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恋遠からじ

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 そう話すハルヒコを見るキョン子は、わかったようなわからないような表情で、きょとんとしていた。そして少し考えこんで、それなら、と話しだす。
「それなら、ハルヒコもそうなるのか?」
「そうなるって?」
「ハルヒコも、遠くへ行くのか?」
 キョン子の声は少しかすれて、消え入りかけた。言ったのち身震いするような思いがしたが、それがハルヒコが自分を置いて遠くへ行ってしまう可能性のためだとは思わなかった。キョン子は自分の感情に気付きにくく、それゆえ恋愛にも疎いのだった。
「今のとこその予定はないな。けどまぁ、成り行きでそうなる可能性が、ないわけではない。中学のころには俺が本気で誰かを好きになって恋愛するなんて考えもしなかったがな。むしろ逆に聞くが、お前はどうなんだ?」
「へっ」
「お前は誰かを置いて、遠くへ行かないのか?」
「わ、私は……」
 ハルヒコは言ったあとにキョン子には難しいお題だったなと思った。案の定キョン子はむっつりと黙ってしまい、かと思ったら顔を真っ赤にさせてブルブルと頭を振ったり、まだ見ぬ未来を想像しては勝手に恥ずかしがっているようだった。
「……その様子だと、なさそうだなぁ。」
「わ、わかんないだろ未来のことなんて。あぁもう、何言わせてんだよ。」
 私は恋愛とかそういうの苦手なんだよ、とキョン子は言う。運動といい恋愛といいこいつは苦手なものが多いな、とハルヒコは何とはなしに考えた。
「そんなに遠い未来じゃないかもしれないだろ。……まぁ、でもそれを聞いて安心した。」
 そういってハルヒコは、キョン子の側にコツンともたれかかった。
「おい、何すんだよ。重いだろ。」
「俺だって実は寂しかったんだ。団長が傷ついてるときくらい慰めろ。」
「ははぁん、お前さては長門が取られたみたいで悔しかったんだろ。」
「それはお前も一緒だろ。ていうかこれくらいの焼きもちは団長の義務の内だ。」
「義務ってなんだよ、そんなのあるのか。」
 くすくすと笑うキョン子を見て、もしかしたら本当に長門のことは好きじゃないのかもしれない、とハルヒコは胸をなでおろした。少なくとも今は、目の前にいるキョン子との距離が本物の気がした。
「お前が好きな人出来たらちゃんと教えろよ。」
「……おう。お前もだからな。」
「俺は教えん。」
「な、何だとう……」
 そういって、二人はやっと長門と部長の歩むであろう道を祝福できると思った。キョン子に至っては、宇宙人と人間の恋愛なんて前途多難だなぁ、でもロマンチックだなぁ、とすら考えた。脳天気に友人を応援してやれる余裕というのがキョン子の心に生まれていた。
 陽はやわらぎはじめ、川原がオレンジ色に染まるまであともう少しだった。このときハルヒコは、ある種の勘の良さを持っているがゆえに、でも自分はキョン子の恋路は応援してやれないかもしれないと予感した。それはこの川原が夕焼けに染まっていくようにゆっくりと、でも確実にそうなっていくだろうと。しかしそうなっては彼のプライドが許さないので、気づかなかったふりをして、小川の流れを見つめていた。
作品名:恋遠からじ 作家名:うろ