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夜恋病棟・Ⅲ

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「探しましたよ、耀さん。」
「…っ!!」

通学途中の電車の中だ。
この時間帯は通勤ラッシュの為、いつも人が入り組んだ電車に乗る事になっている。
耀は既にそれに慣れてしまい、人に触れるのも痴漢にも嫌ではあったが許せる範囲になった。
本日も変わらず隅の方で駅に着くまでのこの圧迫を我慢していた。

その時である。

いきなり後ろから人が異様なまでに近づいたかと思ったら、耳元で先程の言葉をかけられた。
見ず知らずの人物だったら、今頃急所に蹴りの二三発入れていたがその声は耀のよく知った人物であったため、それが敵わずにいた。
しかも、耀の中で一番会いたくない輩だ。

冷や汗が吹き出し、身体が強張るとその人物はリラックスしてくださいと肩に手を置いた。

「もう我に構うなある。」

声を潜めて相手に伝える。
顔は壁に向け、相手を視ずに話をした。

「そうはいきません。残念ながら我々は貴方を手放せるほど余裕がある訳でもないんです。」
「我より優秀な奴なんぞ、そこらに転がってるある。しかも、仕事なんてクズでも出来るある。」
「私が許しません。貴方が好きですから。ここには置いていけません。」
「勝手にしろ…我はお前になんか捕まらない!」

電車のスピードが落ち、駅につく所で彼は耀の後ろから消えた。
肩に置かれていた手がするりと滑り離れていった。
この人混みの中でほぼ一瞬で消えるなどなかなかの強者だと一人感心をしたが、はっとしてあんな奴、と頭から彼を振り払った。
そうだ。
今日の午後はアーサーとのショッピングだ。
今はその楽しみだけを考えよう。
昨日の夜はアーサーに勉強すると言って奥に引っ込んだが実の所あまり勉強が手につかなかったのだ。
二人でどの店を回ろうか、何を買ってあげようかと色々考えてしまい気が付いたらアーサーがベランダで煙草を吹かしていた。
こんなことは久々だと一人笑い、気分転換にでも紅茶を飲もうとティーセットを取り出したのだ。
そういえばアーサーの淹れた紅茶は美味であった。
また淹れてもらおう。
電車の扉がアナウンスの後に開かれる。
一斉に流れ出す人混みに紛れて耀は小さく鼻歌を歌った。

作品名:夜恋病棟・Ⅲ 作家名:菊 光耀