甘味欠乏エブリディ
目元や金髪から垣間見える耳までも赤くして瞳を潤ませる。わなわなと唇を震わせた彼は、「ばかぁ!そんなんするわけねーだろこのメタボっ!」と喚いた。――まあ、想定の範囲内の言動と反応である。
「じゃあさ、」聞き分けの良い振りをして、アルフレッドはにっこり笑って妥協案を提示する。
「カップからでいいから飲ませてくれよ。俺はキミの腰と尻を撫でるのでいっぱいいっぱいなんだぞ!」
「じゃあ離せよこのむっつり!尻を撫でんなバカ!」
「やーなこった」
すすす、と尻を辿る手を止めないでいると、びくびく震えるアーサーは頬を紅潮させたまま「分かったから!だから手を動かすな」とカップを握り直す。
不器用そうな細い指でカップの取っ手を握って、カップの縁をアルフレッドの唇に押し付ける。ゆっくり傾けると、唇の隙間から明るい琥珀色の液体がゆるゆると流れ込んでいった。
唇を濡らした紅茶の一滴を指先で拭ってやり、アーサーはふいと顔をそらす。「これでいいだろ!」と投げやりに言い放つ彼の顎を掴みこちらに無理やり引き寄せる。
これでいい?そんなわけないだろ、ばか。
「…!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!」
紅茶を口に含んだままの唇を彼に押し付ける。驚きに目を瞠る彼を眼鏡のレンズ奥から視姦しながら唇を重ねて隙間をこじ開ける。
舌をぬるりと這わせて差し入れると、彼の咽喉からひゅうとか細い音が聞こえた。
「んぅ、う、ん、――――っ」
そのまま舌で咥内をかき混ぜて、お互いの舌を絡めて這わせて辿らせる。同時に琥珀色の液体と唾液とを送りこんで、飲み込むまで唇を重ね合わせたまま舌を擦り合わせる。
数瞬の躊躇いの後、こくり、と彼は嚥下した。
苦しくなったのか胸を叩いて離せと訴えてきた彼に素直に呼吸を許してやると、ぜひぜひと必死に不器用な呼吸を繰り返して、ぎゅっと睨みつけてくる彼は、恐ろしく愛らしくて艶やかで可愛くて淫靡で淫猥だった。
彼の唇から垂れる、紅茶とも唾液とも取れぬ液体を舐り取り、アルフレッドは目を細めて、微笑った。
「こんなこと、子供相手には出来ないだろ?」
にやりと笑ったその貌は、悪戯好きの子供のようにも、老獪で周到な大人のようにも見えて。
頬を染めたまま、絶句したきりの愛しい人ともう一度唇を重ねて、アルフレッドは満足そうに笑った。
――そうだな、お茶受けのお菓子には甘いものがいい。
ケーキやパイやタルトよりももっともっと甘くて美味しい、例えば髪先から爪先までハチミツみたいに甘いキミとか、ね。
おわり