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夜恋病棟・Ⅱ

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昼飯を食べ終えたアーサーは食器を洗うべくスポンジを濡らして洗剤を垂らした。
アーサーの傷はすっかり良くなり、もう元気に動け回れるほどだった。
さっと泡がたくさん乗ったスポンジで食器の汚れを取り、出してある水道の水で汚れごと泡を洗い流す。
綺麗に洗った食器は布で拭き取り、棚へ仕舞ってしまう。
さてと、とアーサーは伸びをして呟いた。
これから耀が帰ってくるまでやる事がないのだ。
傷は治ってしまったし、散歩でも行ってくるかと考えて止めておく。
そういえばここの鍵を持っていなかった。
ここはマンションの五階の部屋だった。
ベランダで煙草をふかしながら――洗濯物に匂いがつかないようにちゃんと取り込んだ――時に数えた。
見た目から普通の学生だと思っていたが本当に普通の学生だった。
今頃耀は笑っているだろうか。
青い空に視線を向けながらそんな事をぼそりと思った。
俺が願うのは耀の幸せ。
彼の為ならなんでもしよう。
いつしか自分の補修合格より人間の幸福を願う気持ちが、アーサーの中で大きくなっていった。



次にアーサーが目を覚ましたのは耀がただいまと呟きながら玄関の扉を閉めた時だった。
いつの間にかベッドの上で再び眠りについていた自分に苛立ちを感じた。
買い物をしてきたのだろう、大きく破れそうなビニール袋を両手に握りしめてきた耀は食卓用のテーブルにそれをどかりと置くと伸びをした。

「昼の食器、仕舞ってくれたあるか?」

むくりとベッドから起き上がり頭をかきながら耀を見ると驚いた顔でこちらを見た。
あぁ、と間抜けな声を出す。

「置いておいてよかったあるよ?」
「それぐらいやるさ。」

無愛想に呟くと耀はまた朝に見せたあの笑顔でありがとうと言った。
その笑顔に胸が跳ねた理由がわからなかった。
今すぐ夕飯作るあるから、と耀はかけてあった無地の黄色いエプロンを掴むと台所へと向かい、水道から勢いよく水を出した。
俺が作る、と言いたかったがアーサーの料理では到底耀を幸せには出来ないだろう。
天界でのフランシスに散々にされた料理を思い出す。
それに耀が料理をするところはとても楽しそうだった。
アーサーはため息を吐いた。
こんなに完璧な人間をどう幸せにしろと。
とりあえず頭を冷やして考えよう。
アーサーはベランダへ出て一服しようと冷たい外へと踏み出した。


作品名:夜恋病棟・Ⅱ 作家名:菊 光耀