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少年純情物語中沢くん

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こいつは大いに悩む。当てずっぽうで取っても、勝てる保証はない。
(よし、ここはちと無理するか……)
中沢が手を伸ばし、ゆっくりと左右交互に動かす。
そして、その一方を掴んだ。
(!!)
その時、マミが一瞬笑み浮かべたのが見えた。
(これは、ハズレ!)
中沢はすぐさま隣のカードを引く。
カードは……当たりだ!
「よ、よおし……上がり!」
カードを引いた瞬間、マミの顔が唖然となった。
まさかフェイントかけられるとは……
「残念。やられたわね」
負けても笑顔のマミだった。

ゲームを終えて、中沢はマミに聞いた。
「あの、巴先輩。人助けのお仕事なんだけどさ、俺も一緒に行って、いいかな?」
「え?」
「俺、巴先輩に憧れてるんです。俺も力になれたら嬉しいかなって……」
するとマミは、叱るように言う。
「言っておくけど、遊びでやっているわけじゃないのよ。時には危ない目にも遭うわ」
「危ない?」
「中には危険な場所に迷い込む人だっている。それでも見過ごすわけにはいかないの」
中沢の顔が蒼然となる。
「中途半端な覚悟で、できるようなことじゃないわ」
「そ、そんな危ない仕事なんですか? それを、先輩はずっと……」
「そうよ。でも昨日も言ったとおり、嫌なことばかりじゃないの」
みんなの幸せを守るためとはいえ、危険に晒されるマミが心配になる中沢。
「わかりました。でも、無理はしないでくださいね……」
「うん。さすがに無謀なことはしないわ」
「あの……中沢くん」
まどかが中沢に話しかける。
「マミさんなら大丈夫だよ。だって強いし、勇気もあるし……」
そうだ、先輩は強いんだ。ちょっとやそっとでやられたりしない。
「……わかった」
「鹿目さんありがとう。そう言ってくれると、自信出るのよね」
「俺も、マミさんを応援します!」
「ありがとう。あら、そろそろ授業始まるころだわ」
「ああ、そうだね。では先輩、失礼します」
「マミさんありがとうございました」
「いえいえ」

廊下に出る二人。階段を降りようとするとき、中沢がまどかに聞く。
「なあ鹿目さん、巴先輩って、本当にすごいよな」
「うん……」
「みんなのためとはいえ、危ない仕事をずっと頑張ってるんだもんな……」
「そうだね。あの、中沢くん」
まどかの目は少し真剣そうだった。大事なことを聞こうとしているようだ。
「何?」
「もしも願いが何でも一つ叶うなら、何をお願いする?」
「え、願い事……?」
真っ先に浮かんだのは、マミの顔だった。マミと恋人同士になりたい。
今考えられるのはそれだった。
「そりゃあ……」
言おうとした直後、もっと大きなことを願いたいと思った。
そうだ、マミのハートくらい、自力でゲットしてやるんだ!
「えーとえーと……」
壮大なる願いとなると、とても考えつかなかった。
億万長者、不老不死、世界の頂点……単純にはいくらでも言えるのだが……
「やっぱり、難しいよね」
「そう……だな……ははは、ところで何で急にそんなこと?」
「な、何でもないよ。テ、テレビでそんなのやってただけだから……」
まどかは慌てて誤魔化しているようだったが、中沢は特に気にしていなかった。

自分の教室に戻った二人。元気よくさやかが迎える。
「おかえりまどかー。マミさんとトランプいいなー」
「さやかちゃんも、今度遊ぼうね」
「なあ美樹、何で俺たちがトランプやってたこと知ってんだ?」
「え? あ……みんなで遊ぶといったら、定番だからさ……」
「そうそう。さやかちゃんの言うとおりだよ。」
「あたしが知ってるわけないじゃん。ただ何となく思っただけ」
「そうか……」
チャイムとともに、自分の席につく中沢。
中沢は授業中考えていた。
まどかとさやか、自分の好きなマミも、何か不思議なオーラを感じると。
しかし、それ以上に不思議なヤツといったら……
隣を見る。転校生暁美ほむらが指名され、前に出てすらすらと問題を解く。
確かに凄いヤツだ。そして不敵ともいえるオーラを、隣の中沢は強く感じ取っていた。
(暁美さん、君は一体何者なんだ?)

授業が終わって、中沢が呟いた。
「願い事かー。そりゃ最高に幸せなこと願いたいけどさ……」
すると、ほむらがこちらを厳しく睨んだ。
「あ、暁美さん!?」
「その話をどこで聞いたのかしら? なぜあなたが知ってるの?」
「そ、それは……鹿目さんから、聞いたんだ。叶えたい願い事ってのテレビで見たから」
「そう……何て答えたの?」
「答えられなかったよ。何でも叶うって言われて、すぐ決められないから」
「わかったわ」
するとほむらは、まどかに歩み寄った。
「鹿目さん、ちょっといいかしら?」
「え、何……?」
まどかは廊下に連れ出され、しばらくして戻ってきた。
「あの……鹿目さんに、何て……」
「一つ忠告しておいただけよ。それと中沢さん」
また睨みつけるほむら。
「鹿目さんに、あまり変なこと吹きこまないでくれるかしら。
下手すれば、取り返しのつかないことになるから」
「……はあ」
暁美ほむら。彼女は一体何がしたいのか。わけがわからなくなる中沢だった。

今日は活動日。中沢は部活の教室へ向かう。
いつも通り、中沢はみんなとトランプや双六で遊んでいた。
しばらくすると、顧問の先生が入ってきた。
「あ、先生こんにちは〜」
みんな揃って挨拶する。アナゲー部顧問。早乙女和子。
中沢と早乙女先生は、一年の頃から知り合っていたのである。
先生も混じって遊ぶうちに、中沢が質問した。
「なあ、先生……」
「どうしたの。中沢くん?」
「俺、こんなことして遊んでばかりでいいんですかね?」
「そんなこと何で聞くの?」
「俺……好きな人が、いるんです!」
「ええっ!?」
中沢の爆弾発言に、先生も含め周りが驚く。
「その人は、とてもキレイで、強くて優しくて……」
もじもじ赤らめながら話す中沢。
「学校の帰りに、人助けのお仕事してるんです。でも大変なことも……」
「うんうん」
「俺はその人に憧れてるんです。だからこんなことして遊んでる自分が情けなくて……」
「うふふ。その人きっと、仕事そのものが、彼女に生きがいなのかもね」
生きがいか……たしかにそうだ。マミは、感謝の気持ちが最高の報酬だと言ってた。
「彼女は多分、自分の理想を貫いてるんだと思います。そんな彼女が、素敵に思えたんです」
「生き方そのものが夢ねえ。私も素敵だと思うわ。でも、人の生き方なんてそれぞれ自由よ」
「はい」
「だから中沢くんは、中沢くんの思うように頑張りなさい。先生も応援しているわ」
「ありがとう……ございます」
先生の話を聞いて、ちょっと気が楽になった中沢。
「あ、先生〜新しい恋占いがあるんですけど〜」
「ええっ!? お、教えなさい!」
女子部員に誘われ、占いをする早乙女先生。
こうして楽しい部活の時間は過ぎていった。

その夜、中沢は自室で考えていた。
(巴先輩、危ないことでもいつも頑張ってるんだな……それなのに、俺は、何もできない……)
自分の無力さに落ち込む中沢。せめて、楽しませることくらいは……
そう考えたときだった。
(よし……やってみよう。日頃の恩返しだ)

翌日の昼休み、中沢はマミの元へ向かおうとした。まどかが呼び止める。
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん