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こらぼでほすと 厳命4

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「今回は、ひとりなんだ。・・・・きみも気付いてないんだろうから、こうやって、じじいがお節介をするんだけどね。ニールは、本当に外面のいい寂しがり屋なんだ。でも、普段は、そんなことは見せないから。こういう時に、甘やかしてやって欲しいんだ。きみなら、双子だから、何も取り繕うこともないだろ?」
 よくわからなくて曖昧に頷いたら、「頼んだよ。」 と、トダカはさっさと踵を返した。
 そういえば、刹那も、「あいつは寂しがり屋だから。」 と、実兄のことを表現している。あれだけ人に囲まれていて、寂しいも何もないだろう、と、ライルはスタッフに案内を受ける。『吉祥富貴』の面々は、実兄に対して過保護すぎるんじゃないか? と、思いつつ、地下に案内された。そちらでは、ドクターが待っていた。現状の説明を受けると、病室に案内される。基本的に、再始動の話や組織の現況についてはNGだ。まあ、そりゃそうだろう。教えても、何の益もない。刹那やティエリアたちも、組織には二度と関わらせないと決めている。だから、適当な世間話でもして顔を見ればいい、と、扉が開く瞬間まで気楽に考えていた。




 トダカがリジェネを拉致して消えてから、ニールのほうは、しばらく茫然としていた。壁面の景色を眺めるフリで、懸命にライルが来てからのことをシュミレートしてみる。とりあえず、挨拶して、元気だと示して、次は、どこへ移動するつもりかを聞いて、それで、「いってらっしゃい。」 というのが当初の予定だったのだが、それでは足りない。トダカは数日は、ライルに相手をして貰え、と、命じたからだ。とはいうものの、何を話せばいいのかわからない。組織のことは聞けないし、家族のことなんて話しても、今更だ、と、ライルは言うだろう。他に、どんなことを話せばいいのか、と、考えるのだが、一向に思い浮かばない。あの時の話もしたくない。でも、カタロンに入った経緯は尋ねてみたいと思う。どんなタイミングなら重苦しくなく切り出せるだろうか、と、考えていたら、トンッッと肩を叩かれた。
「よおう、兄さん。久しぶり。」
 気楽な挨拶が聞こえて、横を向いたら、今の今まで考えていた相手が立っていた。他には、誰も居ない。
「あれ? 」
「何、ボケてるんだよ? 俺が来ることは連絡したはずだぜ? 」
「・・あ・・ああ・・・聞いてた。ごめん、ちょっと考え事してた。・・・おかえり、ライル。」
 いろいろと考えていたのに、いきなり現れたので、ニールも驚く。いつものように微笑んだが、ライルは複雑な顔をした。
「なに? 」
「・・え・・・いや・・・あんた、大丈夫か? すごい怖い顔してたぞ? 」
 扉を開いて、起こしたベッドに座っているニールを確認して歩き出した。近寄れば、いつも通りに挨拶してくれるものと思っていたら、まったく気付かない。それどころか、物凄く真剣な顔をして壁面の景色を眺めている。なんだろうと、肩を叩いたら、飛び上がらんばかりに驚いた実兄と視線が重なった。その表情は、ライルを確認して泣きそうな顔になって、すぐに、いつもの穏やかな顔に変化した。

・・・今の何? ・・・・

 ライルは、生まれてこの方、ニールと生活していた時でさえ、そんな表情をするのは見たことがない。ほぼ、いつも穏やかで、たまに兄弟喧嘩する時ぐらいしか荒げた表情なんて拝んだことがなかったからだ。なんせ、この実兄、あのテロの後、両親と妹の墓の前ですら泣かなかったのだ。ライルは、わんわん泣いたが、それを抱き締めてくれた。その実兄が、不安そうな泣きそうな顔をしているのは、ライルのほうがびっくりだ。
「いきなり、ダウンして再生槽に叩き込まれたから、寺のこととか投げっぱなしなんだ。それで、どうしようか考えてただけ。・・・・もう、元気だから心配しなくてもいいよ。刹那たちにも、そう伝えてくれ。」
 そして、一瞬で、いつものトボケた顔になって笑っている。これが、いつものニールの顔だ。
「キラから連絡は貰ったよ。それほど、俺のダーリンも心配してない。」
「・・そうか・・・それならいいんだ。」
「もうちょっとで、ダブルオーの調整も終わる。そしたら、その厄介な身体も治療できるんだから、しばらくは大人しくしててくれよな? 」
「大人しくっていうか、本宅で軟禁らしい。」
「まあ、そのほうが無難だろう。」
「俺は大丈夫だから、おまえはリフレッシュ休暇を堪能すればいいぜ? どこに移動するつもりなんだ? 飛行機の手配とかしてもらえよ。」
「二、三日は、あんたと過ごすさ。」
「え? 」
「だって、見舞いだけして日帰りなんかしたら、俺のダーリンは怒るだろうし。」
「そんなことはないだろう。ここに居ても退屈するだろ? 」
 なんで、来て、いきなり追い出しにかかるんだよ? と、ライルは憮然とした表情になる。血の繋がった実弟には、用がないと言わんばかりの態度だ。そう言われると逆らいたくなるのが、ライルの性格だ。
「退屈しないように、俺と遊んでくれ。」
「無理言うな。俺は病室からも出してもらえないんだ。」
「カードゲームやボードゲームの相手でもしてくれればいいんじゃないか? 兄さんが。」
「はあ? 」
「とりあえず、残りの五日間は居座る。俺が退屈しないように接待しろ。」
「無理なことを・・・・俺、一日の半分以上は寝てるぞ? 」
「俺も、グータラする。」
「・・・ライル・・・・」
「タバコを吸う時だけ外へ出る。あんたの前では吸うな、って医者に注意されたからさ。」
「そうじゃなくて・・・おまえだって、羽を伸ばせばいいんじゃねぇーか? 組織では忙しくしてんだろ? 」
「だから、グータラするんだよ。もう、決めたからな。とりあえず、一服してくる。」
 何を言われても聞く耳は持たない。相手をしてくれ、と、言われたのだから、そうすることにした。甘えさせてやってくれ、とも言われたが、それはよくわからないので、スルーの方向で部屋を出た。実兄が甘えることなんて有り得ない。一緒に生きてきた時間に甘えられたことなんてなかった。適当に我侭を言うぐらいなら、病人だから聞いてやろうぐらいのことを考えていた。
 ただ、気になったのは、あの表情だ。なんで、俺の顔を見て、あんな顔をしたんだろう、と、考える。
作品名:こらぼでほすと 厳命4 作家名:篠義