Fate/10 Bravery
森宮町の中心にある梅岡神社。そこには誰も知らない大空洞がある。霊脈を多数有すこの街の中でも、ケタ違いの霊気に満ち溢れているこの場所の中心に、巨大な魔法陣とおもしきモノが貼られている。その更に中心には、虹色が流転する、謎の色彩の濃い魔力ドームが形成され、大空洞に充満する霊気を吸い取っていた。
「キョウジ、聖杯の準備が完了した」
そのドームから出てきた銀髪のメガネの青年が、長髪をかきあげて魔法陣の外側にいる男に無表情に語りかける。初老のスーツを来た男は、緊張気味にそううなずくと、青年を手招きした。
「ヨハン、こっちにきて見てくれ。素晴らしい眺めだぞ。」
言葉とは裏腹に若干上ずったその声に、ヨハンと呼ばれた銀髪の青年は苦笑しながら、スーツの男のもとへと歩み寄る。そして、己が敷設した「大聖杯」を眺める。
「たった40年で、冬木のそれと遜色ないものが出来たと思わんか?」
「そうかしら。確かに魔力量だけで言えば、冬木の大聖杯を上回っている。だけど、その割には魔力が結構漏れているわ。」
まぁ問題無い程度だけど。と辛辣な感想を漏らすのは、スーツの男の隣にまるで控えるように立つ、少女といっても過言ではないくらい若い女であった。如何にも私は魔術師ですと全身で主張しているようなマントとローブ。そして冷たい輝きを放つ宝石を戴く鉄の杖を持ち、雪のような白い髪と、その下の氷のような冷たい瞳でチラと脇の二人を見やる。
それに対し、この結界(だいせいはい)を貼った張本人であるヨハンが、鼻を鳴らす。
「フン。確かに森宮の質はともかく、量ならば冬木も凌駕するようなとてつもない霊脈がなければ、この方法で大聖杯は形作れん。しかし、準備期間をおおよそ40年も短縮した『核』を調達したのは、いったい誰であったかな?あれを探すのに、貴方が生まれる前から私とキョウジは・・・」
「ま、まぁまぁ抑えてくれヨハン。秋理もそう言うな。素晴らしい出来だと思うぞ私は。」
初老のスーツの男、京二が愛想笑いを浮かべながら、青筋を立てるヨハンとツンと澄ましてなお威圧的な視線を送る少女、秋理の間を取り持つ。二人はしばらく火花を散らしていたが、先に秋理が視線を引き剥がし、二人に背を向けた。
「…では私はこれで失礼させてもらうわ。聖杯が整ったなら、英霊(サーヴァント)を召喚する儀式の準備に入らないといけないし。」
「それもそうだ。ヨハン、大聖杯はもうサーヴァントの召喚には耐えうるか?」
京二がヨハンに目配せをすると、ヨハンは口角を釣り上げた。
「勿論だとも。残念ながら量はともかく質があまりよろしくないので、『根源』に到るには8騎ほど必要ではあるが、それでも12騎ぐらいは召喚できる。」
「じ、十二騎?勘弁してくれ、事後処理がめんどくさい」
流石に12騎ものサーヴァントが聖杯戦争をおっぱじめたら、事後処理が大変なことになるであろうと考えた京二の顔が青ざめる。それを見てヨハンがくつくつと笑う。すでに秋理の姿は大空洞から消えていた。
「まぁ、聖杯戦争は7騎で行うと聞いている。貴方が危惧するような事態は起きないさ。では、私はこれで一旦失礼するよ。」
「あぁ。次は・・・敵同士だな。」
背を向けて大空洞から立ち去るヨハンを、流し目で京二は見送った。程なく京二も大空洞から立ち去るだろう。
賽は今、投げられた。
「キョウジ、聖杯の準備が完了した」
そのドームから出てきた銀髪のメガネの青年が、長髪をかきあげて魔法陣の外側にいる男に無表情に語りかける。初老のスーツを来た男は、緊張気味にそううなずくと、青年を手招きした。
「ヨハン、こっちにきて見てくれ。素晴らしい眺めだぞ。」
言葉とは裏腹に若干上ずったその声に、ヨハンと呼ばれた銀髪の青年は苦笑しながら、スーツの男のもとへと歩み寄る。そして、己が敷設した「大聖杯」を眺める。
「たった40年で、冬木のそれと遜色ないものが出来たと思わんか?」
「そうかしら。確かに魔力量だけで言えば、冬木の大聖杯を上回っている。だけど、その割には魔力が結構漏れているわ。」
まぁ問題無い程度だけど。と辛辣な感想を漏らすのは、スーツの男の隣にまるで控えるように立つ、少女といっても過言ではないくらい若い女であった。如何にも私は魔術師ですと全身で主張しているようなマントとローブ。そして冷たい輝きを放つ宝石を戴く鉄の杖を持ち、雪のような白い髪と、その下の氷のような冷たい瞳でチラと脇の二人を見やる。
それに対し、この結界(だいせいはい)を貼った張本人であるヨハンが、鼻を鳴らす。
「フン。確かに森宮の質はともかく、量ならば冬木も凌駕するようなとてつもない霊脈がなければ、この方法で大聖杯は形作れん。しかし、準備期間をおおよそ40年も短縮した『核』を調達したのは、いったい誰であったかな?あれを探すのに、貴方が生まれる前から私とキョウジは・・・」
「ま、まぁまぁ抑えてくれヨハン。秋理もそう言うな。素晴らしい出来だと思うぞ私は。」
初老のスーツの男、京二が愛想笑いを浮かべながら、青筋を立てるヨハンとツンと澄ましてなお威圧的な視線を送る少女、秋理の間を取り持つ。二人はしばらく火花を散らしていたが、先に秋理が視線を引き剥がし、二人に背を向けた。
「…では私はこれで失礼させてもらうわ。聖杯が整ったなら、英霊(サーヴァント)を召喚する儀式の準備に入らないといけないし。」
「それもそうだ。ヨハン、大聖杯はもうサーヴァントの召喚には耐えうるか?」
京二がヨハンに目配せをすると、ヨハンは口角を釣り上げた。
「勿論だとも。残念ながら量はともかく質があまりよろしくないので、『根源』に到るには8騎ほど必要ではあるが、それでも12騎ぐらいは召喚できる。」
「じ、十二騎?勘弁してくれ、事後処理がめんどくさい」
流石に12騎ものサーヴァントが聖杯戦争をおっぱじめたら、事後処理が大変なことになるであろうと考えた京二の顔が青ざめる。それを見てヨハンがくつくつと笑う。すでに秋理の姿は大空洞から消えていた。
「まぁ、聖杯戦争は7騎で行うと聞いている。貴方が危惧するような事態は起きないさ。では、私はこれで一旦失礼するよ。」
「あぁ。次は・・・敵同士だな。」
背を向けて大空洞から立ち去るヨハンを、流し目で京二は見送った。程なく京二も大空洞から立ち去るだろう。
賽は今、投げられた。
作品名:Fate/10 Bravery 作家名:AsllaPiscu