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図書館戦争 堂x郁 郁記憶喪失(堂上視点)

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「今年の昇任隊員を発表する!」
玄田の声が隊長室に響き渡る

郁は”拷問”に近い詰め込み勉強を振り返りながら
緊張と不安に戸惑いながらも、玄田の発表を聞いていた
そんな郁を堂上は横目で見ながら『大丈夫だ。』と心の中で郁へ呟いた

階級順に発表が続き、緊張が最高潮まで高まる

「笠原郁士長、三正へ昇任!」
「ウソーーーーーーーーーーーーー」
思わず悲鳴を上げるが、横から堂上が郁の頭をはたき
いつもどおおりの光景に他隊員達も爆笑する

郁は慌てて背筋を伸ばし敬礼しながら「拝命します!」と玄田に答えた
堂上はその姿を見ながら『そろそろ次へ進むか』と思いを募らせていた



業務後、堂上に「飯でも食いにいくか?」と言われ、
満円の笑みで「ハイ!」と答え、二人は駅近くにある居酒屋に向かった。

「よかったな、カミツレに届いて」

堂上は今回の昇任で二正から一正にあがった
今回の査定には当麻事件での考課が最大だった
事件解決の中心メンバーとして堂上班全員がそれぞれ昇任をした

「はい。本当に夢みたいです。
 柴崎には”今回を逃せば、二度とカミツレに届くチャンスはないわよ!”
 と言われました・・・・」
恐らく郁は試験勉強前に柴崎に言われた状況を思い出しているのだろう。
肩を落とし、器用な上目使いで堂上を見ていた

堂上はそんな郁を可愛いと思いながらも、グラスを取りビールを一気に飲み干した
郁がポツポツと試験勉強期間の他愛もない話をしていると
堂上が話の流れを変えた

「それはそうと、昇任祝い何が欲しい?」
「でも教官も昇任したじゃないですか!私だけお祝いなんて・・・」
と、郁は恐縮したように答えた

堂上にしてみれば、自分の昇任なんて左程気にしていなかった。
それよりも郁がカミツレに届いたことの方が喜ばしく思っていた。

「俺は今更だから要らん。お前は初めてカミツレに届いたんだからな」
そう言うと、郁は”うー”とか”えー”などと目を泳がせ悩んでいた

堂上は”まぁ〜”と言い、郁の泳いでる目線を自分に向け
「今すぐに答えろとは言わん。今日は色々とあったからな。
 次の公休日までに考えて決めておいて欲しい」

そう言うと、郁の頭をポンポンとし「さあ、門限に間に合わなくなるぞ」と言って
郁の手を取り、店を後にした。



堂上は寮の部屋に入ると、ジャケットをハンガーに掛けてクローゼットにしまい
ベットに横たわった。
見慣れた天井を見上げながら、郁との出会いを振り返っていた。

初めてあったのは郁が女子高生の時
茨城市立図書館に研修へ来ていた際、たまたま寄った近くの本屋で良化隊の検閲にあった
誰もが固唾を飲み、良化隊の検閲を黙って見ているときに
一人の少女が本を大事そうに抱えながら、良化隊に噛みついていた
その後ろ姿は背筋を伸ばし凛としていて、健気だと思った
堂上は心をわし掴みにされた気持ちになり、違反と分かっていながらも見計らい権限を無断で使用した

「反省はしているが、後悔はしていない」
軽く目を閉じ、まるで自分に言い聞かせるように呟いた

しかし、それがきっかけで郁が図書隊員になったのも事実
同僚の小牧には「堂上が気にしなくていいんじゃないの?」とは言われたが、
未だ自分の心の中では、申し訳ない気持ちが残っている

ただの図書館員ならまだしも、防衛員。しかも配属は図書特殊部隊だ。
昨今の警察、自衛隊よりも危険である場所に、彼女を導いてしまったと思っている

一瞬の油断が命取りになる
常に死を覚悟しなければならない状況の中で、彼女は本を守る為に戦っている

「153番。笠原郁です」

面接官だった俺は、顔を見た瞬間に気付いた
あの時の女子高生
もう二度と逢えないと思っていた
5年の歳月が経っているにも関わらず、俺は一度見た彼女の顔を忘れてはいなかった。

彼女は俺の顔を覚えてはいなかったが、どこぞの完璧超人か!と突っ込みを入れたくなるほど
見計らいを行った三正に憧れて、図書隊員になりたいと話していた

「王子様か・・・」
フッと苦笑いをし、閉じていた目を開けベットから起き上がり、冷蔵庫からビール缶を取りだした

錬成期間中は、私情を絡ませ郁を徹底的にしごいた
もう一度考え直せ!まだ今なら間に合うぞ!
まるで自分に言い聞かせるような思いで、辛い訓練メニューを課していた
その後、郁が特殊部隊へ配属になってからは
生き延びる為に!自分を守れるように!と訓練を続けた

郁は皆の足手まといにならないように
自分の武器である瞬発力や持久力を駆使し、今や立派な図書隊員となった
『全国初の女性図書特殊部隊員』という肩書も彼女にはあまり意味はなかったのだろう

郁と出会ってから10年
自分の人生の中でこれほどまでに恋い焦がれ愛おしいと思った女性は居なかった
無論、過去に付き合った女性はいたが、郁を思う程の気持ちはなかった
決していい加減な気持ちで付き合っていた訳ではない
相手を愛していたと思っていた
でも、郁と出会い、恋人となって、今まで付き合っていた女性に対しての気持ちが
偽元だったのだと気が付いた

初めての恋、最後の恋になれば良いと思う
それは俺にとっても、郁にとっても同じように

堂上は頭を軽く左右に振り、思いふけっていた自分に苦笑いをした

「どんだけ好きなんだ・・・俺は・・・」

すでにぬるくなってしまったビールを飲み干した後、堂上は部屋の電気を消した