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零崎空識の人間パーティー 19-22話

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<第十九話 報告>

「それで、すかたんどうだった?」
「俺につけられた謎のあだ名については全力でスルーさせていただくんですがー。 まあ、少し予想外のことがあっただけですねー」
 そう言って空識は蓬生四冬との闘いなどを詳しく誇るように話した。
 今、空識は萩原子荻と話した喫茶店とは別の喫茶店で哀川潤に今回の仕事の報告をしていた。
「――そういった感じで変体刀を奪ってきましたー」
 一通り空識の話を聞いた哀川潤は、考え込むような顔をし呟いた。
「そうか……。別に変体刀集めをしている奴がいるのか」
 その言葉に嫌な予感がして、空識の身体はこわばり嫌な汗が流れた。
(やばい! この感じだと厄介なことになる!!)
 と直感的に思った空識は迅速にこの場から退却しようとした。
「報告もして変体刀も無事に渡せたわけですしー。 俺はこれでー」
 そう言って椅子から立ち上がろうとした空識だったが。
「ちょっとまてや」
 哀川潤の華麗な足払いにより再び椅子につくことになってしまった。
「実はすかたんに頼みたいことができたんだよな~」
 哀川潤は妖艶というか不気味というか邪悪な笑みをうかべた。
「俺のあだ名は、その外れキャラみたいなあだ名で決定なんですねー……。まあいいですー。それで頼みたいことってのはなんですかー?」
 とうの昔に哀川潤に逆らうことをあきらめた空識は仕方がなくそう聞いた。
「まあ、今回やったことを何回か繰り返してもらうだけだよ」
「………ということはー。ということですねー……」
 空識は肩を大仰に落とし俯いた。
 そして、哀川潤はいつもどうりのシニカルな笑顔を浮かべて言った
「そう、変体刀集めを続けてもらう」
 そう言われて空識は、
「いやですー!!」
 はっきりと拒否した。
「断るな!」
 哀川潤のチョップが顔を挙げた空識の額に炸裂した。
「だってなんでそんな命がけのことを何回もしないといけないんですかー! いやですよー! というかー。変体刀の所在がわかっているんですかー? たしか変体刀の所在確認は難しいとか言っていませんでしたかー?」
 チョップされた額をさすりながら空識は反論する。
「ああ、それは大丈夫だ。つい最近『銀河系の中において知らないことはない』とかいう奴と知り合いになったからさー」
「ああ、そうですかー……」
 やばい人が潤さんの知り合いになってしまった……。
 と空識は深くため息をついた。
「それで、この仕事やってくれるな。もし断るなら……」
「もういいですよー……。やりますよ、やらせていただきますよー」
 その返事を聞いた哀川潤は満足そうに、
「そうか」
 と言い、机に五千円札と分厚い封筒と薄い封筒を置き立ちあがった。
「今回の仕事の報酬と変体刀の所在が書いてある紙だ。そんじゃよろしく」
 それだけ言うと哀川潤は颯爽と立ち去った。
「五千円はここの会計ということかー。 かっけえーな本当にー」
 そう言って空識は薄い封筒を手に取り中身の紙を読み始めた。


<第二十話 訪問(砲門)> 

 空識は昇っていた。
 急こう配な階段を昇っていた。
 もうかなりの段数を昇ってきたはずだが、上を見ても終わりが見えない、永遠に続くのではないかと錯覚さえしてしまいそうだった。
「なんで、こんなところに道場なんか造ったんだよー」
 身体的に疲れはないようだが、精神的には疲れたようで、心底うんざりするように空識は溜息をつき。 
 哀川潤から渡された紙を見た。
「けど、こんな変なところにある久遠(きゅうえん)流とかいう剣術道場に変体刀の一本、飛刀(ひとう)・鑓(やり)があるんだよなー」
 道場相手だからそこまで危ないことにならないだろうと軽い気持ちで決めたのが、この階段のせいで空識は既に後悔していた。
(ああー、この階段でグリコとかやったら、すごい長丁場な長期戦になるだろうなー)
 などと、下らないことを思いながら昇り続けていると、しばらくして、ついに永遠に続くのではないかと思われた階段の終わりである道場の門が見えてきた。
「よーしー! ラストスパートだ!!」
 空識は喜び急いで身体を低くして地走りで階段を駆け昇った。
「よっしゃー! やっと着いたー!!」
 道場の門を抜け、喜びの雄たけびを上げている空識の両脇から、突如、二人の男が飛び出してき、そのまま手に持った木刀で切り掛ってきた。
 刀流れ(かたながれ)
 そんな、奇襲に動揺することなく、空識は素手で右からの攻撃を左へ捌き流し、左からの攻撃を右に捌き流し、そのせいで前のめりになり、がら空きになった二人の首元に流れるような動きで手刀を下した。
「グッ!」
 そんな短いうめき声をもらし、二人はそのまま重力に逆らうことなく倒れた。
「たく、行き成り襲ってくんなよー。 ビックリしたじゃねかー」
 そう言って少し怒っている空識の目の前に、
「おみごとです」
 賛辞の拍手をしながら久遠道場師範久遠尚志(きゅうえんひさし)が現われた。

<第二十一話 電子世界(インターネット)>

「いやはや、すみませんでしたね」
 久遠道場は和式のなかなか大きい家のようなもので、空識は尚志に導かれ座敷の部屋に来ていた。
 尚志はそのまま正座をし、空識も尚志の正面で正座をした。
「あれは相手の力量を計る意味と門下生の試験という二つの意味がありましてね、驚かせてすみませんでした」
「別にそれについてはいいですよー。しかし山奥にある道場にしては門下生が多いですねー」
 尚志の謝罪を軽く流し、空識はまず、そう言った。
 門のところで襲ってきた二人を含め、この部屋まで来るのに八人の門下生らしき人を見かけたのである。 
 こんな山奥にそんなに門下生がいるのはおかしいと思ったのだ。
「ああ、それはですね、」
 尚志はそこで言葉を切った。
 直後静寂が二人を包みこんだ。 音が少ない山奥なため二人の息遣いの音さえもハッキリと聞こえる。
「ゴクッ……」
 空識の唾を飲む音が響き、それが合図となり、尚志はゆっくりとその言葉を紡いだ。
「インターネットで募集したら思ったよりきましたので」
「ネットかよー!?」
(ホント便利だなーネット!? っていうか何で引っ張った!?)
「それで、ここに何の用ですかゼロスカイさん?」
「この流れで話しを戻すんですかー……」
 呆れるように溜息をつきながらも、空識は本題を切り出した。
「ここに伝わっている四季崎記紀が作りだした変体刀の一本、飛刀・鑓を譲っていただきたいのですー」
「飛刀・鑓ですか……」
 さっきまでのふざけた雰囲気が消え、尚志は額にしわを寄せた。
「もちろん、タダで、とは言いませんー」
 そして空識は分厚い封筒を畳の上に置いた。
「中に三百万円入っていますー。もちろん汚い金ではありませんー」
(たぶん)
「…………………」
 尚志はその封筒を思案するような顔で見て。 ゆっくりと言った。
「……すみませんが飛刀・鑓をお金で譲ることはできません」
「……力づくしかありませんかー」
 空識の殺気が鋭くなり襲いかかってきた。
 しかし尚志はひるまず、焦ってあたふたすように手を横にふった。