二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

黒と白の狭間でみつけたもの (12)

INDEX|5ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

そこでタッくんたちに、アイスを食べさせてあげようと思っていたのに、どの道に入って曲がるのか迷った。

スーツを着こんだ社会人が、大きな通りをせかせかと歩き、忙しそうにビル街に入っていく。それとは逆に、団代の観光客はガイドに連れられながら、乗客船のある港へと歩いていく。

人の流れに圧倒されながら、見慣れない街と、人の多さに気圧されて、トウコは歩き始めて早々に、道の真ん中で立ち止まってしまった。

「うわ~……」

どこが、どこやら、わからない。

地図をみようと、鞄に手を伸ばした。

「邪魔だよ!」

ドンと肩にぶつかって、サラリーマンが駆けていった。

すみませんと謝る前に、男の人は遠くなっていく。周りを見渡していると、何人もがトウコを邪魔そうに避けて歩いていくのを見て、慌ててタッくんの手を引きながら、道の外側に逸れた。

港近くにあった花壇の縁に腰かける。

そしてため息をついた。

うわ~……こういう場所、苦手かも。

軽いカルチャーショックを起こしたようだった。

今までの街と比べものにならないくらいの人混みに、目が回る。人に酔うとはこういう事なのかと実感した。

始めからこんなでどうしよう……。

「ジャジャピー?」

「大丈夫よ、ありがとうタッくん。ちょっと人混みに酔ったみたい」

このままじゃ、タッくんまで困らせちゃう。

とりあえず、人混みに戸惑い混乱している頭を落ち着けようと、トウコは海側の遊覧船乗り場へ行ってみることにした。

海側は、街中とは正反対に落ち着いていた。

海風に当たって、ベンチで休みながら読書をしている人もいる。

ゆらりゆらりと揺れる青い海の水面にほっとした。

トウコも空いていたベンチに腰かけた。

地図を開いてじっとみる。

頭ですぐに覚えられそうもない。だからといって、地図をみて道で立ち止まろうものなら、下手すれば突き飛ばされるかもしれない。

地図を見ると、ビル群はいっけん迷路のような道に見えるけれど、広い道路はすべて奥にある公園に続いていることがわかった。

とりあえず迷ったら大きな道に出て、先に進みさえすれば、公園で休めそうだと安心する。

アーティさんと戦うのはまだ先だろうけれど、ヒウンジムは街の一番端のビルの間にあるのを確認した。

何かあったときに、道を教えてもらおうかとも考えたが、ここまで簡単にたどりつける自信がない。

一気に不安になった。

もっと都会に着いたら楽しいものだと思っていた。

カノコタウンは好きだけど、田舎の中の田舎だったし、テレビドラマをみていても、CMを見ていても、よく映るのは綺麗な都会で、ずっと憧れだったのに。

思っていた想像と違った。

今までの町は、どこを歩いたって、みんな話しかけやすい雰囲気を持っていた。

なのに、この街と来たら、みんな厳しい顔して歩いているから、話しかけにくいし、むしろ話しかける人の方がどうかしているような空気だ。

歩く早さもせかせかして、異様に速いし、みんな自分のことしか考えていないみたい。

都会の人ってこんなに冷かったの? もっと優しいものだと思っていたのに。

とりあえず、情報収集をしよう!

近くのポケモンセンターに行けば、他にもトレーナーがいるし、きっとヒウンアイスのお店もわかるはずだ。

「よーし!行くわよ!」

そう言って、トウコは立ち上がったが、船着き場の境まで歩いたところで、どうしてもそこで立ち止まってしまった。

街との境界線。

朝だからなのか、いつもこうなのかはわからないけれど、すごい人の波。

どうやってこの流れに乗ればいいの?

ポケモンセンターまでは、目と鼻の先なのに、まっすぐ突っ切る方法がわからない。

人の流れが途切れたところで、入ろうとするが躊躇している間に、また人の流れが増える。

「ジャノ!」

タッくんが励ますように声を掛けてくれた。

大丈夫!いけるわ!

人の流れが途切れた!

トウコはタッくんの手をつなぎ直すと、思い切って足を一歩踏み出した!

隙間にひょいと入り込む。

ぶつかってくる人もいない! うまくできたんだ!

そう感激している時、ポケモンセンターの扉が開き、大勢の団体客が出てきた!

「はーい!では、お次は写真撮影に最適な、港へとご案内します!」

観光事業独特の、甲高い声をしたお姉さんが、目印の旗を掲げながら、まっすぐトウコ達に向かって歩いてくる!

え!? なんでポケモンセンターに団体客が!

そう思ったときには、どこにも逃げ場がなかった!

まさか、海外からの客!? そうか、世界を回りながら勝負をする人もいるし、ポケモンセンターに入ったっておかしくない!

そんなことを考えている間に、トウコ達は、前からやってきた団体客と、それをよけながらうまく歩いていく、街路の雑踏にもみくちゃになった。

押し流されるように、元いた港の場所まで戻される。

その時、タッくんの手を握っていた腕が引っぱられた!

つないでいた手がぷっつりと切れる。

あっと思ったときには、トウコは船着き場の方へと、タッくんはその反対側の街へと流されていた。

「や!ちょっと、戻して!」

人の流れに逆らえば、逆らうほど、トウコは後ろへ流された。

「ジャジャー!!」

タッくんの姿が見えなくなる!

「タッくん!」

手を伸ばしたが、もう届かない。

雑踏の中に巻き込まれていく。

ようやく、人の流れが止まったとき、トウコは船着き場の外国船乗り場にいた。

船のチケットを確認する船員が、トウコを不審者を見るような目で見てきた。

好きでこんな場所にきたんじゃないわよ!

そう思いながら、トウコは急いでさっきの場所まで走った。

船着き場と街の道路の境には、タッくんの姿は見当たらなかった。人混みの中を注意深くみるが、何もわからない。

「タッくん! いる? いたら返事して!!」

声は聞こえない。

「タッくん! タッくん!」

何度も叫ぶが、何の声もしない。雑踏の人達は、不思議そうにトウコのことをみるばかりだ。

もしかしたら、ポケモンセンターの中に押されたんじゃ!

そう思って、ポケモンセンターまで走り込んだ。

自動ドアを開け、中に入り辺りを見渡したが、タッくんは見当たらない。

「すみません、ジャノビーを見かけてないですか?」

「さぁ?」

「わからないわ」

ポケモンセンターの中にいた、トレーナーや受付の看護師に声を掛けたがわからなかった。

ここにいないってことは、街中だ。

青ざめるトウコに、あるトレーナーが言った。

「もしかして、迷子? 気をつけた方がいいよ、最近この街でポケモンを盗まれる事件が多いらしいんだ」

嘘!?

この雑踏の中、見つけるのは時間がかかると思う。

その間に、タッくんに何かあったら!?

考えるだけで恐ろしかった。

トウコは急いでポケモンセンターを飛び出した!

先程、別れ離れになってしまった港の側で、鼻の良いテリムをボールから出す。

状況を知ったテリムが、雑踏の側で匂いを嗅ぎ始めたが、何度か鼻をぴくぴくと動かして、トウコを振り返った。

困った表情、何とも言えないような目をしている…。