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結われた髪と、解かれる記憶に

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 手嶋野がまどろみから抜け出した頃、授業を終える為の号令が掛かる。懐かしい夢にほんの少しだけ郷愁に似た思いを感じた。
 休み時間に入って教室を振り返る。ふと見えた瀬々は、カバンから音楽プレイヤーを取り出して、楽しそうに選曲をしている。ふらりと、引き寄せられるように手嶋野は彼の元へ歩く。
 こいつが王子かもしれない。
 カラオケ屋で瀬々からふと漏れた言葉でそれに気づいた。前世と現世では性格が違うとわかっていても、普段の口ぶりや雰囲気からは想像もつかなかった。信じられなかった。
 見た目も、な。
 後ろから近づいて、髪に触れた。王子よりも短くて柔らかいように思える。よく、王子の髪を編み込んでいたな、と思い出す。

「あのー」

 真下から声が聞こえた。

「何やってるんですかね……?」

 動くに動けなくなった瀬々から疑問の声が上がった。ふと手嶋野が自信の手元を見ると、頭のてっぺんから三つに分けた髪をもって編み込みを始めていた。

「ああ、わりぃ。三つ編みしてたわ」
「三つ編み?」

 当たり前のように瀬々から漏れた疑問。無意識って怖いな、と自覚して、話を切り抜けるための言葉を適当に並べる。

「最近、妹がやってくれってうるさくて。けど、お前の髪、短いからやりにくいな」
「いや、妹さんと比べられても」

 そりゃそうだよな。
 一人で納得して、手嶋野は瀬々の髪から手を離す。その瞬間、何とも言えないような寂しさが、胸の奥からこみ上げる。
 なんだよ、これは。
 今までに無い感覚に内心で焦る手嶋野。前世の記憶のせいと言ってしまえばそれまでだが、そんなものに振り回されたくないと思っていた手嶋野にとっては、ありがたくない感情だった。
 マジで影響してくるなよ。目の前にいるのはクラスメイトの瀬々だと言い聞かせる。

「あー、髪、ちょっとぼさぼさにして悪かったな」

 謝るつもりで、髪の毛を手ぐしでほぐしてやる。

「んー、大丈夫。というか、なんか手嶋野に触れられると落ち着く」
「っ……、なんだそれ」

 けへらと笑い見上げてくる瀬々に手嶋野はどういう顔をして良いのかわからず戸惑い、思わず顔を反らす。
 不自然にならないように、主が不在になっている瀬々の隣の席に座った。

「あ、そうだ。この前借りたCDなんだけど――」

 イヤホンを片耳だけ外して話す瀬々。手嶋野は適当に相づちを打ちながら会話をする。
 いつもの日常に、ほんの少しだけほっとする。そう、この距離感が一番良い。これ以上、近くも遠くもならなくて良い。


 どうか、目の前のこいつが、前世で仕えていた相手でないように、と手嶋野は強く願った。