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写真

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「気づかねぇお前が悪い。」
「リ…ボーン…蹴るなよ…!」
俺は必死で体を起こした。
目の前にはニヤリと笑うリボーンがいる。
「んな事より何やってんだ?こんな所で。」

俺の訴えは軽く流されてしまった。
「な…何って…この部屋……なんか他の部屋と違うな、と思って…。」

「…ああ、この部屋な。」

「何なの?ここ。」

「ここは…この時代のお前の部屋らしいぞ。…ジャンニーニの奴が言ってたな。」
リボーンは部屋を見上げた。

「…俺の部屋…?」

「あぁ。お前はこの日本の地下基地に自分の仕事用の部屋を造ったんだ。」
「……入ってもいいかな。」

やっぱり未来の自分の部屋となると、ちょっと興味があった。

「ここはお前の部屋だ。お前が入りたいんなら入れ。」
リボーンは扉を勢いよく蹴った。
…本当に乱暴な家庭教師だと思う。

「…じゃ…お邪魔します…」
俺は薄暗い部屋に恐る恐る入った。


「………。」
奥に大きな棚があって、隅に机が置いてある。机には山積みの書類があった。

「なんか…すごいな…。」

「俺も初めて入ったぞ。」


俺は棚へ近付いた。

「…あ!!」

…また、見つけてしまった。

「どうした?」

「この…写真…」

棚の上には額にも入れられないで、薄い袋に入った写真が立てかけてあった。

袋の中に入っていたので、輪郭がはっきりしなかったから集合写真という事くらいしか分からなかったけど。

「これだ…。」
「?」
「これ…雲雀さんとお兄さんが持ってた写真と同じ写真だ…」
袋でぼやけていたのに、見た瞬間分かった。

「…雲雀と了平が同じ写真を持ってたのか?」

「う…うん。」

俺は袋から写真を取り出した。


「…!!」


…言葉を失った。……色々な意味で。

「…集合写真…だな。」
「…俺達の……時間……宝物…」



…そうか。そうだったんだ。



「?」

そこには、この時代の守護者達が写っていた。






みんな
笑ってて






すごく幸せそうだった


















獄寺君はちょっと恥ずかしそうに微笑んでて


山本はいつもより増して爽やかに笑ってる


お兄さんは太陽みたいに明るい表情だ


雲雀さんなんかはいつもは絶対見せないような笑顔で


ランボは珍しく子どもみたいな全開の笑い顔だった


骸はいつもの嘘の笑顔なんかじゃなくて


クロームはにっこり頬を染めて笑っている

















お兄さんが言っていた時間。

















俺は全部理解した時、
涙が出そうになった。


















 Anello di Firmamento


      Tempesta


      Pioggia


      Sereno


      Nuvola


      Fulmine


      Nebbia


      Nebbia









「…これ…」
俺は写真に油性マジックで書き込んであるイタリア語を見つけた。

「あぁ、そうだぞ。上からイタリア語で、大空の守護者、嵐、雨、晴、雲、雷、霧って意味だ。」

「あれ?Nebbiaが2つある」

「…これはどうやらお前らが各々写真に書き込んだらしいな。きっとNebbiaは骸とクロームがそれぞれ書いたんだ。」
確かにそれぞれ字体が違う。

「って…あれ!?何で骸とクロームが一緒に写ってんの!?」

「合成だな。こりゃ。」

「あ……なるほど。」

確かにクロームの所だけなんとなく違和感があるような気がした。

「全員で撮って、全員で書き込んだんだ…。」
でもあの雲雀さんや骸がこんなのに写って、書き込んだのかと思うと信じられなかった。
…でも、俺が一番信じられなかったのは10年後の俺が雲雀さんや骸を背に穏やかに笑っている事だった。

「これが…10年後の俺…」

「……。」

何か雰囲気が違う気がした。
俺は、この上なく幸せそうに笑っていた。

「俺じゃないみたい」
「……こいつらにとって、10年っていう歳月は恐ろしく長かったんだろうな。…その分だけでかくなってんだ。」

「……。」
リボーンの言おうとしている事が、俺にはなんとなく分かった。

「でも…この写真のお兄さんや雲雀さん…今俺達と接している人とはまるで別人みたいだ…。
……いや、お兄さんと雲雀さんだけじゃない。10年後の獄寺君にも山本にも俺は会ったけど…全然違う。」
俺が実際に出会った10年後のみんなと、この写真に写っているみんなとは何というか、雰囲気が違った。

「…確かにな。」
リボーンもそう思うんだ。

「お兄さんが言ってた。…この写真に写っている時間は…俺達の宝物だって…」

…きっと、変わってしまったから。
…だから、その時間が宝物になってしまったんだと思う。

「…確かに…全員幸せそうな面で笑ってやがるな。」
リボーンはふぅ、とため息をついた。


「…だから戦うのか…」
俺は小さく、小さく呟いた。

「なんか言ったか?」
「いや…」
リボーンには聞こえなかったらしい。






過去からやって来た俺達は、あの幸せな日々に戻る為に戦いに行く。








でも、お兄さんや雲雀さんは何で戦うのか…そんな疑問を持った事がある。














今それが分かった気がした。





10年後の俺がミルフィオーレに交渉しに行ったのも





お兄さんが明日一緒に戦ってくれるのも





雲雀さんが毎日修行に付き合ってくれるのも

















全部、この写真に写っている時間を取り戻すため












「………。」

俺は、写真を何となく裏返した。

「…あ……。」












       沢田 綱吉


      獄寺 隼人


        山本 武


       笹川 了平


       雲雀 恭弥


       ランボ


        六道 骸


      クローム どくろ






「…日本語で名前が書いてある…」

「…これも、各々が書き込んだらしいな。」
確かにこの『沢田綱吉』は、ちょっときれいになってるけど俺の字だった。
獄寺君の大人っぽい字にも、山本の丸っこい字にも見覚えがあった。

「10年後は…みんな仲良かったのかな。」
「俺が知る訳ねぇだろ。」
「………明日…頑張るね。」
「んなの当たり前だ。」
「…そりゃそうか。」






そして俺はそっと写真を袋にしまって、元の位置に立てかけておいた。









「俺達の宝物の時間」








その宝物をまた再び






取り戻すんだ






そう
誓って。
























―写真―


それは、俺達の宝物

俺の願いは

みんなの願い

そう信じた

いや、信じられた





だから、全てを君達に託そう。





…全ては


取り戻すために、



あの日々を






―取り戻すために。











end.
作品名:写真 作家名:青華