第4Q 勝てねぇくらいがちょうどいい
1-黒子テツヤ
「相田先輩、バカ神くんには話してるんですけど、」
会場に向かう電車の中、紺野さんは主将たちや1年3人組にバスケを始めたきっかけや諸々の話をした。
「なんか、過酷だな……」
「ってか、女子やっぱ怖ぇぇよぅ、伊月ぃ」
「泣くな、コガ。ってか、なんでいきなり俺たちにも話してくれることにしたんだ?」
「昨日、相田先輩にニセが来たときの私の反応はいったい何があったの、と言われて、もしかして、ほかのみなさんもそう感じてたんじゃないかって思ったんです」
「まぁ、思ったな、確かに」
「あ、最近は高校で知り合いいないから、まだ大丈夫なんですけどね!」
「僕は知り合いですらないんですか、紺野さん」
僕がいじけると、紺野さんは少し慌てて、付け足した。
「いや、ホクロくんはチームメイトだからっ。友達以上!」
「まぁ、紺野、なんかあったら、……まぁ、リコが先でかまわんが、俺たちにも相談できることは言えよ」
「はい」
紺野さんはゆっくり頷いた。だけど、……。
話題が一段落し、福田くんが紺野さんに話題を振った。
「ねぇ、雑誌の記事覚えてるって言ってたけど、黒子のは?」
「ホクロくん?ありませんよ」
「僕、全雑誌の取材で、その場にいたのに忘れられたんです」
「「「「せつねぇぇぇぇ」」」」
「あと、私は、拒否りました」
「えっ、なんで?」
「私の理念を教えたところで、引かれるだけだし、正直、キセキのみんなとは差が大きすぎる」
「それだけ、彼ら5人は、本物の天才だって事です」
男子勢はつばを飲み込み、改めて、感心したようだった。
2-火神大我
ようやく海常に着いた。なげぇな、さすがに都を超えると。
そして、海常は、
「すげぇ、広ぇ……さすが強豪」
「火神くん、よく強豪なんて言葉覚えましたね」
「それくらいいいじゃねぇか!!なんでそこで弄られるんだよ、オレは?!」
「ホクロくんってね、バカな仲間を見つけると、なにげに弄りたくなるひとなの」
「遠回しにオレのことバカ呼ばわりしただろ、紺野!!」
キレかけたオレを見て、紺野はブッと吹き出した。
「キレかけてるのを差し引いても、なんでそんなに目が赤いのさ」
「昨日眠れなくてよっ。ウズウズしてたんだ」
「小学生ですか」
「ガキですか」
「うるせっ」
オレは二人を払い、前に進む。先輩たちも呆れ顔だが、まぁ、無視だ。
しばらく歩くと、前のほうで黄瀬の奴が手を振っていた。
「こんちわっス、みなさん。一応、体育館まで案内に来たっス」
言い終わって、紺野たちを見つけ、駆け寄る。
「もう、黒子っちと紺野っちがあんな振りかたしたから、オレ、昨日まで枕濡らしてたんっスよ」
「またその話ですか」
「私たちのせいになんかすんじゃないわよ、ニセ」
「うぅ、オレ、いままで女の子にだってフられたことないんっスよ」
「そういう話題に繊細な男子高校生にその嫌みを言わないでください」
「ってか、私ならフるわ」
「またひどいっスよ、紺野っち」
「紺野さん、ちょっとだけ静まってください。ほら、もう体育館ですし」
オレたちはぞろぞろと体育館に入っていったのだった。
体育館に入ると、半分が練習していた。奥の方で5人くらいがユニフォームに着替えている。
この状況にオレたちは驚いた。
「おお、来たのか」
太ったオヤジみたいな監督が俺たちを見て言った。
「悪いが、今日はこの範囲でやってくれ」
それに対し、困惑するカントクが声を絞るように言った。
「あの、これはどういう……」
「あ、見たまんまだよ。うちはレギュラーの調整のつもりだが、他の選手には見るモノがなさそうだと思ってね。まぁ、せいぜいトリプルスコアなどならないようにな」
その言葉で、誠凛が……キレた。
ふと彼の近くでユニフォームを着ている黄瀬が目に入った。
「おい、黄瀬。お前、なに着替えとるんだ。お前は出さんぞ。全国レベルのレギュラーの中でも、お前は格が違う。お前が出たら、試合にもならんくなるだろう」
「いや、監督、ほんっと、そういうの止めてっス」
冷や汗をかきながら手で押さえる黄瀬。
鼻息を吹いた監督さんはスタスタとレギュラーたちのほうへ向かった。
「えっと、監督ああ言ってるけど、ベンチに入るから……まぁ、オレを引っ張り出せないようじゃ、キセキの世代を倒すなんて言えないっスしね」
オレたちはバッグを持ち直し、足音を大きくして更衣室へ歩く。
カントクが女の子っぽく海常メンバーに言った。
「あの、調整とか、そういうのは無理かと……」
そして、とどめとばかりに明るくこう宣った。
「そんな余裕は、すぐになくしてあげますよ」
と。オレたちの総意そのものだった。
監督さんは少し睨んでいた。オレもにらみ返してやる。
もうすぐ、始まる。
3-紺野舞
「今日は、さすがにスターターじゃないんですね」
「うん、全国クラスじゃなおさらね」
「わかりました。とりあえず、点差広げられないよう、がんばります!」
言ったホクロくんに突然、バカ神くんが乗っかかった。
「バァカ。勝つんだよ。行くぞ、黒子」
「はい」
「じゃあ、行ってらっしゃい、ホクロくん、バカ神くん」
二人と主将・日向先輩、伊月先輩、水戸部先輩が加わり、5人並んだ。だが、
「あ、あのぅ、誠凛、早く5人並んでください」
審判の生徒が言う。真横にホクロくんいるのに。彼は手を上げ、海常組全員が目を丸くした。
まぁ、帝光でもいつもの光景だったが。
すぐに審判が笛を吹き、
「ティップオフ!」
試合は始まった。まずは海常ボールだ。
「よし、一本、しっかり取るぞ」
小柄な主将らしき海常の選手は言いながら、その場でドリブルをする。
彼が言い終わるか否か、と言うところで、
バッシンッッ!!!!
海常主将の手からボールが弾かれた。黒子くんのスティールによって。
「なっ、てめぇ、どっから?!!」
と言いながらも走り、黒子くんに余裕で追いついた。そこで黒子くんは横にバウンドパスをする。
不意を打たれた海常主将がボールを追う。
ボールを手に取ったのは、バカ神くんだった。
「まずは、先取点っ、だ!!!!」
バカ神くんは大きく腕を振り、派手にダンクをかました。
ズダンッッ、バッキンッッッッッ!!!!!
「「「「バッキン?!!」」」」
その場の選手全員が驚いた。
なんと、バカ神くんの手には、リングが……誠凛側のゴールのリングが外れ、掴まれていたのだった。
「おぅぅ?」
「「「「おぅぇぇぇぇぇええええええ?!!!!!!!」」」」
ある意味やりやがったなぁ……と苦笑する私の隣で、相田先輩はクックックと、魔女のような笑みを浮かべていた。
バカ神くん曰く、ボルトが一本さびていたようだが、
「それでもありえねぇって!!!」
うん、同感。
「えっと、これ、どうするよ、黒子」
「そりゃ、まず謝って……」
リングを指で回るバカ神くんを一瞥し、かすかにどや顔の黒子くんが言った。
「すいません、全面コート、使わせてください」
と。
4-黒子テツヤ
僕はバックを置き、火神くんを促した。そこへ、黄瀬くんが歩み寄る。
「ありゃ、たしかに引っ張り出せるっしょうね」
「もうなめんな、っつうとけ」
軽い言い合いが終わり、僕はため息をついて言った。
「相田先輩、バカ神くんには話してるんですけど、」
会場に向かう電車の中、紺野さんは主将たちや1年3人組にバスケを始めたきっかけや諸々の話をした。
「なんか、過酷だな……」
「ってか、女子やっぱ怖ぇぇよぅ、伊月ぃ」
「泣くな、コガ。ってか、なんでいきなり俺たちにも話してくれることにしたんだ?」
「昨日、相田先輩にニセが来たときの私の反応はいったい何があったの、と言われて、もしかして、ほかのみなさんもそう感じてたんじゃないかって思ったんです」
「まぁ、思ったな、確かに」
「あ、最近は高校で知り合いいないから、まだ大丈夫なんですけどね!」
「僕は知り合いですらないんですか、紺野さん」
僕がいじけると、紺野さんは少し慌てて、付け足した。
「いや、ホクロくんはチームメイトだからっ。友達以上!」
「まぁ、紺野、なんかあったら、……まぁ、リコが先でかまわんが、俺たちにも相談できることは言えよ」
「はい」
紺野さんはゆっくり頷いた。だけど、……。
話題が一段落し、福田くんが紺野さんに話題を振った。
「ねぇ、雑誌の記事覚えてるって言ってたけど、黒子のは?」
「ホクロくん?ありませんよ」
「僕、全雑誌の取材で、その場にいたのに忘れられたんです」
「「「「せつねぇぇぇぇ」」」」
「あと、私は、拒否りました」
「えっ、なんで?」
「私の理念を教えたところで、引かれるだけだし、正直、キセキのみんなとは差が大きすぎる」
「それだけ、彼ら5人は、本物の天才だって事です」
男子勢はつばを飲み込み、改めて、感心したようだった。
2-火神大我
ようやく海常に着いた。なげぇな、さすがに都を超えると。
そして、海常は、
「すげぇ、広ぇ……さすが強豪」
「火神くん、よく強豪なんて言葉覚えましたね」
「それくらいいいじゃねぇか!!なんでそこで弄られるんだよ、オレは?!」
「ホクロくんってね、バカな仲間を見つけると、なにげに弄りたくなるひとなの」
「遠回しにオレのことバカ呼ばわりしただろ、紺野!!」
キレかけたオレを見て、紺野はブッと吹き出した。
「キレかけてるのを差し引いても、なんでそんなに目が赤いのさ」
「昨日眠れなくてよっ。ウズウズしてたんだ」
「小学生ですか」
「ガキですか」
「うるせっ」
オレは二人を払い、前に進む。先輩たちも呆れ顔だが、まぁ、無視だ。
しばらく歩くと、前のほうで黄瀬の奴が手を振っていた。
「こんちわっス、みなさん。一応、体育館まで案内に来たっス」
言い終わって、紺野たちを見つけ、駆け寄る。
「もう、黒子っちと紺野っちがあんな振りかたしたから、オレ、昨日まで枕濡らしてたんっスよ」
「またその話ですか」
「私たちのせいになんかすんじゃないわよ、ニセ」
「うぅ、オレ、いままで女の子にだってフられたことないんっスよ」
「そういう話題に繊細な男子高校生にその嫌みを言わないでください」
「ってか、私ならフるわ」
「またひどいっスよ、紺野っち」
「紺野さん、ちょっとだけ静まってください。ほら、もう体育館ですし」
オレたちはぞろぞろと体育館に入っていったのだった。
体育館に入ると、半分が練習していた。奥の方で5人くらいがユニフォームに着替えている。
この状況にオレたちは驚いた。
「おお、来たのか」
太ったオヤジみたいな監督が俺たちを見て言った。
「悪いが、今日はこの範囲でやってくれ」
それに対し、困惑するカントクが声を絞るように言った。
「あの、これはどういう……」
「あ、見たまんまだよ。うちはレギュラーの調整のつもりだが、他の選手には見るモノがなさそうだと思ってね。まぁ、せいぜいトリプルスコアなどならないようにな」
その言葉で、誠凛が……キレた。
ふと彼の近くでユニフォームを着ている黄瀬が目に入った。
「おい、黄瀬。お前、なに着替えとるんだ。お前は出さんぞ。全国レベルのレギュラーの中でも、お前は格が違う。お前が出たら、試合にもならんくなるだろう」
「いや、監督、ほんっと、そういうの止めてっス」
冷や汗をかきながら手で押さえる黄瀬。
鼻息を吹いた監督さんはスタスタとレギュラーたちのほうへ向かった。
「えっと、監督ああ言ってるけど、ベンチに入るから……まぁ、オレを引っ張り出せないようじゃ、キセキの世代を倒すなんて言えないっスしね」
オレたちはバッグを持ち直し、足音を大きくして更衣室へ歩く。
カントクが女の子っぽく海常メンバーに言った。
「あの、調整とか、そういうのは無理かと……」
そして、とどめとばかりに明るくこう宣った。
「そんな余裕は、すぐになくしてあげますよ」
と。オレたちの総意そのものだった。
監督さんは少し睨んでいた。オレもにらみ返してやる。
もうすぐ、始まる。
3-紺野舞
「今日は、さすがにスターターじゃないんですね」
「うん、全国クラスじゃなおさらね」
「わかりました。とりあえず、点差広げられないよう、がんばります!」
言ったホクロくんに突然、バカ神くんが乗っかかった。
「バァカ。勝つんだよ。行くぞ、黒子」
「はい」
「じゃあ、行ってらっしゃい、ホクロくん、バカ神くん」
二人と主将・日向先輩、伊月先輩、水戸部先輩が加わり、5人並んだ。だが、
「あ、あのぅ、誠凛、早く5人並んでください」
審判の生徒が言う。真横にホクロくんいるのに。彼は手を上げ、海常組全員が目を丸くした。
まぁ、帝光でもいつもの光景だったが。
すぐに審判が笛を吹き、
「ティップオフ!」
試合は始まった。まずは海常ボールだ。
「よし、一本、しっかり取るぞ」
小柄な主将らしき海常の選手は言いながら、その場でドリブルをする。
彼が言い終わるか否か、と言うところで、
バッシンッッ!!!!
海常主将の手からボールが弾かれた。黒子くんのスティールによって。
「なっ、てめぇ、どっから?!!」
と言いながらも走り、黒子くんに余裕で追いついた。そこで黒子くんは横にバウンドパスをする。
不意を打たれた海常主将がボールを追う。
ボールを手に取ったのは、バカ神くんだった。
「まずは、先取点っ、だ!!!!」
バカ神くんは大きく腕を振り、派手にダンクをかました。
ズダンッッ、バッキンッッッッッ!!!!!
「「「「バッキン?!!」」」」
その場の選手全員が驚いた。
なんと、バカ神くんの手には、リングが……誠凛側のゴールのリングが外れ、掴まれていたのだった。
「おぅぅ?」
「「「「おぅぇぇぇぇぇええええええ?!!!!!!!」」」」
ある意味やりやがったなぁ……と苦笑する私の隣で、相田先輩はクックックと、魔女のような笑みを浮かべていた。
バカ神くん曰く、ボルトが一本さびていたようだが、
「それでもありえねぇって!!!」
うん、同感。
「えっと、これ、どうするよ、黒子」
「そりゃ、まず謝って……」
リングを指で回るバカ神くんを一瞥し、かすかにどや顔の黒子くんが言った。
「すいません、全面コート、使わせてください」
と。
4-黒子テツヤ
僕はバックを置き、火神くんを促した。そこへ、黄瀬くんが歩み寄る。
「ありゃ、たしかに引っ張り出せるっしょうね」
「もうなめんな、っつうとけ」
軽い言い合いが終わり、僕はため息をついて言った。
作品名:第4Q 勝てねぇくらいがちょうどいい 作家名:氷雲しょういち