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【同人誌】あなたのわたし、あなたのあなた【サンプル】

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 これで、今は話を区切れる。歩き出そうとすると、
「送って行こう」
 同じように、泰衡も一歩を踏んだ。
「い、いいですよ、一人でも大丈夫です」
「あなたを一人で帰したと知れれば、御館に何を言われることか」
 溜息混じりに、泰衡は言う。それでも、これは彼の優しさかも知れない。あるいは、恋人だからか、許嫁みたいなものになるかも知れないからか。
 居心地が悪い。少し前までなら、飛び上がるほど嬉しかっただろうに。
「じゃあ、高館の山の下まで」
 そこまでなら、迷惑もかからないだろう。そうしよう、と泰衡は応じる。
 それから、二人で、夜道を歩く。
 不思議な気分だ。いつもは泰衡の郎党の誰かがつき従うことが多い。今は本当に、二人だけだ。
 じわりと、嬉しさが滲んできた。様々なことを考えなければ、この時間は、単純に喜ばしい。
 その反面、結婚の話を思い出すと、妙に落ち込んだ気分になる。
「御館は、よほどあなたを気に入られたと見える。春の宴の前から、分かっていたことだが」
 泰衡が話し始める。沈黙があっても、望美が話すまで黙っていることの多い人が、珍しい。
「初めて会ったとき、苦労してきたんだなって、私のために泣いてくれました。それから、もう心配ないって笑ってくれて」
 威厳がありながらも、豪快で人が好い。突然のことに戸惑ったけれど、本当に安心できた。
「平家との戦に巻き込まれ、源氏の神子と名乗らされ、さらに裏切られ、都から遠い鄙の地まで落ちて来て。御館が心にかけるのも、無理からぬ話か」
 皮肉なのか、それとも、本当に望美の境遇に同情でもしているのか、彼は淡々とまとめた。
「戦う必要がないと言われても、強引に戦われる」
「……それって、厭味ですか?」
 宴の席でも、その話はした。泰衡には、余計なことはするな、戦に出るなと言われたが、九郎たちと参戦した。泰衡は宴で、望美たちの力のお陰だとも話していた。それなのに、また今さら蒸し返して、人の言うことを聞かない、と責めるつもりか。
「いや、ただの事実だ」
 簡潔に答えると、望美をふと見た。
「それが、あなたの気質かと思っただけだ」
「猪突猛進?」
「なるほど、それは適切なお言葉だ」
 自分で言っておきながら、そう肯定されると、ちょっと傷つく。事実だと言われれば、確かに正しいけれど。
 泰衡は、望美を褒め称えたりしない。優しい言動もほとんどない。皮肉を言うことは何度もあり、忠告も厳しい口調でもたらす。
 それでも、嫌いにならない。好きだと思う。あの春の日に急に自覚した気持ちが、途切れない。
 何故これほど、この人を好きなのか。冷たく素っ気なくても、離れずにいられるのか。自分でも説明がつかない。それでも、好きだと思う。


---以下略------------------------