」
元犬にいきなり箸を使って食べろでは無理がある。
そこで早苗は思いついた。
「そうね。お箸の使い方教えてあげる。おいで」
そう言って早苗はクロを膝に座らせ、箸を握らせた。
「そう、そこを持って、そう。ほら持てた」
「こう?」
クロは自慢げに助三郎に持った箸を見せた。
助三郎はそんなクロに微笑み返した。
「上手いぞ。筋が良い」
「じゃあ、そのお芋つまんでみて。出来る?」
クロは難なく芋の煮たのをつまみあげた。
そして早苗に窺った。
「食べて良い?」
「どうぞ召し上がれ。良く噛むのよ」
クロは芋を口に入れ、言われた通りよく噛んだ。
甘い芋の味を堪能した後、ごくんと飲み込み、うれしそうに二人に言った。
「クロお芋食べれたよ! 見た?」
「あぁ。上手いぞ。その調子でどんどん食べろ」
「お茶碗の持ち方も教えてあげるわね。温かいお米は美味しいわよ」
「うん!」
若い夫婦と、その子ども。
そんな仲の良い家族の食事風景がそこにはあった。