Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~
「それで結果は?」
場所は再び香月の部屋。
何事もなく脳の調査を受けた俺達二人は香月の部屋で結果を待ち続け、そして結果の資料を手にもった香月が部屋に戻ってきた事により一気に緊張が俺の身を包んだ。
部屋の中に入ってきた香月は資料を眺めるばかりで俺の言葉に返事を返そうとしない。
そんな香月の態度に小さかった不安がどんどん大きなものへと変化していく。
部屋の中は妙な静けさで満たされ、俺とシルビアは香月の口が開かれるのを待つばかり。
やがて香月はため息を吐くと俺達の方に振り返った。
「大丈夫よ。凄乃皇の構造は貴方たちの機体にそのまま流用出来るわ」
香月の言葉に溜まっていた息を一気に吐き出す。
「ということで早速取り掛からないとね」
「もう機体構造の設計は考えてあるのか?」
「当たり前でしょ」
自信満々と言った態度で返事を返してきた香月に思わず呆れてしまう。
もし俺達が凄乃皇の構造を使いこなす事が出来なかったらどうするつもりだったのだろうか?只の時間の無駄になる所だと言うのに。
まぁ…結果的にはその先走った行動が成功となったんだ。香月には何も言わない。どころか感謝の意を示さなければならないな。
…この女の事を天才と呼ぶのだろうな。
「機体が出来るのはいつごろになる?」
「整備班には急ピッチでつくらせる予定だけど。シミュレーションの方も考えないといけないから、急ピッチと言ってもそれなりに時間はかかるわ」
それはしょうがないか…。
「…機体が出来るまでの間俺達は知識を蓄える、と言う事か」
「正解。あの馬鹿とは違って頭がいいと助かるわね。この世界の知識に関しては…社に頼むしかない、か」
教師役を誰にするかは考えていなかったのか。
たが社で大丈夫なのか?失礼かもしれないが、社が他人に物事を教える事は出来ないと思うのだが…。
「失礼です。私人に教える事出来ます」
突然後ろから聞こえた声に驚き、振り返ると社の姿がそこにはあった。いつの間に部屋に入ってきたんだ。
「そうよ。社はそう見えても勤勉なんだから。安心して社から教わりなさい。それに社以外に貴方たちにBETAの事なんて教えれないわよ」
…普通に考えればそうか。あの時戦場に出ていながら今さなBETAの事を知らない、なんてなればヴァルキリー中隊の皆に余計な混乱を招く事は目に見えている。
そうなれば社に学ぶしかない、か…。
「宜しく頼む」
「宜しくお願いしますね」
「任せてください」
社のいつもより力が篭ったその言葉に俺も少しだけ安心する。
社はこの世界の住人でもあり、香月と同じ場所にいるんだから知識はそこらの奴らよりは偉いのだろう。
「それじゃあ早速社から学んできなさい。あんまり基地の中をブラブラしてたら宗像達に捕まるだろうし」
思わず基地の中をブラブラしていた時に宗像に捕まった時の事を想像してしまう。
宗像だけではなく、ヴァルキリー中隊の皆に捕まった事を考えると…面倒すぎる。それだけは避けたい。
…ということは朝、昼、夜の訓練時間は社と過ごす事になるのか。
「ついてきてください」
社の後をついて行き、香月の部屋を後にした。
作品名:Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~ 作家名:灰音