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ドラゴンクエスト・アナザー

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第十四話 「大きすぎた代償」


「この家に住んでいたゴンじいという人は、わたしのおじいさんなんです。わたしはこの家で生まれました。そしてわたしが少し大きくなったとき、子犬のペスタが家族になりました。わたしは毎日ペスタと遊んでいました。そのころはまだおじいさんやわたしの両親もいて一番幸せなころでした」
一行はレナの話に聞き入っている。

「でもその幸せは長くは続きませんでした。あるとき私の両親が魔物に襲われたのです。わたしにはやさしかったおじいさんも、それからはあまり他の人とは話さなくなりました。そしてわたしは今の叔父さんのところへ引き取られました。その数年後おじいさんは亡くなり、ペスタも死んでしまいました」
セーラはもう泣き始めている。

「宝物の噂があったので、叔父さんはおじいさんの家中を探しましたが、何も出てきませんでした。そして宝物を狙う泥棒たちに家を荒らされ、このような廃屋になってしまいました。それからいつしか夜になると、この家に魔物が出るようになったのです」
「それがペスタだったのね」
「でもこれは一体何のためのカギなんだ?」
「ゴンじいがこれだけを守っていたとは思えんな」
「そういえば、わたしが小さいころおじいさんによく連れて行ってもらった場所があります。そこに何か手掛かりがあるかもしれません。よろしければ明日ご案内します」
「ありがとう。お願いね」

 翌朝、出かける前にふとアレフが思いついた。
「そうだ。最後のカギで開かずの蔵の扉が開かないだろうか」
レナはアレフにカギを渡した。
アレフは蔵を開けようとしたが、残念ながら最後のカギでも開けることはできなかった。
「やはりそううまくはいかないか」
アレフはあきらめた。

 セーラたちはレナの案内で丘にやってきた。
眺めがよいところである。
一行があたりを探すと、祠が見つかった。
中に入って見ると格子扉があり先に進めない。
「今度こそこのカギの出番ですね」
レナが最後のカギを使うと、格子扉が開いた。

 一行は中に入り、さらに階段を降りる。
下の階には宝箱があったので開けてみると、中には鎧が入っていた。
そのとたん、セーラの青い珠が輝き出し、鎧も光り始めた。
「ゴンさんはこれを守っていたのね……」
「セーラさん、その光は?」
「天空装備が近くにあると珠が光り始めるの」
「それじゃあなたが……」

 宝箱の中には手紙が入っていた。
「レナ。おまえがこの手紙を読んでいるということは、ペスタが無事おまえにカギのありかを教えることができたのだろう。おまえにはちゃんと話していなかったが、この鎧はわしの家に代々伝わる勇者様の鎧なのだ。
わしはこれを守っておった。わしからの最後の願いだ。おまえもこの鎧を守り、勇者様が現れた時は、この鎧を差し上げてくれ。くれぐれも頼んだぞ」
手紙を読んだレナはつぶやいた。
「おじいさん…… わかりました」
そしてセーラに話かける。
「天空の鎧は勇者様しか装備できないと聞きます。セーラさん、この鎧を装備してみてください」
セーラはうなずき鎧を装備する。
光り輝く鎧はセーラの体に合うよう変形した。
セーラは天空の鎧を手に入れた!
「これでおじいさんやペスタも浮かばれると思います。その鎧を皆さんの旅に役立ててください」

 セーラたちはレナを送るためハムルへ向かった。
その途中村の方から煙が立ち上るのを見た一行は、いやな予感がして村へ急いだ。
村に着いたセーラたちは愕然とした。
なんと村は全滅していた。

「叔父さん!」
レナが叔父を探すが、あたりには何も残っていない。
そのとき背後から声がした。
「遅かったな。待ちくたびれたので村を焼いておいたぞ」
振り返って見ると大型の魔物がいる。
「俺の名はゴルドラだ。天空の鎧が見つからんのでおまえらを泳がしておいたところ、本当に見つけて来るとはな。手間が省けた礼にこれをやるぞ」

 ゴルドラはいきなり襲いかかってきた。
ゴルドラは焼けつく息を吐いた。
セーラ以外麻痺してしまい、攻撃ができない。
次にゴルドラがラリホーマを唱えると、セーラは眠ってしまい攻撃できるものがいなくなった。
まだゴルドラの攻撃は続く。
ゴルドラはパルプンテを唱えた。
天空から流星が降り注ぎ、敵味方全員のHPが1になってしまった。
ゴルドラはさらにベホマを唱えた。

「フハハハ、これでもう何もできまい。次のギラでおまえたちは全滅だ!」
「もうここまでなの? どうしてこんな卑劣な魔物に勝てないの?」
そのとき、レナが戦闘におどり出た。
「わたし、自分がなぜこの呪文を使えるのかずっと不思議に思っていました。でも今やっとわかりました。みなさんを救うためだったのですね」

 レナは呪文を唱え始めた。
その呪文にカイとマリアが反応する。
「マリア! この呪文は!」
「レナ! やめて! やめてー!!」
「ええ? ど、どうしたんだ!?」
マリアはレナを止めようとしたが、体が麻痺して動けない。
そしてセーラもまだ眠っている。
「誰か! 誰か早くレナを止めて!」
「みなさん、短い間でしたが仲よくしてくれて本当にありがとうございました。みなさんの旅に神の御加護がありますように」
レナは静かに呪文を完成させた。
「メガンテ」
ゴルドラは砕け散った!
レナは力尽きた……

 ゴルドラを倒したので、全員の麻痺と眠りが解けた。
マリアはレナに世界樹の葉を使った。
しかしレナは生き返らなかった……
「マリア! どうにかして助けられないのか!」
「以前おじいさまから、千年に一度咲くという世界樹の花の話を聞いたことがあるわ。それを使えば死んだ人を生き返らせることができるって」
「それはどこにあるんだ!」
マリアは首を振った。
「それじゃあ、今すぐ世界樹の花を探しに行こう!」
「少し落ち着けよアレフ。おまえらしくもない。どこにあるのかさえわからないのに、千年に一度の花だぞ。今年が千年目じゃなかったらどこにもないじゃないか」
アレフはうなだれた。
一行はあきらめるしかなかった。

 セーラはあまりにも悲しすぎる結末に涙を浮かべた。
そしてレナが天国で家族やペスタとみんなで幸せに暮らせるよう願うのであった。