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Fate/Zero ~MAKAISENKI~

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何故、この男が暗黒騎士になってしまったのか。
そんな考えがグルグルと頭の中を回り、剣を振り下ろせない。

「『鋼牙(さん)!!後ろだ(です)!!』」

ザルバとレオの声が聞こえた。
振り向くと、そこにはホラーの姿が。
それは、先ほどシンギが戦っていたホラーの片割れだった。
考え事をしているせいでギリギリまで気がつかなかったのだ。
ホラーの触手の先端にある鋭い針状の物が牙狼の胸部を狙っている。
あの鋭さはソウルメタルも打ち砕くかもしれない。
元々、ソウルメタルはホラーの爪から出来ているのだ。自分の同胞から作られた物を同じものを持つホラーが貫けぬはずはない。
レオが駆け寄る姿が見えるが、遠くに離れすぎた性で間に合わない。
剣で防御する。――だめだ、後ろに構えている性で間に合わない。
上に跳び上がる。――だめだ、敵がふさいでいる。
後退する。――だめだ、虚がいる。
八方塞り、このままでは駄目だ。そう思った。
攻撃が迫る中、カオルの姿が脳裏に浮かんだ。
自分を変えてくれたあの姿が。
――…すまない
帰れないかもしれない事に心の中でカオルに謝った。
迫る凶刃に己の最後を悟った。
不意に、何かに引っ張られた。
疑問が考えに浮かび上がる暇もなく、悲鳴が聞こえた。

「グァア!!」

虚だ。
牙狼を庇って、その攻撃に身を晒したのだ。
虚は右肩を貫かれており、見るだけでも痛々しく思えてくる。
その痛みを堪え、虚は剣でホラーを切り裂いた。

「ギイイアアアァァァァ!!」

断末魔が木霊し、ホラーが消滅していく。
過剰ダメージを受けた性で、虚の鎧が送還されていった。

「…何故、俺を助けた!」

柄にも無く叫んでいた。
暗黒騎士であるはずのシンギに助けられた。
何故、そう思わずに入られなかった。
不快感は無い、だが解せない。
自分を助けた者がどうして暗黒騎士になってしまったのかを。

「…俺は自分の…魔戒騎士の使命に従っただけだ」

魔戒騎士の使命、それは人間を守ること。
そして、悟った。この男は魔戒騎士としての心を…輝きを失っていないと。
ならば、討つ必要は無い。
守りし者であろうとする者を斬る必要は無い。
鋼牙は剣を鞘に収め、シンギに背を向けた。

「レオ、帰るぞ」

「は!?」

レオが疑問の声を上げた。
それはそうだ、先ほど暗黒騎士には気を許すなと言われたばかりではないか。
鋼牙がシンギに背を向けているところを見るに完全に気を許している。

「待…て、情けの…つもり…か、俺を…討つんじゃ…なかったのか」

「元老院には、俺が誤魔化しておく。俺は守りし者であろうとするお前を斬ることはしない」

言葉途切れ途切れに、声を上げるシンギに鋼牙は答えた。
正直、鋼牙はシンギに感心していた。闇に身を堕としてもなお、光を失わぬその心に。

「お前は暗黒騎士でありながら、暗黒騎士ではない。これからも魔戒騎士として守りし者としてあり続けろ。助けてくれた事には礼を言わせてもらう。だが、もしその心も闇に堕とせば、シンギ俺は迷わずお前を斬る」

「…敵わないな、あんたには。さすがは黄金騎士と言ったところか」

シンギは鋼牙を見据えた。
その輝きを持つ騎士をその目に焼き付けようと。

「冴島鋼牙、助けが必要な時は呼べ、いつでも力を貸してやる」

「ああ、その時がくればな」

それはある種の信頼。
暗黒騎士でもこの男になら背を預けられると。
シンギも鋼牙には敬意を払わずにはいられなかった。
暗黒騎士である自分を見逃す度量とその守りし者としての心の強さに。

二人は背を向けて歩き出す。
辿る道は違えど、その方向は同じシンギは闇の道を、鋼牙は光り輝く希望の道をそれぞれ歩みだす。
二つの道が交わるときは

もしかしたら近いのかもしれない。


――――――――――――――――
時に考えすぎることは人を深みにはめることがある。
そこから抜け出せるかどうかは己次第だがな。
次回「思惑」
思い込みが激しい奴ほど怖いものはないな

作品名:Fate/Zero ~MAKAISENKI~ 作家名:魔戒