こらぼでほすと 厳命2
ロックオンは、中東ではなくAEUの首都に降りていた。クラウスが、そちらに滞在していたからだ。カタロンとの情報の交換などは、クラウスが直接ではなく、イケダたちとやった。なんせ、クラウス当人が、連邦成立に尽力しているから、忙しくて直接、顔を合わせられなかった。
ようやく、二人して落ち合ったのは、クラウスの定宿と化しているホテルの部屋だ。クラウスの部屋は、ツインを一人で使っているから、それほど窮屈ではない。そこでソファに落ち着いて酒を呑む。どちらもシャワーを浴びてガウン姿だ。まずは近況について口にする。激しいのはクラウスのほうだ。
「次の大統領補佐官の席を宛がわれた。カタロンとしてではなく、直属の部下として動いて欲しいそうだ。」
現在は、一番有力な大統領候補の許で活動しているが、一応、オブザーバーということになっている。アローズの暴走を止めた立て役者ではあるが、テロリストには違いない。だから、マスメディアからの保護の目的と、世界の調整を目的とした活動のため、クラウス個人をカタロンの枠から外したいとの意向らしい。
「それは、いいことなんじゃね? 表向きの肩書きがあったほうが、何かと動きやすいだろう。」
「そういうことだが・・・忙しさは倍増しそうだ。」
「しょうがないだろ? 世界を変革した責任は、あんたにもあるんだからさ。・・・・ということは、俺との接触はマズくなるな。」
テロリスト同士なら、ダークな関係者やグレーゾーンの人間が接触していても話題にもならないが、大統領補佐官ともなれば、そこいらの身辺整理もしておかなければならない。そこいらを考慮すれば、ソレスタルビーイングのロックオン・ストラトスとの接触は、確実にマズイ相手に該当する。
「別に、友人のライル・ディランディと接触するのは問題ないだろ? 」
「俺の経歴を調べられると、ある時から消えてるぜ? それに、俺の名前はロックオン・ストラトス。ライル・ディランディは死んだ。」
カタロンのジーンワンとして活動していた時期は、別にいい。ちゃんとした企業に所属していたし、そこまでの経歴なら真実だ。だが、刹那に勧誘されて天上人の組織に移籍してからは、ほとんどライルとしての存在は地上で確認できなくなる。そんな怪しい人間と接触していたら、クラウスも疑われる。そこが問題点だ。
「ダミーを用意しておくか? 」
「それもどうなんだろうな。・・・・一夜の相手として接触するぐらいが妥当か。」
「おいおい、それ、シーリンに報告が上がったら大問題だぞ? 」
「シーリンには、あんたから説明しておけよ。セフレの正体は判明してるんだしさ。」
今、クラウスにはシーリンという妻ができた。ただし、シーリンは、ジーンワンとクラウスの関係は知っている。だから、セフレとの接触だと説明すれば、波風は立たない、と、ライルは言うのだが、それも微妙だ、と、クラウスは反論する。
「シーリンはいいさ。知ってるからな。だが、その報告は、確実に次期大統領の関係者にも伝わるんだ。そうなると、俺は身持ちの悪い浮気性という判断をされる。」
「別にいいじゃん。事実だし。」
「次期大統領は女性だ。」
「あ、あーーーそれはマズイかも。」
昨今、男性同士のカップルにも寛容だが、セフレが男で妻持ちというのは珍しい。女性は、特に、そういうことに嫌悪感を持つ。これから信頼関係を築いていく相手に、そういう印象は与えないのが得策だ。シーリンは、そういう意味では男前な性格で、クラウスがライルと関係があったことも知っているし、そちらは私では満足させられないから、ということでスルーしている。
「じゃあ、今回で終わろうか。」
「それも寂しい話だ。ライル、お兄さんの経歴って、どうなってるんだ?」
「・・・・俺より酷いぞ? あの人は、アングラ生活が長いからな。」
「でも、今は、『吉祥富貴』の所属だろ? それなら、ライルが、お兄さんのIDで接触してくれれば、理由はできる。」
ほとんど特区から動かないニールなら、そのIDを使って、クラウスと接触しても言い訳はつけられる。
「兄さん、あっちで、どんなIDで動いてるか、俺は知らないぜ? たぶん、まったく違うのだと思う。」
クラウスの提案に、ライルは首を傾げる。ニールは、闇社会で活動していたから、その当時から偽造したIDで動いていたはずだ。そこから、ソレスタルビーイングに入ったわけだから、ニール・ディランディとしてのIDなんてものは、抹消されている可能性が高い。『吉祥富貴』で用意されているIDだとしたら、それを転用できるかも疑問だ。だから、結論としては、「カタロンで用意して貰うほうが安全だな。」 ということになる。
「ライルじゃなくて、ジーンワンのものか? 」
「ああ、それなら所在不明、詳細不明でもいいだろ? カタロンのエージェントってことならな。」
カタロンとの縁は切ってあるが、接触することもあるだろうから、と、そのコードネームは生かしてある。それで動く分には、クラウスと接触する理由も出来る。ただし、やはり正体不明だから、不審人物との接触ということにはなる。そこいらは、カタロンが、どんなIDを用意するかにかかってくる。
「IDの用意はさせておく。それなりのマトモなものにしておくさ。」
「実際は、エッチするためとか? 」
「そうじゃない。きみの無事な姿を確認したいからだ。」
これから、どちらも忙しくなる。滅多に逢えないだろうから、逢える時は逢いたい。地球を恒久的な平和に導くための同志として、だ。真面目な顔でクラウスが怒鳴るので、ロックオンも肩を震わせる。どこまでも真面目な男だ。
「まあ、たまに顔は合わせたいかな。もし、緊急なら、『吉祥富貴』に連絡してくれれば繋がるし、接触するなら、あそこでやれば、どうかな?」
「わかった。そういうことにしよう。」
ライルも、暗号通信で連絡は取り合えるが、なるべく、そちらは使いたくない。万が一にでも、連邦にソレスタルビーイングと接触できる方法だと、バレては困る。それなら、連邦も手出しができない『吉祥富貴』のほうが安全だ。表向きには会員制の高級クラブだから、ホストクラブだとしても、それほど騒がれないだろうし、そこに侵入して情報収集する猛者はいないからだ。その内部でなら、クラウスが誰と接触してもバレることはない。
「どうせ、俺も兄さんとこへ帰るしさ。その時には、先に予定を知らせるよ。」
「ああ、それなら俺も合わせやすい。特区での会議も多いだろう。」
以前なら、故郷に降下していたが、これからは特区に降りるほうが多くなる。あちらには生きた家族は居ない。生きている唯一の家族は、特区に暮らしている。
「クラウス、兄さんは誘うなよ? あの人は亭主持ちなんだからな。」
「きみも亭主持ちじゃなかったか? ライル。」
「俺はいいんだよ。あんたはダーリン公認のセフレだ。兄さんはダメ。・・・お義兄さんとラブラブなんだから。」
ロックオンが、ひと夏、観察していた限り、どう見てもラブラブ夫夫だった。新婚のようなベタベタしたものではないのだが、どう見ても、いちゃこらしている。当人たちが、肉体関係はないと全否定していても、それ以上に精神的に結びついている。
ようやく、二人して落ち合ったのは、クラウスの定宿と化しているホテルの部屋だ。クラウスの部屋は、ツインを一人で使っているから、それほど窮屈ではない。そこでソファに落ち着いて酒を呑む。どちらもシャワーを浴びてガウン姿だ。まずは近況について口にする。激しいのはクラウスのほうだ。
「次の大統領補佐官の席を宛がわれた。カタロンとしてではなく、直属の部下として動いて欲しいそうだ。」
現在は、一番有力な大統領候補の許で活動しているが、一応、オブザーバーということになっている。アローズの暴走を止めた立て役者ではあるが、テロリストには違いない。だから、マスメディアからの保護の目的と、世界の調整を目的とした活動のため、クラウス個人をカタロンの枠から外したいとの意向らしい。
「それは、いいことなんじゃね? 表向きの肩書きがあったほうが、何かと動きやすいだろう。」
「そういうことだが・・・忙しさは倍増しそうだ。」
「しょうがないだろ? 世界を変革した責任は、あんたにもあるんだからさ。・・・・ということは、俺との接触はマズくなるな。」
テロリスト同士なら、ダークな関係者やグレーゾーンの人間が接触していても話題にもならないが、大統領補佐官ともなれば、そこいらの身辺整理もしておかなければならない。そこいらを考慮すれば、ソレスタルビーイングのロックオン・ストラトスとの接触は、確実にマズイ相手に該当する。
「別に、友人のライル・ディランディと接触するのは問題ないだろ? 」
「俺の経歴を調べられると、ある時から消えてるぜ? それに、俺の名前はロックオン・ストラトス。ライル・ディランディは死んだ。」
カタロンのジーンワンとして活動していた時期は、別にいい。ちゃんとした企業に所属していたし、そこまでの経歴なら真実だ。だが、刹那に勧誘されて天上人の組織に移籍してからは、ほとんどライルとしての存在は地上で確認できなくなる。そんな怪しい人間と接触していたら、クラウスも疑われる。そこが問題点だ。
「ダミーを用意しておくか? 」
「それもどうなんだろうな。・・・・一夜の相手として接触するぐらいが妥当か。」
「おいおい、それ、シーリンに報告が上がったら大問題だぞ? 」
「シーリンには、あんたから説明しておけよ。セフレの正体は判明してるんだしさ。」
今、クラウスにはシーリンという妻ができた。ただし、シーリンは、ジーンワンとクラウスの関係は知っている。だから、セフレとの接触だと説明すれば、波風は立たない、と、ライルは言うのだが、それも微妙だ、と、クラウスは反論する。
「シーリンはいいさ。知ってるからな。だが、その報告は、確実に次期大統領の関係者にも伝わるんだ。そうなると、俺は身持ちの悪い浮気性という判断をされる。」
「別にいいじゃん。事実だし。」
「次期大統領は女性だ。」
「あ、あーーーそれはマズイかも。」
昨今、男性同士のカップルにも寛容だが、セフレが男で妻持ちというのは珍しい。女性は、特に、そういうことに嫌悪感を持つ。これから信頼関係を築いていく相手に、そういう印象は与えないのが得策だ。シーリンは、そういう意味では男前な性格で、クラウスがライルと関係があったことも知っているし、そちらは私では満足させられないから、ということでスルーしている。
「じゃあ、今回で終わろうか。」
「それも寂しい話だ。ライル、お兄さんの経歴って、どうなってるんだ?」
「・・・・俺より酷いぞ? あの人は、アングラ生活が長いからな。」
「でも、今は、『吉祥富貴』の所属だろ? それなら、ライルが、お兄さんのIDで接触してくれれば、理由はできる。」
ほとんど特区から動かないニールなら、そのIDを使って、クラウスと接触しても言い訳はつけられる。
「兄さん、あっちで、どんなIDで動いてるか、俺は知らないぜ? たぶん、まったく違うのだと思う。」
クラウスの提案に、ライルは首を傾げる。ニールは、闇社会で活動していたから、その当時から偽造したIDで動いていたはずだ。そこから、ソレスタルビーイングに入ったわけだから、ニール・ディランディとしてのIDなんてものは、抹消されている可能性が高い。『吉祥富貴』で用意されているIDだとしたら、それを転用できるかも疑問だ。だから、結論としては、「カタロンで用意して貰うほうが安全だな。」 ということになる。
「ライルじゃなくて、ジーンワンのものか? 」
「ああ、それなら所在不明、詳細不明でもいいだろ? カタロンのエージェントってことならな。」
カタロンとの縁は切ってあるが、接触することもあるだろうから、と、そのコードネームは生かしてある。それで動く分には、クラウスと接触する理由も出来る。ただし、やはり正体不明だから、不審人物との接触ということにはなる。そこいらは、カタロンが、どんなIDを用意するかにかかってくる。
「IDの用意はさせておく。それなりのマトモなものにしておくさ。」
「実際は、エッチするためとか? 」
「そうじゃない。きみの無事な姿を確認したいからだ。」
これから、どちらも忙しくなる。滅多に逢えないだろうから、逢える時は逢いたい。地球を恒久的な平和に導くための同志として、だ。真面目な顔でクラウスが怒鳴るので、ロックオンも肩を震わせる。どこまでも真面目な男だ。
「まあ、たまに顔は合わせたいかな。もし、緊急なら、『吉祥富貴』に連絡してくれれば繋がるし、接触するなら、あそこでやれば、どうかな?」
「わかった。そういうことにしよう。」
ライルも、暗号通信で連絡は取り合えるが、なるべく、そちらは使いたくない。万が一にでも、連邦にソレスタルビーイングと接触できる方法だと、バレては困る。それなら、連邦も手出しができない『吉祥富貴』のほうが安全だ。表向きには会員制の高級クラブだから、ホストクラブだとしても、それほど騒がれないだろうし、そこに侵入して情報収集する猛者はいないからだ。その内部でなら、クラウスが誰と接触してもバレることはない。
「どうせ、俺も兄さんとこへ帰るしさ。その時には、先に予定を知らせるよ。」
「ああ、それなら俺も合わせやすい。特区での会議も多いだろう。」
以前なら、故郷に降下していたが、これからは特区に降りるほうが多くなる。あちらには生きた家族は居ない。生きている唯一の家族は、特区に暮らしている。
「クラウス、兄さんは誘うなよ? あの人は亭主持ちなんだからな。」
「きみも亭主持ちじゃなかったか? ライル。」
「俺はいいんだよ。あんたはダーリン公認のセフレだ。兄さんはダメ。・・・お義兄さんとラブラブなんだから。」
ロックオンが、ひと夏、観察していた限り、どう見てもラブラブ夫夫だった。新婚のようなベタベタしたものではないのだが、どう見ても、いちゃこらしている。当人たちが、肉体関係はないと全否定していても、それ以上に精神的に結びついている。
作品名:こらぼでほすと 厳命2 作家名:篠義