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Fate/Zero ~MAKAISENKI~

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黄金騎士は複数存在する。だが、牙狼は最強の魔戒騎士ということで、たった一人にしかその称号が贈られることはない。
現在では冴島家にのみ許された最強の称号…それの持ち主がとうとう自分を追いにきたのかと思うと、どこか諦めに似た感情が湧き上がってくる。
特に目の前の冴島鋼牙は歴代最強と言われている。
メシアやレギュレウス、7体の使途ホラーを一生の内に討伐していればその評価もうなずける。
だが、ここで死ぬわけにはいかない。

「…そうか、遂に牙狼の称号を持つものが現れたか…悪いが、俺はまだ死ぬつもりはない」

両者が構えた。
鋼牙はシンギをシンギは鋼牙を見据え互いの隙を狙っている。
二人が動きその距離を詰めた。
繰り出される拳打の応酬。どちらも一歩も引かず、誰もが目を見張る肉弾戦に両者がその身を置いている。
時に裏拳、時に足払い、自らの持ちえる技の全てを相手に叩き込んでいる。
いつまでも、続く肉弾戦は唐突に終わりを迎えた。
シンギが地面に倒れこんだところを鋼牙が飛び上がり拳を繰り出した。
シンギはそれを魔戒剣で防御したのだ。
シンギが剣を抜いたのを見て一度シンギから距離を取り、鋼牙も魔戒剣を抜く。
シンギの武器は一つではない当然、魔戒弓も取り出した。
弓と剣という奇妙な組み合わせに鋼牙が驚愕の表情を浮かべるが、それも一瞬のこと。
鋼牙は左腕を剣に滑らせて、シンギは弓のリムの部分と剣を一度かち合わせ右手の剣を後方に左手の弓を前方へと突き出し構える。

「フッ!!」

「雄々!!」

一声発したと思ったら二人はすでにぶつかっていた。
夜の街に響く金属音、これ程の音を出して誰も気づかないのはレオが結界を張っているのだろう。
鋼牙が剣を振るい、シンギが剣で受け止める。
シンギが弓を振るい、鋼牙はそれを足で踏みつけることで回避する。
力は鋼牙のほうが上、手数ではシンギのほうが上。
故に、拮抗する。
シンギと鋼牙の剣がかちあった時、鋼牙が動いた。
シンギの腹部に掌底を叩き込んだのだ。
あまりの威力にシンギの体が宙を舞う。
シンギは体勢を立て直しうまく着地した。

「何故、暗黒の道を選んだ」

鋼牙が口を開いた。
シンギと剣を交えてから鋼牙は違和感を覚えた。
邪念が全く伝わってこなかったのだ。
だからこそ思う。何故、暗黒の道を選んでしまったのかを。

「……この身が暗黒騎士になったのは己の未熟さ故にだ。お前が気にするほどの物ではない」

シンギはその問いを冷たくあしらった。
問いかけなどするな、戦うなら本気で来い、そうシンギの目は語っていた。
シンギは触れて欲しくないのだ。
暗黒騎士になったことを

「おしゃべりしている暇があったら戦ったらどうだ?黄金騎士!」

鋼牙は目を閉じ、少しの間思考をめぐらせる。
この男は本当に暗黒騎士なのかということを…

「いいだろう、ここからは全力で相手しよう」

鋼牙が剣を頭上に掲げた。そして、円を描くように一振り。
剣は光の尾を引き円を形作った。円の中心から眩しいほどの光が発せられる。
すると、円から黄金の鎧が降り注ぐように鋼牙の体に定着していった。
その鎧から放たれる黄金の光。
普通なら全身金色と言うものは下品な物に感じられるだろうが、この鎧はそんな事はなく、むしろ神々しささえ感じる。
背後に形作られた炎の紋章がその威厳を際立たせている。
現代にあいて、冴島家のみが許された至高の存在。
今、ここに黄金騎士牙狼(ガロ)が降り立ったのだ

「それが、牙狼の鎧か…」

シンギは不覚にも見惚れてしまった。
あの決して届かぬ黄金の輝きに。
しかし、見とれている場合ではない、剣の切っ先と弓の切っ先を交差させゆっくりと頭上へ掲げる。
そして、剣と弓でそれぞれ半円ずつを描き、弓と剣を振り下ろす。
描かれた円から漏れる漆黒の光、そして漆黒の鎧が降り注ぐようにシンギの体に定着していく。
鎧から感じるのは禍々しい邪気、まるでこの世の全てを憎んでいるともしれぬ雰囲気に牙狼の後ろにいたレオは息を呑んだ。
背後で爆雷する炎がそれを際立たせる。
今、ここに暗黒騎士虚(ウツロ)が降り立ったのだ。

最初に動いたのは牙狼だった。
その手に黄金の剣を携え、虚に突貫する。虚はそれを防御し攻勢に出る。
黒対金、二匹の狼のぶつかり合い。
牙狼が剣を振るえば、虚が防御し、虚が剣と弓を振るえば牙狼が防御する。
ただただ、それを幾度となく繰り返す。
だが、それだけではいけない。
虚はともかく牙狼には制限時間が存在するのだから。
魔戒騎士の鎧は現世において99.9秒しか活動できない。
もし、制限時間を過ぎれば心滅獣身と呼ばれる状態に陥り、鎧にその身を喰われてしまう。
そして、鎧に喰われてなお耐え切ったものだけが暗黒騎士になれるのだ。
魔戒騎士は強い精神力を持っている。その中でも一際強い精神を持つものだけが暗黒騎士へと覚醒する。
暗黒騎士には心滅獣身を乗り越えた為か制限時間が存在しない。
つまり、長引けば長引くほど牙狼が不利なのだ。
この状況を打開すべく牙狼が選んだのは烈火炎装だった。
武器や鎧に魔導火を付加させ力を上げる技、それが烈火炎装だ。
一瞬にして緑の炎が宿った剣を虚めがけて振り下ろす。
虚もただでそれを受けるわけがなく、上に跳ぶ事で回避した。
急いで上空を見上げた牙狼の目に映ったのは、虚構弓に虚構剣を番える虚の姿だった。
白い炎に弓と剣が包まれていく、間違いない烈火炎装だ。
弦を限界まで引き絞り、そして…

剣が放たれた。弓に付加されていた炎と共に。
剣の先の炎が鳥の顔を、弓に付加されていた炎が翼を形作る。
その姿は中国に伝わる四聖獣の一体、朱雀の如し(炎が白いので朱というのは不適切かもしれないが)。
これがシンギ自らが編み出した技「烈火炎雀」である。
生み出された炎の鳥は牙狼目掛けて一直線に突き進む。
だが、牙狼も歴戦の戦士、迫る剣を紙一重で交わした。
炎が少し兜を掠ったが気にすることではない。
そして、そのまま虚目掛けて剣を振り下ろした。
だが、未だ空中にいる虚に剣が届くはずもない。牙狼の狙いは別にある。
剣の炎が巨大な竜を形作り、虚目掛けて襲い掛かったのだ。

「烈火激竜」

技の系列は烈火炎雀と同じだが、こちらのほうが威力が高い。
滅多に使わないこの技を使うあたり、牙狼の本気が伺える。
虚は回避行動を取ろうとしたものの、すでに遅く、炎の竜の一撃をその身に浴びてしまった。

「ガァ!!」

呻き声を上げ、炎に包まれながら地へと落下していく。
地面に叩き付けられた衝撃で呼気が漏れた。
すぐに体勢を立て直そうとするものの、ホラーとの戦いの後も相まってか思うように力が入らない。
気がつくと、牙狼に剣を突きつけられていた。
――ここまでか
虚はそう思わざるを得なかった。

剣を突きつけている牙狼、いや鋼牙は珍しく迷っていた。
――本当にこの男は斬るべきなのか、斬った後で俺は後悔しないだろうか
何故、自分でも迷っているのかわからない。相手が暗黒騎士なのだから斬るべきだ。
だが、どうにも腑に落ちないのだ。
剣から伝わってくる澄んだ感情、決して折れぬ一本の剣のような固い意志。
作品名:Fate/Zero ~MAKAISENKI~ 作家名:魔戒