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こらぼでほすと 厳命5

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カードゲームやボードゲームでもして、俺を接待しろ、と、実弟に命じられて、ニールのほうは、また茫然とする。三十路の兄弟がする暇つぶしではないだろう。ここでは何もすることがないので、確かに接待するというなら、そんなことぐらいが関の山だ。寺でなら、好きなものを作ったり散歩に出かけたりと、時間を潰す方法はあるのだが、いかんせん、本宅では無理だ。

・・・甘えろって言われてもなあ・・・・

 トダカは、存分に実弟に甘えてやればいいとおっしゃったが、そんなものは無理だ。両親から、一番上のお兄ちゃんなんだから、と、弟妹の世話を頼まれていた。だから、何事も弟妹たちからさせるようにしていた。今更、何をすればいいのか検討もつかない。
 他に誰かがいれば、話もできるのだろうが、生憎と誰も居ない。過去の話は、ニールにはできない。いろいろと詮索されると、いろんなマズイことが噴出する。刹那なら、会話がなくても気詰まりはしないのだが、ライルとは、どうなんだろうと思っていたら、看護士が漢方薬を運んで来た。それを飲み干してしまえば、看護士も退散する。
「ライルは? 」
「上で喫煙中だ。」
「あの、寺に一時帰宅っていうのは無理ですか? 」
「今のところは経過観察中だから、無理だね。もう少し時間が経って、それでも異常がなければ、ドクターも許可すると思う。」
 まだ、再生槽から出されて、日にちが浅い。二週間程度でも、身体は固まっているので、徐々に慣らしていかなければならない。部屋の中を歩くぐらいは許可が出ているが、それぐらいしか動けないのも事実だ。


 しばらくして、実弟は戻って来たが、これといって話すこともないらしく、どっかりとソファに転がって、テレビを見始めた。相手しなくても大丈夫そうだ、と、ニールもベッドに横になった。それだけで、すうっと眠りに誘われる。
 ライルのほうは、それを、こっそりと眺めていて実兄が寝たのを確認すると、また部屋を出る。さすがに、暇つぶしをするものがない。雑誌とか映画のデータでも借りようと、ドクターのところへ顔を出した。本宅は、ほとんど滞在したことがないから、勝手が判らない。
「何か? 」
「映画のデータとか雑誌ありませんか? 暇つぶしになりそうなもの。」
「ああ、上にライブラリーかあるので、好きなものを持って来てください。案内しましょう。」
 これだけの屋敷ともなると、そんな設備も充実しているらしい。ドクターも、暇だったのか自ら案内を買って出た。二階にあるライブラリーは、常時、新しいものが用意されているので、最新の映画や映像データ、雑誌関係も充実していた。必要なものがあったら、内線で頼めば、用意してくれる、との至れり尽くせりな対応で、とりあえず普段着と故郷のビールを頼んでおくことにした。グータラするなら、ビール片手に映画でも観るのが一番だ。


・・・・で、甘えさせろなんだよな?・・・・・


 くーすか寝ている実兄を横目にして、しばし考える。双子なので、なんとなく伝わるものは昔からあるのだが、寂しがり屋だとしても、何をしてやればいいのか皆目だったりする。あの表情は、寂しいというのを如実に表してはいた。

・・・・俺がやってることを、兄さんにやったら、退かれるだろーなー・・・


 日々、刹那に甘えている自覚のあるライルは、己がダーリンにやっていることを思い返して頬を掻く。ねぇーわーと内心でセルフツッコミだ。なんせ、双子だけで数日過ごすなんてのは、十数年前でも少ないことだったからだ。年の離れた妹がいて、実兄は、そちらの相手もしていた。割と仲のいい家族だったから居間に集まって家族で何かをすることも多かった。ライルが、寄宿舎のある学校へ進学するまでは、概ね、そんな感じだった。まあ、ニールと比較されると、腹を立てていたのだが、家族内では、それもなかった。

・・・そうか・・・俺、寄宿舎生活してたから、あんま兄さんと絡んでないんだよな・・・・


 双子で比べられるなら、離れればライル自身だけを評価してもらえる、と、考えて家を離れた。実際、そちらのほうが兄を意識しなくて自由だった。あのテロが興るまでは・・・楽しかったのだ。
 テロの後で急遽、帰省して見たものは、遺体の損傷が激しくて包帯だらけになった両親と妹の亡骸だった。そして、ぼんやりとしているニールだった。そういえば、あの時は、もっと表情がなかったっけ、と、思い出していたら、荷物が届いた。頼んでいた部屋着だ。スタッフから受け取って着替えると、またソファに戻る。
 ニールは、気丈にも葬儀の段取りをしていた。親戚が、何かと手配してくれたが、それに対応していたのは、ニールのほうだ。ライルは、兎に角、悲しくて悲しくて泣いていた。離れている間に、家族が亡くなったことが堪らなかった。
「たくさん泣いて別れを言え。」
 ニールは、何も出来ないライルを責めたりしなかった。淡々と葬儀の段取りをしていた。

・・・・あれは完全に、俺が甘えてたよな・・・・

 今、考えれば、ニールのほうこそ休ませてやるべきだったと解っている。ニールは、あのテロに巻き込まれて、両親や妹の包帯をしていない姿を目撃したのだ。一瞬前まで生きていたのに、爆風の後で何もかも失った。どれほど怖かっただろう、と、ライルは今更ながらに思う。狂ってもおかしくないぐらいの衝撃だったろうと思うのだ。だが、兄は、冷静だった。葬儀が終わってハイクロスの前に、ふたりで並んだ時も、それをじっと眺めていた。土をかけられて沈められた棺を思って、ライルは泣いたが、兄は違うことを考えていた。たぶん、憎んでいたのだろう。テロという行為を。
 だから、姿を消した。世界中を憎んでいたから、人殺しを生業にしたのだろうと思う。ニールは、何も言わないが、組織に入る前のことは予想できる。大学生の年齢で、ライルに仕送りしていたのだ。ライルは、その当時、家の財産だと思っていたから気付かなかったが、ディランディ家の財産は、そっくりライルのものとして登記されていた事実を知って驚いた。莫大な財産は、ニールに、ほとんど与えられていなかった。姿を消した時に、幾許かは引き出していたが、それだけだ。その後、延々とライルに仕送りされていたのは、ニールが稼いだ金だったのだ。ライルがバイトをしなくても、十分に学費と生活費になるだけの金額となると、相当なもので、普通の仕事では無理だ。一切の連絡もなく、家にもいないニールには、ライルも連絡の取りようがなかった。ただ、あの日のハイクロスに供えられる花束だけが、ニールとの接点だった。
 最後の仕送りの高額さとクルマに、何かあったと気付いた。刹那が現れて、合点はいった。兄は、全部をライルに遺して逝ったのだ。
作品名:こらぼでほすと 厳命5 作家名:篠義