Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~
ビシッ!と音が立ちそうな程に指を突きつけてきた瑠奈に素直に頷いてしまう。此方も東城達と同じく髪を左右逆に結んでおり、髪の色は紫色。此方も双子だ。
此処まで東城達と似ていると確実に何かあるんだろうと考えてしまう。
流石に顔の形は東城達とは違うものの、同じ部隊内に双子ペアが二つもあると言うのには驚いてしまう。
「そりゃあ、同じ部隊に双子が2ペアも入れば驚くだろう」
「この部隊って結構面白い人が多いよね!」
俺の言葉に喜々として賛同した薫は皆から冷たい視線で見られている。薫は自分も結構外れた人間だと認識出来ていないようだ。
薫の言葉を借りるようでイマイチ納得出来ないが、この部隊には個性的な人間が多いいと思う。
「打撃支援の如月 沙耶。…宜しく」
千里よりも物静かな。否千里以上にモノを言わなさそうな少女が出てきた。
今にも消えてしまいそうな雰囲気を漂わせており、初めてあった俺でも思わず手を伸ばしたくなってしまう。
腰まで伸ばした綺麗な黒髪も雰囲気と見事に合わさり余計に異様な雰囲気を醸し出してしまっている。
「これが今のヴァルキリー中隊のメンバーだな。やっていけそうか?」
「どうだろうな。俺達二人は軍隊なんて組織に属してなかったから、まだ何とも言えない。まぁ…慣れていくさ」
俺の言葉に宗像は驚きの表情を示す。やはり俺達のような存在が軍隊に入っていないと言うのはこの世界では珍しいのだろう。
「それじゃあお前達は今まで何してたんだ?」
傭兵、と素直に言ってしまっていいものなのか。この世界が如何なるものなのか理解していないために容易は発言は許されないだろう。と言ってもこの世界の情報を知らないために、言い逃れするための言い訳すらも思い浮かばない。
シルビアの方に助けを求めて視線を送るが、俺からの視線が送られているのを分かっているのか分かっていないのか、綺麗に無視された。あまつさえには見事に顔もそらされた。何故そこまで冷たい態度を受けないといけないのか。
「…黙秘だ」
言い訳が思い浮かばない時にはこれに限る。
「…そうか。安心しろ。言いたくない事なら詮索するような事はしないさ」
宗像の言葉に一先安心する。かと言ってこのままずっと黙っておく訳にもいかないだろう。
俺達はこの世界の住人ではないとしても、俺達二人に帰ると言う意思がない以上、この世界には長く、下手したら永遠に留まる事にだったなるんだ。もしそうなった場合俺達の居所はここしかない。ならば少しでも不安の種は除いておいた方がいい。
「悪いな。何時か話せる時が来たら話す」
俺の言葉に宗像は小さく笑うと俺に背を向けた。
「それじゃあその時まで待つとするよ。お前らも疲れてるだろ?自室の用意は副司令がしてくれてる筈だから、副司令の所に行ってきな」
そう言い残し宗像はハンガーを出ていった。他の皆もそれに続くようにハンガーを出ていき、最後に残ったのは俺達二人だけになった。
「…シルビア。香月の部屋分かるか?」
「分かりません」
親切なのか親切ではないのか分からない宗像の対応によって何処に行けばいいのか途方にくれてしまう。
辺りに誰か香月の部屋を知っている人物が居ないか、一旦周りを見渡して見るが、何故か時悪く誰もいない。整備班と呼べるような人間も何故か丁度いない。俺達二人にとっては非常にタイミングが悪い。
シルビアと二人どうしようか途方にくれるなか、ハンガーに先程香月と一緒にいた社、と言う少女が此方に歩いてきているのが目に入った。
恐らくは俺達の事を迎えに来てくれたのだろう。
「貴方たちの部屋、案内します」
「それは助かる。俺達もどうしようか困ってたからな」
「副司令が言い忘れてたんです。決して私が言い忘れてた訳じゃありません」
決して俺達と目線を合わせようとはせず、そう言う社。
その態度からも分かるが恐らくは部屋の案内役は社の仕事だったのだろう。先程までその事を忘れて香月と一緒に行ってしまったと。
「別に俺達は気にしてない」
「そうですよ」
俺の隣にいたシルビアが前に出ると、社の頭を優しく撫でた。
シルビアのこういう行動は結構珍しいのだが…社の事が気に入ったのか?撫でられてる社も嫌がってる訳ではなく、寧ろ目を細めて気持ちよさそうにしている。
「それじゃあ部屋の方に案内してもらえますか?私達も疲れているので」
「はい。ついてきて下さい」
シルビアの指をきゅっと握るとそのままシルビアを引っ張っていくかのように連れていってしまう。その輪から外れていた俺は二人の急激な仲の縮まり具合に呆然と見とれているしかなかった。
「お、おい。待てよ」
二人がハンガーから出た所で我に帰り、既に姿を消した二人の後を必死に追っていった。
作品名:Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~ 作家名:灰音