少年純情物語中沢くん
「だって先輩の好きな人は、俺なんかより程遠いから……」
「そういうこと言うものじゃないの。私、あなたと遊べてとっても嬉しかったから!」
「!!!」
マミは感情大きく叫んだ。
「私、中学入って、友達と遊ぶなんてほとんどしなくなったの。
こんな気分、本当に久しぶりだった!」
「先輩……」
「何よ、私ったらずっと一人で頑張ってきたのに、誰かと遊びたいなんて……
やっぱり私って、まだまだダメな子ね」
「先輩こそ何言っているんですか。もう先輩は一人ぼっちじゃないですよ」
「!!!」
「先輩の好きな人、ずっと先輩を慕っているんでしょ。もちろん俺も」
「……そうね。ありがとう」
「それから先輩、一つお願いしてもいいですか」
「お願い?」
「もし暇がありましたら、たまには学校一緒に帰っても、いいですか?」
「もう、図々しいんだから。別にいいわよ」
「ありがとうございます」
「じゃ、私はもう帰るわね。中沢さん、本当に今日はありがとう」
「いえいえこちらこそ。先輩、また月曜日に」
中沢は、駅を去る先輩をずっと見送っていた。
そろそろ帰ろうかと思ったときだった。
「あ、しまったプレゼント渡し損ねた! まあいい、また月曜日」
自転車に乗り、自宅へ走る中沢。
告白は失敗した。
でもマミの本当の気持ち、そして自分の愚かさを知ることができた。
それだけでも、最高の出来事だった。
「よおーし、やる気出てきた! 明日からも頑張るぞ!」
先輩の好きな人は、誰かの役に立とうと頑張っている。
なら俺も頑張る。だって俺も先輩が大好きだから!
中沢にとって、それは人生初めての、自分への誓いだった。
第三話 終
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん