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雪を継ぐ者と黒い雨 Ver.Sample

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目の前には黒い雨(シュヴァルツェ・レーゲン)。ドイツ製の最新鋭ISであり、操縦者はドイツの代表候補制であり軍人。若くして隊を任されるような実力派、ラウラ・ボーデヴィッヒ。その実力の高さはもちろん、任務にも忠実。表向きは彼女と相対している彼、織斑一夏に対し諸々の事情により嫌悪――否、憎悪を抱いているが、彼女は公私をわきまえている軍人であった。故に、この状況において彼への憎悪を見せずにいる。普段とは様子が違うと彼はすぐに気づけた。となれば、そこが付け入るチャンスなのだろうと一夏は判断した。
 自らの装着した超高性能パワードスーツ、ISは白式(びゃくしき)。倉持技研の開発した最新鋭ワンオフ機。今の彼の武器は右手に握る刀、雪片弐式――かのモンド・グロッソを二連覇した戦乙女(ブリュンヒルデ)であり彼の姉、織斑千冬の使用したものの性能向上型――と左腕部と一体化している散弾型機関銃のみである。
 本来であれば中距離戦闘用の突撃銃(ライフル)や遠距離での牽制用である多弾頭誘導弾(スプレッドミサイル)なども存在したが、完成時期を早めたがために起きた射撃管制装置の不具合により、十分に機能せず、また織斑一夏自身も中遠距離戦闘の訓練の不足から、装備解除せざるを得なくなったのだ。故に、彼の戦闘は近接戦闘および近距離戦闘に絞られた。
 こうなれば、ラウラは中遠距離戦闘で彼を圧倒するのが常識(セオリー)であるが、今回、彼女に命じられたのは織斑一夏及びその専用機の戦闘データを収集する事。データを得るためには圧倒的勝利では意味がない。となれば、彼の唯一できる戦闘手段である近接戦闘及び近距離戦闘に専念する必要があった。勿論、十分にデータを収集すれば彼女は中遠距離戦闘に移行し、一夏に圧倒的な力を見せつけ、あっという間に勝負を決めるつもりでいた。あるいは、彼の戦闘可能なわずかな範囲においても彼を圧倒し、データを収集するまでもない相手という烙印を押すつもりでいた。
 彼女にとって、織斑一夏は認めがたい相手であった。彼女は織斑千冬の個人的ファンであった。ドイツ人である以上、ドイツの代表を応援するのが筋というものであったが、彼女の姉的存在が重度の日本通であった事や、ドイツの代表が第一回のモンド・グロッソでは不甲斐なかった事から、ラウラは織斑千冬を崇拝していた。
 しかしながら、第二回モンド・グロッソでは二連覇こそ果たしたのだが、その際に織斑一夏は護衛がいたにもかかわらず何者かに誘拐されたのだ。当時の日本代表候補生がドイツ軍の協力を得て彼を救出したのだが、この事件をきっかけに、織斑千冬は引退する事となった。表向きに名誉操縦者に任命されたことによる大会出場停止とされたが、実際にはドイツが日本に代価を求め、日本はそれに対して織斑千冬という教官をドイツに出向させるという形をとり、また、以後の大会に出場させない事でドイツがモンド・グロッソに於いて優勝する可能性を高める事であった。
 もしも、織斑一夏がいなければ、織斑千冬は三連覇も可能だったかもしれない。彼女はその結論にたどり着いてしまった。無論、織斑一夏がいなくても出場停止になったかもしれないという事実にはラウラは気づいていた。だが、織斑千冬を崇拝するあまり、その邪魔者であり枷となっている織斑一夏が憎くて仕方なかった。
 故に、ラウラ・ボーデヴィッヒは彼を潰したかった。勿論、そんな事をすれば織斑千冬は黙っていないだろうという事すら彼女は理解していた。しかし、それでも彼女は一夏を認めたくなかったのだ。
 だからこそ――彼女は様々なハンデを背負いつつ、一夏を倒す気でいた。








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 雪を継ぐ者と黒い雨







 試合開始の合図(ブザー)。それが鳴り響くと同時に彼らは動き始めた。
 先制攻撃を仕掛けたのは攻撃手段に富んだ黒い雨(シュヴァルツェ・レーゲン)のラウラ・ボーデヴィッヒであった。大口径レールカノンを牽制のために数発放ち、そのうえで彼に接近する。攻撃しながら接近してくる敵というのは、初心者にとっては恐怖の対象であり、その結果、動きが硬直する事もあり得る。その場合、その後はただの蹂躙となってしまうのだが、彼は硬直せずに右に回避し、そのうえで回り込もうとする。
 ISには死角というものはない。ISに搭載されたハイパーセンサーは全周囲のものを認識する事が可能であり、視界の外であろうと敵を認識できる。後ろに回り込む事で相手の認識範囲から逃げる事はできない。しかしながら、後ろに回り込むという事は有効な手段であった。いくら認識できようとも旋回には時間がかかる。つまり、認識できても対応するまでには時間がかかるのだ。また、操作するのは人間である以上、視界の情報を先に処理してしまうがために、ハイパーセンサーの特性を活かしきれている操縦者というのは、モンド・グロッソの上位入賞者くらいに絞られてくる。となると、やはり後ろに回り込むのは有効手段であり、織斑一夏はそれを実践する。
 しかしながら、彼女はドイツの代表候補生。そんな有効手段は既に承知。後ろに回り込まれぬように一夏を正面にとらえ続け、レールカノンを数発再び放ち、一夏の行動範囲を狭める――が、ここで一気に一夏に迫る。旋回に回していた水力を前進に使い、距離を詰めたのだ。ここからは近接戦闘の時間である。
 だが、織斑一夏はかの戦乙女(ブリュンヒルデ)の弟である。無論、弟だから強いという単純な理由ではない。だが、彼は彼女による指導を受けた身なのである。また、彼女の通っていた道場にも通い、剣道に於いては名の知れた選手にもなった男である。刀剣の扱いは初心者のそれではなく、動きにはキレがある。無論、学生の域から抜け出せていないのであるが、ラウラのそれは近接から遠距離まですべてに対応した万能型なのに対し、剣道によって鍛えられた近接戦闘スキルを持つ彼は特化型。故に、近接戦闘における主導権(イニシアチブ)は彼の手にあった。彼の近接戦闘におけるキレはラウラの動きを一瞬鈍らせる程度にはかの織斑千冬に似通っており、また、それがラウラの逆鱗に触れることとなる。
 一夏は近接戦闘に於いてラウラを圧倒しつつあった。彼女の当初の予測を超える動きのキレは任務を遂行するために手加減をしていたラウラを圧倒し、また本来の動きに移行するのを妨げていたのだ。彼女が最初から本気であったならば、圧倒する事はできなかっただろう。よくて互角、あるいはそこから近距離にまで距離を広げられ、近中距離戦闘となり、不利な状況となってしまっていただろう。しかしながら、ラウラ・ボーデヴィッヒは任務を遂行するために手加減をした。手加減せざるを得なかった。そんな彼女を圧倒するだけの力を彼は持ち合わせ、また、その有利な状況を維持するために彼は努力を重ね、またその作戦を考え抜いたのだ。彼は織斑千冬の弟である。故に、千冬を彷彿とさせる何かを彼が持っているという推測は周囲からすれば自然であった。また、それが当然となりつつあった。