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氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
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第4Q 勝てねぇくらいがちょうどいい

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「火神くん、ゴールって、いくらするんでしょうか」
「え、あれって弁償?!!!」
慌てて振り向く火神くん。
その反対のベンチが、いきなり騒がしくなった。
「っくっそぅ、オレが(リ)バウンドを取っときゃあ!!」
「うるせぇ、早川!!ちょっと黙れ!!」
「なにを慌てている、笠松。あの女監督と女子選手を見て慌てているのか?」
「お前はもっと黙れ、森山!!」
「片方は可愛くないが、もう片方の可愛い娘のために、オレは勝つ!!」
「敵側じゃねぇかっていうツッコミは置いといてやるから、とりあえずいっそ代われ、レギュラー」
「まぁまぁ、笠松、SGはこいつしかいないんだし。センターも、早川が一番だろ。抑えて抑えて」
「ってかお前はなんでこいつらと……っと、来たか」
黄瀬くんが、現れた。
「「「キャーーーーーーーー」」」
ギャラリーである女子たちが沸く。
日向先輩がびびり、「うおぅ、なんだ、こりゃ」と呟いた。
海常キャプテンらしい笠松さんがこれに答えた。
「あいつが出るといつもっすよ。ってか、」
と、突然ダッシュを始め、
「いつまで手ぇ振ってんだ、テメェは!!!」
黄瀬くんの背中に、――跳び蹴りをかました。
「痛っス!!!」
「シバくぞ!」
「もうシバかれてるっス!」
軽く吹き飛ぶ、涙目の黄瀬くん。周りの海常レギュラーの人たちは微動だにしない。
早くもお決まり、になっているのだろう。
笠松さんは肩パンチを2,3発黄瀬くんに打ちながら、
「てめぇ、今の状況分かってんのか?もうちょいシャキシャキしろ!」
「野菜のようにっスか?ちょっ、痛いっスてば」
「黙れ……いいか、あんな盛大な挨拶、ちゃんと返さねぇと失礼だろ」
「はいっス」
言い終えると、それぞれ位置についた。
すでに、
「さっきまでと、空気が違うじゃねぇか……」
「伊達ではないですよ。中身も……」
まずは、海常ボール。
順当に黄瀬くんにパスが渡り、
「こっちも挨拶させてもらうっスよ」
と、大きく腕を振って、
「なっ、まさか同じ?!」
派手なダンクをかました。火神くんと同じフォームの、だ。
だがゴールの軋みから、威力は火神くんより大きいと見え、日向先輩がマークについていたが、歯が立たなかった。
黄瀬くんは髪を払って、火神くんに向かって言う。
「女の子にはあんまり……っスけど、バスケでお返し、忘れたことないんスわ」
火神くんは一瞬固まりながらも、口元を歪め、ニッと笑った。
「おもしれぇ……じゃあ、」
火神くんは突然走り出し、
「よこせ、黒子!!!」
僕は目前に来たボールをパスカットし、火神くんの手元に弾いた。
そしてそのボールは、
バッカァァァン
新たなリングを通り抜けたのだった。

5-紺野舞
〈女の子にはあんまり、っすけど……〉
私には必ずと言っていいほどお返しがあったが、とりあえず突っ込まない。うるさそうだし。
それに、黄瀬くんのあれは明らかにチームメイトへの尊敬の意だ。私が女子でなくてもよかったように思えるから……などという話は置いておくとしよう。
さて、試合は(ほぼ)均衡状態に入った。
「うおらっ」
バスンッッ!!
「ほいっス」
バスンッッ!!
バカ神くんが点を取り、同じフォームで黄瀬くんが返し。今は2点差でなんとか、だ。
だが、問題は点差よりも、
「なによ、このハイペースは!!」
21-23。開始3分でこれである。
もはやディフェンスがあるようには思えないスピードだ。
それぞれディフェンスを全力でやっている。それでも互いの矛が強すぎるのだ。
しかし、この均衡は辛うじてあるモノである。
バカ神くんはフェイダウェイをする。それを黄瀬くんが指で弾く。
逆に黄瀬くんが全く同じフェイダウェイを放ち、成功する。
そう、黄瀬くんはバカ神くんよりキレがよくなっているのだ。
この均衡はもうすぐ、崩れる。
撃った黄瀬くんがバカ神くんに言った。
「ねえ君、もうあきらめたらどうっスか?この均衡は、もうすぐ崩れるっスよ」
「ああんっ」
「オレたちと君たちのフィジカルには圧倒的な差がある。オレにかなう相手は君だけだと思ってたっスけど、やっぱり無理。君のポテンシャルは認める。でも、今の君じゃオレたち『キセキ』の足下にも及ばないっスよ。そして、君の技はオレが全て倍返しできる。まぁ、あきらめながらも、監督の言うように、トリプルにならないようにしてっスよ」
そう言って去る黄瀬くん。歯を食いしばる相田先輩。
そして、言葉を受けたバカ神くんは、
「…………くっ、ハハハハハハハッ」
笑った。あ、狂った。
「いやぁ、わりぃわりぃ。お前ぇみたいな奴、久々でよ。あっちじゃ当たり前だったのになぁ。まぁ、人生、チャレンジしてなんぼじゃん。それに、」
バカ神くんは清々しく、
「勝てねぇくらいがちょうどいい」
と言った。
黄瀬くんは不敵な笑みを浮かべる。
バカ神くんは、何かを探し始めた。
「お前の弱点、分かったぜ。見えたら倍返し?なら見えなかったら?元々マネしろっつうのも無理だが」
バカ神くんは黒子くんの襟をつかみ、引き込んで頭を叩いた。
「お前の弱点、こいつだろ!!」
黄瀬は驚いた顔をした。いや、私たちもだが。
そこでいきなり、
「誠凛、タイムアウトです!」
タイムアウトがかかったのだった。


NG
黒子「紺野さん、これ、原作飛ばしてない?」
紺野「丸写しはダメだろうし。あと、私の活躍のために時間飛ばしたんだって」
黒子「それ、どうなんでしょうか……ってか、飛ばした分どうするんですか?」
紺野「ちゃんと時間入れ替えてもだいたいは入れるんだってぇ」
黒子「ちなみに、このタイムアウト、開始五分でされました。って忠告を入れときます」