IS バニシングトルーパー α 001
もはや敵も味方もない。圧倒的な強さを持って、所属不明ISはただ破壊と殺戮を繰り返して、爆炎と悲鳴を広げる。
「無線誘導攻撃端末はまだイギリスが開発中じゃなかったのかよ!」
「さあな。とにかく所属不明ISを確認した。これより排除行動に入る。光学迷彩システム解除、全機、起動せよ」
「了解!」
所属不明のISが現れた時点で、遠くにいる観測者たちは傍観を止めた。
年長男の指示と共に一斉に回転し始めたモータが、低い音で共鳴した。何もない暗闇の中から十機以上もの機影が一斉に姿を現す。
長くて鋭いアンテナを二本持つことが特徴で、V字ゴーグル型のセンサーが赤い光を放つ。
部隊の先頭に立つのは、濃い髭を蓄えたリーダー格の四十代男性一人。既に機体を起動した部下たちと違って、彼は跪いた黒い機体の前に立ち、赤い液体の入った注射器を筋肉質な腕に当てた。
「当時時間19:46:32。“イグニッション”、注射開始」
独り言のような呟きと共に、赤い液体が彼の体内に流れ込む。やがてその中身が空になった後、彼は使用済みの注射器を大事そうに仕舞って、その黒い機体の装着位置に座った。
すると、黒い機体はまるで意識があるように、勝手に男の体を包んでいく。
今から彼らはその所属不明のISと戦う。だがPTのみの部隊ではさすがに厳しい。
圧倒的な物量差がある場合を除けば、ISと互角に戦えるのはあくまでISのみ。
「ゲシュペンストMK-II、コンディション・オールグリーン、起動完了」
数秒の時間で男は愛機の起動シーケンスを完了させて、鋼の巨人と化した。
ほぼ全身を覆う黒い装甲は外見的に部下たちのPTとほぼ同じだが、彼の機体だけが違う雰囲気を放っている。バレルのやや長い銃を持ち上げて、彼は振り返って部下たちを一通り見回った後、指を振って指示を出す。
「クライ・ウルブズ、全機発進!」
次回予告
「あなたはもう少しわたくしに優しくすべきです」
「少々予想外ではあるが、まだ想定の範囲内だ」
「逃げろ! セシリア!!」
「恐れることはない。君はそれを誰よりも上手く扱えるはずだ」
作品名:IS バニシングトルーパー α 001 作家名:こもも