夜恋病棟・Ⅱ
「アーサー、起きたあるか?」
酷く怪我を負ったアーサーを気遣ったのか、優しく揺らして起こしてくれた。
まだ重たい瞼を開くと優しい微笑みを浮かべた耀がにこりと笑った。
「我は学校あるから、お留守番頼むある。夕方には帰るある。」
「…了解。」
「今日はゆっくり寝てて良いあるよ。怪我もしているし…。」
それだけ言うと耀は立ち上がり、それじゃあと手を此方に降った。
アーサーは弱々しく手を降り返すと再び眼を瞑った。
ぱたん、ガチャ。
と玄関が閉まるのが微かに聞こえた。
言葉に甘えて眠ろうかとしたが、一度覚醒した意識は再び眠りには落ちてくれなかった。
しょうがなく眼を開けて上半身を起こし、部屋全体を見回す。
そういえば部屋全体を見るのはこれが初めてだった。
意識を失っていた内に運ばれてきた部屋だったので、すこし興味が沸いた。
なんとも学生にしては殺風景な部屋で、勉強机と椅子、それにベッドと本棚が置いてあるだけだった。
勉強机の上にはノートパソコンが置いてあり、その奥には教材や分厚い本がずらりと隙間なく敷き詰められていた。
本棚も同様の状態であり、アーサーが読んで面白いものはなかろうと予想した。
壁にポスターのひとつふたつもなく、ただひたすら真っ白だ。
ベッドもシンプルで、白いシーツと枕に水玉が入った掛け布団。
真面目な学生だなとぼそり、誰も居ない部屋で呟く。
そんな学生を、これからアーサーが幸せに出来るのかが不安になってきた。
よく見ると床に長座布団と明らか人が寝た痕跡がある毛布が、転がっていた。
きっと急いでいた耀が片付け忘れたのか、片付けられなかったのか。
普通ならそこでそれは無視してそのままベッドへ沈むだろうが生憎耀が思っている程怪我は酷くなかった。
もう半分以上治っていた。
天使の回復力にはいつでも驚かせられる。
まず幸福は些細なことからだろう。
塵も積もれば山となる。
アーサーは素足でフローリングの冷たい床へ足をついた。
ひやりとした感覚がさらに覚醒を進める。
ジーンズを着用している――そういえば天使の服装は人間が想像するような真っ白い布をぐるぐると巻いたような格好ではない。至って人間と似ている服装で生活を送るのだ。なのでアーサーも怪しまれず耀に助けてもらえたという事である――ため、歩くごとにシュ、シュ、と布が擦れあい音を立てる。
そうしてまずぐしゃぐしゃになった毛布を広い上げ、綺麗に折り畳む。
そして長座布団は二つに折り、その上に真四角に畳んだ毛布を置いた。
残念な事に仕舞う場所がわからないのでこのまま置いておく。
折角立ち上がったのだから掃除でもしてあげようかと思ったが、部屋には埃ひとつも無く、フローリングはピカピカでテーブルの上も同様だった。
リビングへ仕事を求めて行くも、洗濯物も干してあるし、食器は洗い終えて綺麗に仕舞ってある。
そしてテーブルの上にはサランラップをしたご飯茶碗と味噌汁とおかず。
近くにあったメモには
「レンジで温めて食べてね。」
と一言添えてあった。
仕方なくアーサーはペタペタと耀の自室に戻りベッドに入り直した。
昼飯まで残りの怪我を治してしまおう。
アーサーは再び眼を瞑ったのだ。
酷く怪我を負ったアーサーを気遣ったのか、優しく揺らして起こしてくれた。
まだ重たい瞼を開くと優しい微笑みを浮かべた耀がにこりと笑った。
「我は学校あるから、お留守番頼むある。夕方には帰るある。」
「…了解。」
「今日はゆっくり寝てて良いあるよ。怪我もしているし…。」
それだけ言うと耀は立ち上がり、それじゃあと手を此方に降った。
アーサーは弱々しく手を降り返すと再び眼を瞑った。
ぱたん、ガチャ。
と玄関が閉まるのが微かに聞こえた。
言葉に甘えて眠ろうかとしたが、一度覚醒した意識は再び眠りには落ちてくれなかった。
しょうがなく眼を開けて上半身を起こし、部屋全体を見回す。
そういえば部屋全体を見るのはこれが初めてだった。
意識を失っていた内に運ばれてきた部屋だったので、すこし興味が沸いた。
なんとも学生にしては殺風景な部屋で、勉強机と椅子、それにベッドと本棚が置いてあるだけだった。
勉強机の上にはノートパソコンが置いてあり、その奥には教材や分厚い本がずらりと隙間なく敷き詰められていた。
本棚も同様の状態であり、アーサーが読んで面白いものはなかろうと予想した。
壁にポスターのひとつふたつもなく、ただひたすら真っ白だ。
ベッドもシンプルで、白いシーツと枕に水玉が入った掛け布団。
真面目な学生だなとぼそり、誰も居ない部屋で呟く。
そんな学生を、これからアーサーが幸せに出来るのかが不安になってきた。
よく見ると床に長座布団と明らか人が寝た痕跡がある毛布が、転がっていた。
きっと急いでいた耀が片付け忘れたのか、片付けられなかったのか。
普通ならそこでそれは無視してそのままベッドへ沈むだろうが生憎耀が思っている程怪我は酷くなかった。
もう半分以上治っていた。
天使の回復力にはいつでも驚かせられる。
まず幸福は些細なことからだろう。
塵も積もれば山となる。
アーサーは素足でフローリングの冷たい床へ足をついた。
ひやりとした感覚がさらに覚醒を進める。
ジーンズを着用している――そういえば天使の服装は人間が想像するような真っ白い布をぐるぐると巻いたような格好ではない。至って人間と似ている服装で生活を送るのだ。なのでアーサーも怪しまれず耀に助けてもらえたという事である――ため、歩くごとにシュ、シュ、と布が擦れあい音を立てる。
そうしてまずぐしゃぐしゃになった毛布を広い上げ、綺麗に折り畳む。
そして長座布団は二つに折り、その上に真四角に畳んだ毛布を置いた。
残念な事に仕舞う場所がわからないのでこのまま置いておく。
折角立ち上がったのだから掃除でもしてあげようかと思ったが、部屋には埃ひとつも無く、フローリングはピカピカでテーブルの上も同様だった。
リビングへ仕事を求めて行くも、洗濯物も干してあるし、食器は洗い終えて綺麗に仕舞ってある。
そしてテーブルの上にはサランラップをしたご飯茶碗と味噌汁とおかず。
近くにあったメモには
「レンジで温めて食べてね。」
と一言添えてあった。
仕方なくアーサーはペタペタと耀の自室に戻りベッドに入り直した。
昼飯まで残りの怪我を治してしまおう。
アーサーは再び眼を瞑ったのだ。