少年純情物語中沢くん
画面右下には、『あの超有名占い師が帰ってきた!』と書いてあるけど、
占いでもなんでもなく、ただ大げさなこと言ってからかってるだけじゃないか。
そう思いながら中沢は呟いた。
「暁美さんの予言も、からかってるだけなんだな」
クールな超人と思いきや、こんなお茶目なところもあるほむら。
(でもウケ狙うなら、もっと明るくやってほしいなあ)
睨みながらあんな口調で言われたら、こちらは唖然として何も言えなくなるだけである。
それにしてもこの番組は嫌だ。オバサンの偉そうな態度が気に食わん。
問答無用でチャンネルを変えた。アニメをやっていた。
暗闇の牢屋で多くの人々が座り込み、生気を失いかけていた。
ステッキを片手に持った、露出の多い黒服の女が高らかに叫ぶ。
「さあ絶望しなさい! あなたたちは邪帝ネイロンに捧ぐ生贄となるのです!」
その時、牢の壁が吹き飛び、中へ風が突き抜ける。
風の中から、一人の少女が現れた。茶髪にツインテール、フリルの付いた黄色い服、
レースつきの白いニーソックス、手に持つハートのステッキ。
その少女が名乗り上げた。
「ミラクル・ミリー参上! ルビデス、またあなたの仕業ね!」
黒服のルビデスが言い返す。
「待ってましたわミリー、さあ勝負よ!」
両者が空高く飛び上がった。
ピュンピュンピュンピュン!!
ルビデスが黒く細いビームを連発させる。
「ミラクル・ガード!」
キン!キン!キン!
ミリーはハートの盾で防ぐ。
「やりますわね。でもこれでどうかしら……」
ゴォォォォォ……
ルビデスがエネルギーを溜めると、極太のビームが放出された!
「ミラクル・ブラスター!」
ドォォォ! ミリーも極太ビームで対抗する。
ギギギ……力をぶつけ合う両者。
「フフフ……あなたの力は……そんなものかしら!」
「きゃあああ!!!」
ルビデスのより強い放出に、ミリーは耐え切れず倒れてしまった。
カツ カツ カツ
無様に倒れるミリーに歩み寄るルビデス。
「さあとどめを刺しましょう。子猫ちゃん」
「だめ……このままじゃ……私はみんなを……守りたい!」
ミリーはステッキから、光のボールを放った。
そのボールは遅いどころか、ルビデスに当たりもしなかった。
「あらら、苦しくて狙いもつけられないのね」
嘲り笑うルビデスが、ミリーにステッキを向けたときだった。
「嘘っ!?」
ボールの着弾地点から光が放たれ、ルビデスを覆う。
ルビデスは光の檻に閉じ込められ、身動きとれなくなっていた。
「私は負けないんだから! ミラクル・ブラスター!」
極太の光がルビデスに向けられる。
哀れかな、閉じ込められ何もできないルビデスは、ただ光の餌食になるしかなかった。
「ぎゃああああ!!!!」
ルビデスはそのまま倒れた。
それでも気力を振り絞って起き上がる。だが息はもう限界だった。
「はあ……はあ……覚えてなさい!」
ルビデスは瞬間的に、どこかへと消え去った。
「おおおありがとうミリー!」
「おかげで助かったわ……」
閉じ込められた人々が、ミリーに集まって褒め称えている。
そしてミリーは飛び去っていった。最後に老人が語る。
「わしらも、頑張らんといかんのう」
そしてエンディングが流れだした。
一人の少女の活躍によって、多くの人々が救われ希望がもたらされた。
どんな絶望に閉じ込められようと……
中沢は思いだした。自分や夕方のOLを助けた、憧れの先輩を。
魔法なんて、現実にあるわけない。でも苦しむ人々を助ける正義の味方はいる。
警察や消防士、医者だって自衛官だってみんなそうじゃないか。
やがて夜もふけ、中沢はベッドに入っていた。
布団の中でも、マミのことを考えだす。
「明日、もっといろいろ聞いてみようかな」
困っている人、苦しむ人を助けようと、日々頑張るマミ。
自分は先輩に比べちっぽけな存在。
でもそんな自分でも、マミを手伝って、一緒に頑張れたら……
そいつはとても嬉しいなと、思う中沢であった。
第二話 終
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん