Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~
右手を頬に重ねながら俺とシルビアの方を見てくる風間。
その時に気がついたのだが…風間の前に置かれた料理が既になくなっている。そう、なくなっているのだ。
この歓迎会が始まってからまだ数分しかたっていないと言うのに、風間の前に置かれた皿の中には何も入っていない。
その事を風間に問いかけようと口を開いた瞬間、目の笑っていない風間と視線がぶつかる。
開いた口が瞬時に閉じ、俺は何も見なかったと自分に言い聞かせ、風間から視線を外した。…風間に対する印象が変わった瞬間でもあった。
「まぁ…シルビアもライナにそう言われて嬉しいんじゃないのか?」
顔をニヤニヤさせながらそう言ってくる宗像。
俺があんな事を言ったのが悪いのかもしれないが、此処まで騒がれると少々、嫌、かなり恥ずかしい。
俺本人はそう言う意味を込めていった訳ではないと言うのに、此処にいる女性陣は皆恋愛方面で捉えてしまっているようだ。
「はい…」
頬を少しだけ赤く染めているシルビア。
確かにその姿は可愛らしくもあり、美しい。常に隣にいたパートナーだったが、こいつとこんな話になったのは初めての経験だ。
シルビアも恐らくはそんな話は意識していなかったのかもしれない。
「お?ライナも照れてるのか?頬が赤いぞー?」
宗像の矛先はシルビアから俺の方に方向転換される。
「本当だ!ライナの頬少しだけ赤いね!」
四人から弄られていた茜はその対象を俺に移し替えようと必死に俺の話題を四人に持ちかける。
茜の声が聞こえた時点で俺も既に時遅し。俺の方に視線を写した2ペア姉妹はいやらしく笑うと俺の近くに寄ってきた。
これはまずい…!
そう思い、目の前に置かれている料理を口の中に全部流し込む。
味を楽しむ事は出来なかったが、此処でこいつらの玩具対象にされるのよりは断然ましだろう。
それに後々腹が減ったなら京塚に頼めばいい。今日ぐらいだったらサービスしてくれる筈。
「それじゃあ俺は部屋に戻る」
胃の中に一気に食べ物を詰め込んだおかげで少しばかり気持ち悪かったが、俺は誰の返事も待たず、その場を後にした。
そのまま部屋に戻った俺はベッドの上に身をあずける。
何時ぶりだろうか。あんな邪気のない言葉を投げかけられたのは。あんな楽しいと思える時間を過ごしたのは。
…。
「悪くない、な」
自然とそう呟き、瞼をゆっくりと閉じる。
この新たな世界での新しい仲間の事を思いながら。
作品名:Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~ 作家名:灰音