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幻の空に月に輝く6・修行の章・【敵は敵でも好敵手?】

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 お茶も菓子も美味しかった。
 まさかイタチが煎れたのかなぁ。でも、家までお邪魔した割りにご両親に会ってないよね。このお茶は姿を見ていない母親が煎れたのか。それともイタチが煎れたのか。どっちかなぁ…。


「さっさと構えろ!」

 現実逃避をしていた私に、苛立った声が届く。
 ものすっごく現実逃避をしていたけど、今の現状といえば、向かい合うようにサスケが立ってる。少し離れた場所にはイタチ。さっきまでのほのぼのとした…まぁ、殺伐としてたけどね。兎に角お茶と菓子だけは美味しかった状況から一転。サスケはクナイを構えてるし。
 五歳の子供に刃物は持たせちゃいけません。
 そんな現代の常識がガタガタと音をたてて崩れているんだけど、サスケは知った事じゃないとばかりに怒鳴るように叫ぶ。
 短気なお子様め。

「……はぁ」
 思わずついた溜息に、サスケの眉がぴくりとはね上がる。
「構えないで余裕だな」
「別に。俺の準備は終わってる。気が付かないか?」
 既にチャクラの絃は張り巡らせてある。
 どうにもこうにも、父さんと手合わせする時の癖がついてるのかな。絃はほぼ自動で使えるようになってる。我愛羅の砂じゃないけど、系統的には同じなのかもしれない。
「サスケ。油断するな」
 私の戦法を知っているイタチが、サスケに言葉を投げかける。
「はっ。こんな女みたいなヤツに俺が負けるかよ」
 折角のイタチの忠告も、右から左へ軽く流すサスケ。五歳児にこんな言葉を使っていいのか迷うけど、細くて小さくて大人になれば優男?な見た目はなめるよねー。あはは。まぁ…女みたいなヤツって女ですけどねー。
 つっこまないけど。性別の件は不透明でいいからつっこまないけど、絃に気が付かないサスケに対してはどうしようかな。
 下忍未満に気付かれたら、あの修行をしてる立場としてはどうしようもない程腕がないって事だから、気付かれたら逆に私が困るんだけどね。
 サスケの様子を伺いながらも、どんな言葉を返そうかなぁ、なんて内心はかなり暢気な感じだ。
 本音だろうけど挑発とも受け取れるサスケの言葉だから、私もちょっと煽ってみるかな。

「口だけは達者なんだな」
 これが煽りになるのかはよく分からないけど。

「──なんだと!」
 微妙な所だったけど、どうやら見事に煽られたらしい。
 やっぱりサスケは相当短気だと再確認してたら、サスケはクナイを持ったまま地面を蹴り上げ、私との距離を詰めだす。
 というか、足にチャクラを纏わすやり方とかをカカシから教わってないから、かなり遅い。本当に遅い。
 今のサスケを見ると、ナルトは心底規格外だ。

「イタチさんも弟に甘いんだね」
 クナイを持った右腕を振り上げ、私に向かって一直線に向かってくる刃先。
 その一瞬の隙間をぬうように、私はイタチを見る。まぁな、とばかりに肩を竦めるイタチはどうやら自覚があるらしい。
 イタチと視線だけで会話してる間も、サスケは速くないなりに近付いてきてる。まぁ、速くないって言い切っちゃうけど、実際は年相応より速いしチャクラもあるんだろうと思う。
 それでも、近付かせないけどね。
 一撃でももらったらイタチがチクチクと煩いだろうし、それに──流石に下忍未満を近付かせるような防御網は敷いていない。

「──ッ!?」

 かかった。
 私の張り巡らせた絃に身体を絡め取られるように、振り上げた右腕をそのままにサスケの動きが完全に止まる。
 動けば動くほど絡まる、なんて絃じゃない。かかった瞬間に雁字搦めの絃。出ないと父さんの動きは止められないからね。
 ぽてぽてと絃に絡まったサスケの前まで歩き、動きを止める。
 これでもかっていう程つり上がった眉と眉間の皺が、サスケの心情をこれでもかと自己主張しているんだけど、そんな事は知った事じゃありません。

「俺の未熟な防御とはいえ、お前には破れない」
 まだ、ね。まだだけどね。
 ちなみに、これが九尾のチャクラを操るナルトに瞬殺されたのは秘密だ。あの時はテンには白い目で見られ、ナルトには腹のたつほど小馬鹿にされつつ肩を竦められたんだよなぁ。
 はぁ。
 また溜息が漏れた。
 私が溜息をついていると、ここに来る途中に飛び立ったテンがゆっくりと私の肩に降り立つ。別の意味で気まずいこの状況で帰ってきたテンとしては、今の方がマシらしい。まぁ、さっきの気まずさは半端じゃないからわからなくもないけどね。

「イタチさん。これでいいですか?」
 サスケからチャクラの絃を外しつつ、無傷というより近付かせてもいないよ、とイタチを見れば…。
「あぁ。十分だ」
 すっごく満足そうな表情をされた。
 おや?
 何でだろうって放置してたサスケを見れば…。

 見なきゃ良かったとつい顔を背けてしまう。

「夜月ランセイか。覚えた…覚悟しろよ」
 おぉう。思わず小さな悲鳴が口から出た。この子って将来極悪非道な大蛇丸の蛇ですら取り込むような成長を遂げるんじゃなかったっけか。
 そんな猪突君に、覚えた、覚悟しろと言われた私。
「別に覚えなくていい」
 心の奥底からの本音だったんだけど、サスケはやっぱり舌打ちで答える。舌打ち好きだね。似合ってるから別にいいんだけどさ。
「俺なんか覚える必要も無いって事かよ」
「……」
 何故そうとるかな。
 執念深そうだから忘れちゃっていいって言ってるのに。
 今日は精神的に疲れたなぁ、と肩を落とせば、いつの間に持って来たのかイタチが私とサスケに水を差し出してくれた。
 瞬身か。瞬身を使ったのか。というかやっぱ私とは桁違いに速い。
 イタチがいつ取りに行ったかなんてまったく気がつかなかったけど、喉がカラカラで水は助かったと頭を軽く下げながら受け取る。
 コクコクと一気に水を飲み干し、乾いた喉を潤す。サスケも一気に飲み干して、やっぱ私を睨み付けた。
 …私を睨み付けるのが標準装備になったのか。

「イタチさん。俺に、弟さんの相手は無理ですよ」
 こんなに嫌われてちゃ友達は無理だよね。私に対して、何でか睨むのが標準になったみたいだしね。
 そんなわけでイタチにはごめんなさい。
 何かサスケの友達にしたがってたみたいだけど、私には荷が重いとあっさりと放棄。
「そうか?」
「うん。無理」
 イタチの不思議そうな声音に、迷わずに頷く。
「友達は、嫌われる存在じゃない」
 あんな腹に色々なものを抱え込んでいるナルトでも、最近では随分と仲良くなってくれたと思うんだよね。
 他愛ない日常会話も増えてきたし。
 何より笑う回数が増えた。
 ナルトとの友達の道を着々と歩んでいる私としては、今のサスケの関係は友達っていう感じはまったくしない。
 もう一度イタチを見上げ、そのままサスケに視線を移す。
「弟さんも俺ももうじきアカデミーだろ。友達ならそこでつくれる」
 だから、私じゃなくてほのぼのと会話の出来るお友達を見つけてね。そんな意味を込めて、会話に幕を閉じた。


 つもりだった。


 何でかイタチには肩を竦められ。
 サスケには般若の表情を浮かべられ。
 おまけとばかりに肩にとまっていたテンには、状況を把握しろと言わんばかりに頬を軽く突かれる。