ドラゴンクエスト・アナザー
第九話 「精霊エルナ」
セーラたちは織物の村ロマーナに来ていた。
ここは各家庭でいろいろな織物を作っている。
そんな中、以前水の羽衣を織っていたドン・モハメという老人の話を聞いた。
しかしドン・モハメは既にどこかへ引っ越した後で、水の羽衣を織ることができる人はもうこの村にはいなかった。
織物以外の情報も聞いて見ると、隣街のルナパークに伝説の兜が保管されているというわさがあるとのこと。
セーラたちはルナパークに向かって出発した。
一行が次の目的地へ向かっている途中花畑があった。
セーラとマリアは喜び、花畑に入って花を摘み始めた。
「なんだってお嬢さんたちは花がお好きなんだろうねえ」
「まあそう言うな。おまえも花が好きなお嬢さんが好きだろう」
「アレフ、そりゃどういう意味だ」
「いや、そのまんまの意味だが」
そのときマリアの悲鳴が聞こえた。
カイとアレフは飛び出していくと、蜂の大群のようなものがセーラとマリアの周りを飛んでいる。
だがよく見ると、蜂と一緒に蝶のようなものが一匹混じっている。
蜂はキラービー、蝶は妖精であった。
「マリア、ラリホーを使え!」
「だってキラービーのスピードが早すぎて!」
カイがボミオスをかけると、キラービーたちの動きが遅くなった。
マリアはラリホーを使いキラービーたちを眠らせた。
マリアたちのところに妖精が飛んできた。
「助けてくれてありがとうございます。わたしは妖精のリサ。花の蜜を集めに来たところ、キラービーに周りを取り囲まれ困っていました。助けていただいたお礼に、魔法のカギのありかをお教えしましょう。そこの木の前に立って、そして東に八歩、南に三歩歩いてみてください」
マリアは言われた通り歩いてみた。
しかし最後の三歩目は落とし穴で、落ちたマリアは泥だらけになってしまった。
「リ~サ~」
マリアが怒っている。
「ごめんなさい。落とし穴はわたしが掘ったのではありませんが、魔法のカギは本物ですよ」
「ええ!?」
マリアは泥の中を探し始めた。
確かにカギらしきものがある。
マリアは魔法のカギを手に入れた。
「なんでこんなところに魔法のカギが?」
「カギを盗られないよう、そこに隠したのはわたしなんです。ただ偶然子供たちがその場所に落とし穴を作ってしまって…… でも勇者様たちにカギを渡せてよかったです。それでは気をつけて旅を続けてくださいね」
リサは手を振ると、どこかへ飛んでいってしまった。
「なんか言いたいことだけ言って去っていったわね」
「ほら、妖精はよくいたずらするとも言うから」
「そういえば、この泥だらけの服どうするのよー」
「地図では近くに池があるようだぞ。そこで洗ったらどうだ」
マリアは池を目指しずんずん歩いていき、ほかの三人は後からついていった。
しばらく辺りを探し回った末、やっと池に着いた。
「セ-ラ、あなたも入りなさいよ。気持ちいいわよ」
「でも私水着持ってない」
「いいわよ何も着なくても」
マリアがカイとアレフに釘をさす。
「ところであんたたちわかっているわよね」
「な、なんのことだい」
「のぞいたら、ザキ、だからね!」
女性陣が池で汗を流している間、カイとアレフは池に背を向けて話をしていた。
「最近マリアの奴、気が強くなったなあ」
「ちょっと前は突然やってきた雛鳥を守ろうと気を張り詰めていた感じだったが、今は雛鳥の方が強そうだからな」
「だからかな。なんかセーラに追いつこう追いつこうとしているみたいだ」
そこにマリアたちが戻ってきた。
「はーい、上がったわよー。あんたたちも水浴びしてきたら?」
「ありがたい! 汗だらけで気持ち悪かったところだぜ。ところでセーラ」
「な-に?」
「のぞいちゃやーよ」
セーラは飲んでいた水を噴き出してしまった。
「カイ!バカなこと言ってないで!」
カイはアレフと一緒に池に飛び込んだ
「カイはいつもああなんだから」
「カイって人に本心を見せるのが恥ずかしいのかな。だからああやってふざけてみせる」
「そうね。あたしもそれはわかっているんだけど、仲間なんだからもう少し自分を見せて欲しいと思うの」
「アレフの方は昔からあんな性格だったの?」
「小さいころはカイ以上に暴れまわっていたわね。そのころから体が大きかったから、子供たちのボスみたいになってた。でもある日突然今みたいな性格に変わったの。一体何があったのかしらねってみんなで言ってた」
カイが後ろから声をかける。
「さてお嬢さん方、上がったけどこれからどうする?」
セーラは突然思い出した。
「あ、あの、カギがかかっていて開かなかった祠に行きたい!」
マーベル王の頼みで理性の種を取りに行ったとき、途中にあった祠に入ってみたのだが、カギが開かなくて奥まで入れなかったのである。
早速一行は祠に行ってみた。
中に入ると扉にカギがかかっている。
マリアが魔法のカギを使うと扉が開いた。
下への狭い階段をいくつも降りる。
やっと広い部屋に出たのであたりを見回していると、部屋に女性が現れ話かけてきた。
「私は時の精霊エルナ。あら? あなた方はまだ天空装備をそろえておりませんね。天空装備を全部そろえて天空神に会ったのち、もう一度ここにおいでなさい」
そう言うと精霊エルナは姿を消した。
「え、なに? 一体どういうこと?」
「わからん。さっぱりわからん」
「もう一回来ると何かくれるんじゃないか」
「何かお話してくれるのかも」
ともかく一行は四つの天空装備をそろえ、天空の神様に会うことにした。
しかし、なぜ天空の神様に会うのか、なぜ精霊エルナに会うのか、という疑問がわき上がる。
それに果たして魔王は本当に現れるのだろうか。
一行は不安を隠しきれなかった。
作品名:ドラゴンクエスト・アナザー 作家名:malta