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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (12)

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胸がぎゅっと締め付けられる気がした。

「テリム教えて、タッくんの匂いわかりそう?」

抱き上げたテリムの額に、トウコは自分の額を寄せて目を閉じた。

テリムから不安を含む靄を含んだ気持ちが伝わってきた。

『トウコ、タッくんの匂いがわかりにくいんだ。人が多すぎるのかもしれない』

タッくんの匂いがかき消されてしまっていると、テリムは言った。

『でも、多分行った先は左の方。そっちに匂いが流れてる』

そう教えてくれたテリムは、トウコについて歩いて、出来る限り、匂いを嗅いで手伝いをしたい意思を伝えてきた。

励ましてくるテリムの気持ちがわかって、トウコはぎゅっとテリムを抱きしめた。

「ありがとう、テリム。手伝ってくれる気持ちはうれしい。でも、私この街初めてだし、あなたまで迷子にしちゃうかもしれない。だから、ボールに入っていて欲しいの」

トウコが語りかけると、テリムは頷いた。

そっと差し出したボールに戻るテリム。トウコはそのボールを強く握りしめてから、腰のホルダーに戻した。

トウコ達がいたのは、ほんの街の入り口だ。

ポケモンセンターがある直線道。それが街の右側。

つまり、タッくんはそこ以外の街のどこか、左側へ流されて迷子になっちゃったわけだ。

トウコは雑踏に向き合った。

捜さなきゃ! きっとはぐれて心細いはずだ。

街には理由のわからない恐い連中もいるらしいし、そんな奴らにタッくんが見つかる前に、私が見つけるんだ!

もう人混みなんて恐くなかった。

トウコは、足早に歩く雑踏の隙間に入り込んだ。

人混みに慣れていないのは、タッくんだって同じだ。

きっと街の端まで流されたんじゃないだろうか?

ひたすら流れる雑踏をかき分けて、トウコは目を凝らしながら、街の奥を目指して走り出した。