ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力-
…ターゲットに接近。
俺は目標まで1ブロックの位置で停止した。
目標の地点は通りの先の広場。
俺は広場の手前の地面に小型発信機〈リコン〉を発射した。
ディスプレーに映るリコンの上に「ENEMY×5」と表示されている。待ち伏せだ。
俺は機体を右手のビルに向かってジャンプさせた。
そのまま三角跳びの要領で壁を蹴り屋上へ登る。
機体が屋上へ着地したのを確認し、〈グライド・ブースト〉を作動させた。
これは通常ブースト移動より高速で移動出来るが、接地した状態でないと安全装置がかかって機能しない。
しかもENを大量に消費する。しかしそれを補って余りある加速力と最高速度が発揮できる。
俺はビルの屋上から飛び出して広場を見下ろした。
戦車4機に防衛型のMT(マッスル・トレーサー)が1機、離陸前のヘリを警護しているのだろう。
俺は機体の加速は緩めずに、敵機の頭上を掠めさせる。
高速で眼前へ迫ってくる輸送ヘリ、俺はさらに機体を急加速させる〈ハイ・ブースト〉も噴かしてヘリに突撃する。
盾が装備された左足を振りかぶらせ、ヘリのコックピットに蹴りをかました。
ガギイィィンッ!
金属の軋むうるさい音を背負って着地。機体は慣性の法則に従って前方へスライドする。
俺は機体にあらかじめプログラムしておいたアクションをさせる。
機体が右後方に重心を落とし、左脚のブースターが細かく作動。
機体を後方へ180回転させ、敵機の背後をロック。
右腕のライフル、肩部のミサイルランチャーのトリガーを引く。
ライフルが戦車を蜂の巣にし、遅れてミサイルがMTに直撃し炸裂した。
ハイ・ブーストでドリフトを相殺し機体を停止させる。
リコンを確認し「全機撃破…」と口にする。
誰に言っているわけでもない、体に染み着いた作業の流れの一つだ。
その時、リコンに「ENEMY×1」と反応が現れた。
敵機は視界には見当たらない。
俺は身を隠す場所を探して機体を後方へ振り向かせた。
ディスプレーにビルの間をこちらへ高速で接近する機影が映る。
ブースターを噴かしながら迫ってくる機影には、腕と脚があった。
「貴様の相手は私だ。雇われ」
通信の相手が正面の敵ACだということは理解できたが、何故敵から通信が送られてくるのか、この時は理解出来なかった。
作品名:ACⅤ-全てを焼き尽くす暴力- 作家名:バズーカ部長