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こらぼでほすと 厳命5

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 兄はスポーツシューティングで優秀な成績を誇っていた。そこから導き出されるのは、そういうものだ。いまだに、ライルにはニールが組織で作った成績を塗り替えられていない。命中率90パーセント超えの成績なんて、尋常な数字ではないのだ。それが物語るのは、ニールの過去だ。過酷な人生だったんだろうな、と、横目に兄を見て息を吐く。そこまでは、ニールと再会してから考えた結果だ。刹那たちから聞き出したり、ハロが遺していた映像データを眺めて、過去のことを考えた。


・・・・あんたさ・・・バカなんだな?・・・・


 いろいろとツッコミどころ満載の兄の過去については、ライルも問い質せないが、まあ、バカだとは思う。何一つ、建設的なことは考えないで、死ぬことばかり考えていたなんて、おかしな人生だと思うのだ。後のことも考えてくれれば・・・と、思い至って、ようやく、結論に辿り着く。


・・・・兄さん、だから、俺との縁も切ってたのか・・・・


 たぶん、後に何も残らないから、後背の憂いを感じなかったのだ。ライルには、できるだけの愛情を一方的に押し付けて、何も受け取らなかったから、死に対する恐怖を感じずに戦っていたのだろう。他のマイスターたちに対しても、だ。刹那やティエリアが、二度と組織に関与させない、と、決めたのも、その所為だろう。そんな戦い方では、次も同じ結果になるからだ。

 なるほどな、と、ライルが納得しても、実兄は眠ったままだ。後で、叱ってやろうと予定して、雑誌に手を出した。今、生きている実兄は、たくさんの泣いて引き止めてくれる相手ができた。ようやく、この人も普通の人生を送り始めたのだろう。マイスターとして引退はしたものの、やはりマイスターたちの心の拠り所にはなっているし、『吉祥富貴』でも居場所を確保している。後に残るものの大切さを、兄の過去を考えるとライルも実感する。それがあるから、生きて帰ろうと思うのだ。自分が大切だと思うものたちを悲しませたくないし泣かせたくないから、そう考える。自分自身も、再び逢って顔を見たいから足掻ける。そういうものが、ニールにはなかった。たぶん、あのテロの時に、その部分が壊れたのだろう。





「これ以上に、健常な細胞を活性化させるものですか? ねぇ、八戒。それなら、いっそのこと、竜丹でも飲ませたほうが早いんじゃないですかね。だいたい、ニールの身体が、その活性化に保ちませんよ。あれでも、ギリギリなんでしょ? 」
「竜丹は、再生槽に入るのと同じです。現状を回復はさせますが、遺伝子段階には作用しません。」
「なら、桃? 」
「それは、三蔵にも話を通す必要があります。そうなると、三蔵にも桃です。」
「別に、それでいいんじゃないですか。」
「正式に籍も入れてないのに、事実婚だけでいいんですか? 天蓬さん。」
「うーん、それは、ちょっと菩薩が渋りそうだなあ。さっさと籍も入れて正式に夫夫になってもらってくださいよ。」
「僕は、そこまでお節介したくありません。」
「遺伝子段階に作用するものっていうのが、僕らには理解しづらい代物なんです。・・・とりあえず、竜丹を毎日、服用させて壊れても再生させるというので、いかがです? 」
「最長三ヶ月になりますが、それだけの量の竜丹を持ち出せるんですか? 」
「はははは・・・・僕の上司は西海竜王殿でしてね。彼にちょいと頼めば、易々です。」
「お願いしても、迷惑になりませんか? 」
「さあ? 律儀な御仁でして、僕らに借りがあると考えていらっしゃるので、迷惑でも断りはしません。」
 どうも、普段の漢方薬の出所も、そこいららしい。やけに、禁持ち出しのものばかり送ってくるな、と、八戒も感心していたのだが、竜族の王なら、それぐらい簡単なのだろう。
「とりあえず、一ヶ月分をお願いいたします。」
「はい、承知いたしました。その代わり、おいしいお酒を送ってくださいね? 上司と菩薩の鼻薬にしますので。」
「はい、それは承知しています。多目に送ります。」
 禁持ち出しの漢方薬を配送するのを見逃させる代償に、特区の一番いい酒を所望するあたり、相手も抜け目はない。それを呑ませてから、話を持ち出せば、確かに断りづらいだろう。




 ニールがダウンして、すぐに八戒は、三蔵の上司の一人に連絡を取った。現状維持できるクスリはないものか、と、尋ねたかったからだ。こちらで手に入るものでは、薬効が薄い。できれば、あちらのものを用意して欲しい、という下心ありだったが、相手も解っているのか、それには二つ返事だった。なんせ、あの傍若無人なマイノリティー驀進坊主の相手ができるニールだ。希少生物すぎるので、上司たちも積極的に用意してくれる。これを逆手にとってしまえば、坊主も桃を食わざるを得ないと、踏まえた上のことだ。
 トダカに頼んで、いつもより多く逸品の酒を用意して送った。それが功を奏したのか、きちんと、あちらの酒と共に、漢方薬が届いた。竜丹とは、万病に効くといわれる漢方薬だ。ただし、竜族だけは、それを服用すると、よくて半死半生、悪くすれば死亡という毒薬になるという変り種のモノだった。人間なら、治療できない病気も怪我もないという有り難いクスリだが、もちろん持ち出し禁止の代物ではある。そんなものがあると、人間が知れば、欲深い愚か者たちが群がってくるからだ。そのための持ち出し禁止であるから、神仙界に入る予定者に使う分には問題ではない、と、いう思いっきり解りやすい屁理屈で、このクスリは、ここにある。
「まあ、間違っちゃいねぇーだろ。三蔵を機嫌良く神仙界に迎えるには、必要なんだろうからさ。」
 その梱包を解きながら、亭主は笑っている。ここで、ニールの命数が費えてしまうと、おそらく坊主も、大人しく神仙界には来ないだろうというのが、誰もが予想していることだからだ。悟空が懇願すれば、神仙界には移り住むだろうが、機嫌良くとはいかない。女房が世話してくれないとなると、面倒だ、と、何もかも放り出して神仙界探検の旅にでも出てしまいそうな予感が、八戒たちもしている。そうなると、もれなくお供にされるのも自分たちだろう。
「僕は、目的もなく流浪するのは勘弁願いたいです。そういうことがしたいなら、ニールとしてくれれば、僕らも助かります。」
「あー、俺も賛成だ。俺らは、人間界でダラダラ生活が希望したいぜ。」
 悟浄と八戒は、神仙界の関係者ではあるが、亭主は半妖怪の雑種、女房は人間から変化した妖怪、という神仙界では、あまり存在していない存在なので、そちらで暮らすよりは人間界のほうが都合がいい。適度に居場所を変えれば、人間として暮らすには不自由はない。わざわざ、また辺境地への旅なんてやりたくもない。あれは、目的があったからできたのであって、遊びでやりたいサバイバルではないのだ。
「これだけのものを、僕のおねだりで下賜してくださるんですから、あちらもニールが必要だという判断なんでしょう。とりあえず、生かしておきましょう。三蔵のためというより、僕らの安穏とした暮らしのために。」
「ちげぇーねぇーな。・・・今、ロックオンが来てるんだろ? あいつが帰ってからでいいよな? トダカさんから不干渉令が出てる。」
作品名:こらぼでほすと 厳命5 作家名:篠義