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Fate/10 Bravery

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「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

八塚家の地下にある、ガス灯のオレンジ色の光に照らされた地下工房には、魔術師らしからず火薬の匂いや、たくさんの近代兵器が充満している。


「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

八塚京二が紡いだ呪文は工房の床に敷かれた魔法陣、そしてそこから荒れ狂う魔力の嵐に飲み込まれていく。

右手に刻まれた令呪を魔法陣に向け、詠唱の最後となる言葉を告げる。

「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

魔力の嵐は陣の中心に収束し、一際凄まじい光が京二の目を焼く。あまりの光量に思わず目をつぶる。やがて光すらも収束し、魔法陣の中心に痩身痩躯の男が現れた。

「問おう…アンタが俺のマスターか?」

古き時代からの神秘を力とする英霊において、彼のナチスドイツ時代の軍服姿はあまりに異端であると言えよう。しかし、京二は確信している。目の前にいる男は、確かに英霊となって日は浅いが、神の世より生きる英霊にも引けを取らぬ存在であると。

「ああ。僕がお前のマスター、八塚京二だ。ところで、お前のクラスはライダーで相違ないな?」

京二の問いに、軍服の英霊は怪訝そうに首をかしげた。

「確かに俺のクラスはライダーだが、普通は真名を聞くもんじゃないのか?」

「あぁ、それなんだがなライダー。だいたい見当はついてるんだが…」

チラと京二は工房の隅を見やる。そこには一匹の不機嫌そうな顔を隠しもしない白いチワワのようなものがいた。ようなというのは、当然このチワワは本物のチワワではないからである。

「待たせてすまない、ヨハン・メイゼルフェルド。一体何のようだろう。」

『何のようも何もない。異常事態が発生している』

「おお!?聖杯から与えられた知識で知ってはいたが、魔術とは犬が喋るほどのものなのか!?」

チワワが喋るという異常事態にライダーが目を丸くしている。しかしこんな異常事態にも京二は顔色を変えず、むしろ怪訝そうな顔をしている。

「異常事態?」

『ああ。キョウジ、マスターが10人も現れている。これは一体どういうことだ?』

「あぁ!?!」

京二の顔が青ざめた。

「ちょ、ちょヨハンさん!?それどういうことですか!?」

『それはこちらが聞きたい!ともかく、今すぐ大聖杯のところへ行ってあれを調整してくれ。聖杯の調整は八塚の責任だ』

「りょ、了解した。行くぞ、ライダー。」

ライダーを従え、京二は大聖杯の元へ急ぐ。別にマスターが増えたところで聖杯戦争に支障はそんなにないが、際限なく増えられると森宮がヤバい。そんなことを知ってか知らずか、ライダーの表情は生き生きとしていた。

生前、常識外れなほどに大量の敵を撃破していたライダー。戦える相手が増えるということは、ライダーにとって至福以外のなにものでもないのだ。

「あぁ。マスター…楽しみだよ、これからの戦いがね。」

作品名:Fate/10 Bravery 作家名:AsllaPiscu