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零崎空識の人間パーティー 19-22話

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「そうではなく、力づくではなく。力づくであることは間違いないんですが、しっかり飛刀・鑓を譲る条件があるんですよ」
「譲る条件ー……?」
 肩すかしを受けたように、空識は不思議そうに首をかしげた。
「まあ、ただ単純に、飛刀・鑓は久遠道場の道場主より強い者にしか譲渡してはならない。 つまりは飛刀・鑓が欲しければ、私に勝てばいいんですよ、ゼロスカイさん」

 
<第二十二話 飛刀・鑓>

 そして二人は板張りの試合部屋で向かい合い。 立会人として門下生の一人がいた。 
「では改めて確認させていただきます。まあ確認するほどのことでもありませんが、あなたゼロスカイさんが勝ったら、この飛刀・鑓をお譲りしましょう」
「OKですー」
 尚志の確認に対して気楽に答え。
「それと、文字道理の真剣勝負なので殺されても文句なしということで。もちろんこちらも文句なしですから」
 との言葉に対しても、
「OKですー」
 と空識は気楽に承諾した。
 命の取り合いに興味などないように。
「意外とこういったのに慣れているようですね。まあ、前口上や御託はこれぐらいにしましょう」
 そう言って尚志は刀を中段に構え、空識も応えるようにサーベル(新しいの)を構えた。
 尚志の刀は一見するとただの刀にしか見えないが、変体刀の一本、飛刀・鑓であるらしい。
(鑓と銘打っているから、鑓の形状をしていると思っていたのだけど、なんの変哲もない刀に見えるな……)
 と空識は飛刀・鑓を注意深く観察したが、どういった仕組みがあるのかないのか分からなかった。
「では、始めましょう」
 そう言って、尚志が合図すると立会人が手を挙げた。
「ではこれより飛刀・鑓、継承試験をおこないます」
 その言葉で一気に張り詰める空気、その中立会人は戦いの火ぶたを落とした。
「いざ尋常に、始め!」
 飛刀・鑓の正体、それに久遠流がどういった剣術か分からないので、一旦空識は待ちの体勢をとった。
「では私から行かせてもらいましょう」
 最初に尚志は間合いを詰めながら飛刀・鑓を振り下ろしてきた。
(なんの変哲もない振り下ろし? よめないな)
 そう思いながらその一撃を普通に防ぎ、弾いた。
「むっ」
 弾かれことで後ろに後ずさりしてところに、空識は詰め寄った。
「いっくよー。一刀・一文字切り」
 横に振りぬかれるサーベル、それを尚志は見事な足さばきで後ろに下がって避けた。
(足さばきにも目立った点はなし…というか剣道の教本どうりの動きだな……)
 そう考えながらも空識は返しの刃でもう一撃放った。
「もう一回ー! 一刀・二度書き」
 それも後ろに下がることで避けられてしまった。
 二人の距離が開いた。
 そこで空識は息をつき、すこしイラつくように言った。
「はぁー……まあなんというかー。 肩すかしをくらっている気分なわけー、こっちはー」
「それはどうしてですか?」
 どうしてイラついているのか分からないといった尚志の態度に、さらに空識はイラついた。
「分かるだろー! 手を抜かれて実力は計られてー、気持ちいいわけがないじゃんー! わざわざ剣道みたいな戦いしやがってー!」
 突然の空識の言葉に面喰ったようにキョトーンとした尚志だったが、
「……あちゃー。一回切り結んだだけでそこまでばれてしまいますか」
 尚志はいたずらがばれた子どものような困ったような笑顔を浮かべた。
「そうです、久遠流はこんな剣術ではありません」
 そう言って尚志は飛刀・鑓を持ち変え、ゆっくりと構えを変えた。
 尚志は右手右足を引き飛刀・鑓に左手を添える構えをした。
「まさか、その構えはー……」
 空識が驚愕に目を見開きながら言う。
「牙突ー……!」
「違います」
 しかしきっぱりと否定されてしまった。
「これは久遠流本来の構え『頭竜(とうりゅう)』です」
 尚志は静かに構えの名を告げた。
「いやねぇー。 久遠流本来の構えとか自信満々に言われてもー、その構えから次どう来るか予想できるしー、底が見えますよー」
「それもそうですけど、そんなの」
 そんな空識の馬鹿にするような言葉に、尚志は逆に微笑を見せた。
「――ただ、予想を超えればいいだけですよ」
 気付いた時、尚志は間合いを詰めていて、鑓の切っ先が鼻先にあった。
「うをぉー!!」 
 それを空識は寸前のところで顔をそらしてかわした。
(なにが牙突じゃねーンだよ。そのまんまじゃねーか)
 空識はそのまま相手の懐に入って反撃しようとしたが。
 かわした次の瞬間には鑓はもとの位置に戻っていた。
「さすがに避けられますか、ではどんどん行きましょう」
『久遠流・濁竜(だくりゅう)』
 そこから連続で放たれる突き。 
 まさに濁流のごときといった突きの応酬を、空識は全てかわしたり捌いたり防御したりして対応した。
 突き自体のスピードもさることながら、最も恐ろしいのがその戻りの早さ。 空識が対応したと思った次の瞬間にはもう次の攻撃が来ている。
(反撃する隙がねー!)
 怒濤の攻撃で空識が押されていると背中に何かがぶつかった。
「やばっー!!」
 気がつくと空識は部屋の壁まで追い込まれていたのだ。
「はっ!!」
 そこに尚志の突きが襲いかかる。
「とおっ」
 空識はそれを飛んで避け、さらに空中で壁を蹴って尚志を飛び越えた。
 受け身をとって体勢を立て直そうしている空識に尚志の追撃がきた。
 横に転がるように避け、そこから足払いするようにサーベルを振った。
『一刀・一文字切り払い』
 だがそこに尚志の足はなかった。
「なっー!」
 尚志はそれを跳んで避け、下にいる空識に反撃する。
『久遠流・降竜(こうりゅう)』
 下に向かって放たれる突き、それを空識はサーベルで後ろに流し捌く。
『刀流(かたながし)し』
 そのまま懐に入って攻撃しようとしたが尚志は鑓に力を入れて、捌いてきたサーベルを踏み台にして後ろに跳んだ。
「……見事ですねー」
 空識は無理に追撃せず、ゆっくりと立ち上がりサーベルを下段に構えなおし。
「それはお互い様ですよ」
 尚志も右手右足を引き鑓に左手を添える構えを整えた。
「ですけど次で終わらさしてもらいます」
 そう言って尚志はさらに鑓を後ろに引いた。
「こちらこそですよー」
 空識もそれに応えるように身体を低くしてすぐにでも『地抜き』ができるような体勢をとった。
 二人はそのまま停止したように止まり、静寂の時が流れた。
 呼吸の音さえ大きく響くその静寂を打ち破ったのは、空識の床を蹴る音だった。
 破裂音とも聞き間違いをいそうな音の後、空識は尚志に向かって一気に加速した。
 それに対して、まだ間合いに入っていないのに尚志は捻りを加えた全力の突きを放った。
「『飛刀・鑓限定奥義、鑓杉(やりすぎ)』」
 明らかに空識に届かないはずの突きなのに、なぜか切っ先はそのまま空識に向かっていった。
 なんと鑓の刀身部分のみが高速で空識に向かっていたのだ。
「のぉ!!」
 尚志の手には柄と鍔のみ残っていた。
 飛刀・鑓。
 その名のとうり、飛ぶ刀。
 鍔のところに仕込まれたばねにより刀身が高速で飛び。
 そして飛ぶ一瞬のみ、鑓の間合いを超える。