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少年純情物語中沢くん

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テレビや新聞には、また行方不明、自殺などの記事が相次ぐ。
とうとう見滝原は『鬼の町』『呪われた町』とまで噂されるようになっていまった。
「あなたも、その被害者だったのよ」
自分が被害者。それはとても信じられないことだった。
楽しい先輩との会話になるはずが、急に重苦しくなるなんて……

マミはさらに追って説明した。
「心が弱っていると、周囲のことがわからなくなって、幻覚まで見始める……
被害者はこういう体験をしているわ」
そういえばあの時は、疲れたうえで信じられない状況に、心身ともに混乱していた。
追試を受けた後で、しかも最強クラスメイトのあり得ない光景。
さらには全力疾走し続けていた。わけがわからなくなるのも無理なかった。
「あの時、いろいろあったからな……」
「こういう状態が一番危険だから、気をつけなさい」
「はい……」
説教を素直に受け止め、食事を続けた。昼休みも終わりに近づく。
「巴先輩、今日はありがとうございました。また明日来てもいいですか?」
「ええ、どうぞご遠慮なく」
また明日もマミとおしゃべりできることにすっかり大喜びして、自分の教室へ戻っていった。

帰りのホームルームが終わり、生徒たちは教室を出ていく。
中沢が帰ろうとすると、隣の声に呼び止められた。
「中沢さん、ちょっといいかしら」
いつも隣に居座る最強、暁美ほむら。
それだけでも恐ろしいのに、視線を向けられたらペンを持つ手が動かなくなってしまう。
そんな彼女に廊下まで連れられて、二人向き合う。
「あの……暁美さん……?」
恐る恐るほむらを見上げる中沢。
ほむらがじっと睨みつけている。そして、厳しい口調で告げた。
「中沢さんに一つだけ言っておくわ」
「な、何でしょうか……?」
その口調で告げられ、全身が震え出す。
「鹿目まどか、美樹さやか、巴マミ。彼女たちに一切関わってはだめ」
「ええっ?」
「さもないとあなた、後悔して死ぬわ」
「はあ……?」
「忠告は以上」
そう言って、ほむらは去っていった。

最強のほむらが放った厳しい忠告。
しかし受け止めるわけにもいかなかった。
(巴先輩は憧れの人。たとえ神が関わるなと言っても、俺は従わないぞ!)
(鹿目さんや美樹だって、いい人じゃないか。関わって悪いわけないだろう!)
(しかも死ぬって大げさだなあ。まあ、暁美さんに関わったら死ぬかもしれんけど……)
それは半分本気だった。あんな超人についていけるわけがないのだから。
ほむらの恐怖に耐えながら、自分をしっかり持つ中沢。
「さて、わからん予言は忘れて、部活の時間だ」
中沢はトランプを片手に、部活の教室へと向かった。

アナログ・ゲーム部。
部員数は、三年二人(うち女子一人)、二年二人、一年一人の五人。
活動は週三日で、カードゲームやボードゲームをみんなで遊ぶ。
全国大会目指すとかそんな目標はなく、ただ集まって遊ぶのみ。
それでも部のルールはある。
例えば、携帯ゲーム機の持ち込み禁止。
携帯電話も原則禁止(緊急連絡などは例外)
ちなみに部長は少年将棋クラブに通い、初段を認定されたそうだ。

中沢が入部したわけは、みんなと遊びたかったからだけで、
トランプや将棋などが特別好きというわけではない。
家に帰れば、ビデオゲームを普通にする。
つまり、厳しい特訓に費やすよりも、のんびり楽しく過ごす方が性に合っているのだ。

部室では、五人揃ってトランプ、双六などで遊んでいた。
そのうち、女子がトランプで占いをやり出した。
「では中沢さん、カードを引いてください」
山札から引いたカードは、ハートの10。
「おお中沢さん、これは思いがけない出会いがあると思いますよ」
「ははは、そりゃ楽しみだな」
正直占いなんて、あまり当てにはしていない。ただ、結果を聞くのが面白いだけだ。
時には、
「ネコに引っ掻かれる」
「ウンコを踏む」
「穴に落ちる」
といったことも言われたが、信じていないし当たりもしないので笑って済ましている。
ただ、
「落石注意」
と言われて、幼稚園児が投げた石が頭に当たったときや、
「火傷注意」
と言われて、激辛スープ飲まされたときはさすがに参ったが。

「先輩の占いはいつも楽しいですね」
「いやあ〜」
この先輩の占いは結果が良くても悪くても笑っていられる。全然嫌気がしない。
「先輩は知ってますか。暁美さんのこと」
「ああ〜あの超ウルトラダイナミックパワーを秘めた宇宙人のことかい?」
宇宙人……さすがにそれはないが、この先輩から見ればそうなるんだな。
超人的パワーは言うまでもないことだし。
「暁美さん、俺の隣に座ってるんですよ。いつも怖くて怖くて……」
「おお〜それはまたエキサイティング!」
「今日暁美さんに、クラスメイトと関わったら死ぬって言われたんすよ。
わけわかんないですよね。」
「そのクラスメイトはどんな方ですか? もしかして、アメリカからの殺し屋ですか?」
勢いよく中沢に迫る先輩。
「そ……そんなわけないでしょ。みんないい人ばかりだよ。なのに死ぬって……」
「たしかに、それは予言として間違ってますなあ」
こうしていろいろ話して、また遊んでいるうちに、夕方過ぎて日が沈みかけた。

そして下校時間――

(また、明日も巴先輩に会うぞー。一緒にトランプするんだ)
下校途中、中沢はずっとマミのことを考えていた。すると前から――
ドン! 額と額がぶつかり合った。
「あいてっ!」
「あらら、ごめんなさい……ついぼーっとしちゃって……」
目の前には、ポニーテールの女性。服装から、会社帰りのOLだとわかる。
「いえいえ、こちらこそ」
「今日はとっても嬉しいことがありましたから……ああ、キレイな人だったな……」
OLが放心状態に入る。
「あの……どんな人なんですか?」
「学校の制服着てたけど、もうスタイル抜群で、優しくて大人びてるの〜」
――もしや!
中沢はますますその人が気になった。
「私、今まで何があったか覚えてないの。怖い夢見てたけど、
気がついたらキレイな人が……」
――!!
それは、自分にも起きたことと、全く同じだった。さらに中沢は質問する。
「その人の髪型、縦ロールでしたか!?」
「は、はい。その髪型でした。って、ご存知なのですか!?」
「はい! その人うちの中学の先輩なんですよ!」
「ええっ! 中学生であのスタイル……ステキだな……
私なんか、お子ちゃま体型だったもの」
「俺も倒れていたところを、助けてもらったんです。
それ以来もうその人に憧れちゃって……」
「そうですか……お互いよかったですね」
「はい!」
中沢はOLと別れ、自宅へ歩き出した。

「あの人すごく喜んでたな。わかるよ。俺も嬉しかったもん」
「巴先輩って、あんな風に人助けをしているのかな?」
そんなことを考えながら、歩いて行く中沢だった。

夕食後、中沢はテレビをつけた。
「このオバサン誰だ? 見たことないんだけど」
お笑い芸人が占い師のオバサンに呼び出されている。
オバサンが芸人に向かって予言する
「そんな生活してちゃダメ。あんた絶対後悔して死ぬわよ」
後悔して死ぬって……いくら何でもムチャクチャじゃないか。
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん