Fate/10 Bravely 二巻
夜の森宮を、ブリーフケースを揺らしつつ、今日も天城は歩く。傍らには白いシャツとジーパンを着たアーチャー(あまりにもセンスが悪かったので上だけ買ってやった)が、夜の繁華街の光に目を細めている。
「早速試し打ちしたいのはわかるが、昨日戦闘したばかりでまた出るのはあまり良いとは思えないぞ、アーチャー。」
天城の進言にたいし、新しい服を買ってもらってご機嫌の焦土王がふふんと鼻を鳴らす。
「戯け。それはお前の器量不足ぞ。この余と轡を列べるならば、もう少し精進せい。」
「はぁ、確かに腕が不足しているのは認めるさ。」
天城家は、名門というわけではない。彼がいつも持ち歩いている「光曲晶」をたまたま発掘した祖先が、たまたまちょっとした魔術が使えたというだけの、にわかもいい所な家である。
昨日、あの魔女の少女に勝てたのは、光曲晶の使い方を、世代が継承するたび弁えてきて、それが相手の戦略にピタリとはまった事、そして、天城の体力があったからであり、魔力であれば明らかに相手の方が上であった。純粋な魔力勝負であれば、天城が敗北していたのは明らかだ。
だから、天城は失った魔力を回復させる魔法薬を常に作って持ち歩くようにしている。そして、魔力を使わずに発動できる「切り札」を備えている。
そして、もう一つの「奥の手」も。
物思いにふけるうち、いつしか寂れた町外れまで来ていた。眩しい繁華街の光は遠ざかり、目の前には大瀬川が流れている。
「あら?貴方は…」
視覚外から聞こえた声に、天城は鋭く反応するが、その姿を認めて目を丸くする。昨日図書館であった車椅子の少女がそこにいた。相手の方もまさかの再開に驚いているように見える。
「君は…あの図書館の時の…」
「ん?小僧、知り合いか?」
呆ける天城に、アーチャーが声をかける。コクコクと頷く天城の視線を辿り、車椅子の少女をじっと見る。
そして、右手に刻まれたそれを見た。
「小僧!」
「へっ・・!?!?」
「へぇ、貴方もマスターだったのね。」
アーチャーに引きずられて交代する天城の右手を、車椅子の少女、ロゼッタはしかと見ていた。そういう彼女の右手にも、アーチャーが見たものと同じく、木星を表す令呪が刻まれていた。
「った・・・何だアーチャー!」
「愚か者!ヤツはマスターだ!」
目を白黒させる天城に、アーチャーの一喝が飛ぶ。と同時に、彼の両手にそれぞれ大型火縄銃とSCARが現れる。突然殺気立ったアーチャーに対して、言葉をかけたのはロゼッタだった。
「待ってくださいなそこのサーヴァント。私は今日の所は、貴方たちと戦う気はないわ。」
天城は二度、呆け顔をさらすことになった。
作品名:Fate/10 Bravely 二巻 作家名:AsllaPiscu