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少年純情物語中沢くん

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「さてどこにしようかな。やっぱファミレス……」
「あら、お弁当持って来ましたのよ。もちろん二人分ね」
「ええっ!?」
先輩の、手作り弁当!!
ここでも食べられるなんて……
今日は最高に幸せだーーーー!!

広場でビニルシートを広げ、バスケットを置き開ける。
「わあ、サンドイッチ、美味しそうだな〜」
「ではいただきましょう」
モグモグ……モグモグ……
「う、美味いモグモグ……ググ……」
あまりにも美味しすぎて、口と食道が苦しくなってしまった。
慌ててペットボトルを出し、スポーツドリンクを口に流し込む。
「ぷはぁ!」
「だ、大丈夫?」
マミは水筒から紅茶を紙コップに注ぎ、中沢に渡す。
「先輩、ありがとうございます……」
「よかったわ。少し休みましょうか」
「はい」
仰向けになる二人。視界には青空以外の何も映らない。
「そろそろ行きましょう」
十五分ほど過ぎて、二人は歩き出した。

「次は……」
「やっぱりジェットコースターよね!」
マミに手を引かれ、入り口まで連れられる。
だがその手前には、行列がズラリ。一時間半待ち。
「はは。よく並んでるね……」
「仕方ないわ。諦めましょう」
「じゃあ……お化け屋敷?」
「そうね」
コースターを諦め、お化け屋敷へ向かう。
二十分待って入った。

「…………」
「な、中沢さん……」
「いえ……ちょっと嫌なものを……」
お化け屋敷を歩いているうちに、あの悪夢が思い出される。
でも何故だろう。ちょっと怖いけど、全然不安にならない。
物怖じせず歩き続ける先輩が、とても凛々しく見える。
もう周囲のお化けより、先輩しか見えなくなった。
「どう、怖かった?」
「いえ、先輩がいてくれたから平気でしたよ」
「ありがとう。でも無理しなくていいのよ」
「とんでもない。先輩まったく怖がりもせず歩いてるから、俺も大丈夫だなって……」
「そ、そう……」
マミは少し照れていた。

それから高速ボートやコーヒーカップなどに乗っているうちに、夕方になった。
「もう夕方ですね」
「ええ」
「先輩、観覧車乗りませんか?」
「そうね。夕日も綺麗だしね」
二人揃って観覧車に向かった。
(ふふふ……この定番最高シチュエーションを、逃すわけにはいかん!)
中沢の目が、最高にぎらぎら輝いていた。

ゆっくり上がる観覧車。マミは外の景色を眺めている。
中沢は、緊張して俯いたままだった。
しかし勇気を出して話しかける。
「あ、あの巴先輩……!」
「何かしら?」
「先輩……」
(怖い……でも、ここで言わなきゃ!)
「俺、巴先輩のことが好きです! 俺は巴先輩を、一番愛しています!」
「!」
「どうか先輩、俺と付き合ってください!」
自分の想いを全て吐き出した。心が痛い。
胸を押さえる。心臓が激しく脈を打つ。
「……」
マミはしばらく目を閉じた後、ようやく口を開いた。
「ごめんなさい。残念だけどあなたの気持ちには応えられないわ」
「……!!」
中沢の表情が、悲壮感に包まれる。
しかしマミはすぐ笑顔で自分の気持ちを語る。
「別に、あなたのことが嫌いと言ってるわけじゃないのよ」
「……もしかして、他に好きな人がいるのですか?」
マミはしばらく考えて答える。
「ええ、いるわ。その子は大人しくてあまり自分に自信が持てないけど、
友達想いで、誰にでも優しくできるのよ」
「その人が、先輩の一番好きな人なのですか……」
名前とか、詳しく聞こうともした。でも一番憧れの人のプライベートを傷つけたくない。
そう思って中沢は黙り込んだ。するとマミは突然泣き出す。
「ううっ……」
「せ、先輩!?」
涙を流しながら、マミが語る。
「中沢さん、私ずっと一人ぼっちだった。交通事故で家族はみんな……」
「!!」
初めて知った、マミの過去。
それを聞いて中沢も目から涙がこぼれる。
「事故のときね、神様の声が聞こえたの」
「神様?」
「私を必要としてる人がたくさんいる。私は死んじゃいけないってね」
「だから、助かったのですか?」
「そういうことね。それから私は毎日のように人助けを頑張ってきたわ」
「そうだったんですか……本当に先輩は素晴らしいですね」
「褒めてもらえるのは嬉しいわ。でも……」
「?」
「一人ぼっちだから、辛くても怖くても、誰にも言えないの」
話を聞いているうちに、マミの仕事の辛さが心に伝わってきた。
時には怪我することがあっても助けてくれない。一人でやるしかない……
「でもある日、私と一緒に頑張りたい人に出会えたの」
「その人が……」
「ええ。今は私の仕事に付き合ってもらってるわ」
「!!」
「といっても見学程度ね。危ないって言ってるのに、興味津々で付いてくるんだから」
マミの表情から悲しみが薄れ、いつもの笑顔に戻っていく。
「その子普段大人しいけど、仕事中は私を真剣に見てくれてるわ」
「いい人ですね」
「その子、私を見て自分も誰かの役に立ちたいと本気で思ってくれたの」
「……!!」
中沢も、マミの好きな人は本当にすごいと思った。
危険な仕事にも恐れずついていき、先輩の仕事を学ぶ。
そして自分も、先輩みたいに誰かのために役立てる人になりたい。
「先輩、その人もきっと、すごく先輩に憧れているんですね」
「……憧れるほどのものじゃないわ」
「いえ、俺はわかります。その人がどれだけ先輩が好きかってこと」
「!!!」
「二人はきっといい恋人同士になれますよ!」
「そ、そんなにはっきり言われちゃったら……」
突然顔を赤らめ俯くマミ。そんなマミを可愛く思う中沢だった。
そして観覧車は一番下まで降りた。

夕暮れの園内を歩く二人。
「先輩、お土産でも買って行きましょう」
「ええ」
売店は、お菓子やキャラグッズなどでいっぱいだった。
中沢が目にしたもの。
恋人同士で名前を書いて、くっつけるとハート型になる木片。
(買いたかったな。でも……)
マミの本当の気持ちを知って、とても買えなかった。
仕方なく、家族へのクッキー一箱と、それから……
(これ、可愛いな。先輩にプレゼントしよう)
土産を買い終えて、遊園地を後にする。
帰りの電車、マミはぐっすり眠りについていた。
そんな横顔を、そっと見守る中沢。
「間もなく〜見滝原〜見滝原〜」
電車のアナウンスでマミは目を覚ました。
やがて駅を降りて、解散した直後だった。
「あの、先輩……」
「何?」
「先輩は何でずっと一人で頑張ってこられたのですか?」
「前にも言ったでしょう。感謝されるとやりがいがあるの」
「でも、誰も助けてもらえなくて、怪我だってするのでしょう」
「そうよ。でもだからといって、落ち込んでばかりじゃ、きりがないじゃない」
「……」
「助けてもらった人が幸せになってくれる。そう思いながら、楽しんでいきたいわ」
「楽しむ、ことですか……」
「ええ」
辛い仕事に対しても、笑顔で語れるマミ。
対して自分が、とても情けなくなった。
「本当に先輩は素敵です。それに比べ俺なんか、バカでダメダメです」
デートして一番気づいたことが自分の愚かさだということは、
自分自身が一番よく理解していた。
「成績も平凡以下、母ちゃんには怒鳴られてばかり。
とても先輩の好きな人にはなれません」
「何でそんなこと言うの?」
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん