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IS  バニシングトルーパー α 001

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 ISコアは天才科学者――篠ノ之束の手によって、全部476個が製造されている。
 それらはIS委員会によって加盟国に配分されることで、各国の抑制力となり、平和的なパワーバランスを実現した。
 これくらいの知識は今では、田舎のお婆ちゃんでも知っていること。
 公式ではISはスポーツであり、平和に慣れた一般民衆にとってワールドカップと大して変わらない。抑制力と言われても、自分の家には飛んでこない。

 だから彼らは無関心になる。
 世の中にはIS受け入れられる国もあることや、経済的に独立できない国のISコアが実質上他国に握られていることに対して。
 そもそも経済システムがほぼ出来上がった今の世界では、戦闘機数十機分の戦力に相当するISが何機か配備されたところで、弱肉強食の構図を変えることなど不可能だ。
 大国間のゼロサムゲーム。戦乱区域に起こっている代理戦争。弾道ミサイルとISが入れ替わっても、世界は何一つ変わらなかった。





 時間は日が沈んだ直後の夜。
 場所は北アフリカに位置する、とある内戦中の国。
 非武装地帯から離れた砂漠が今、当地の政府軍と反政府武装組織が衝突する戦場と化していた。
 火を噴くバルガン砲が咆える音や、90mm滑腔砲弾が空気を切り裂く音。様々な爆音が交わり合い、そこに生じた閃光が砂漠を駆ける戦士達の姿を照らす。

 それは、鋼鉄巨人の群れだった。
 平均高度3.5メートル、重量は8000kg程度、搭載人数一人。
 八年前から現れたISという最強の機動兵器の技術を応用して開発した強化外骨格「PT(パーソナルトルーパー)」である。
 そのコンセプトは、「戦車より効率の良い陸戦兵器」。
 量子収納機能やエネルギーバリアなどを備えたISと比べて、制限されたサイズの中に必要の部品をすべて詰め込まねばならないPTの性能は貧弱である。
 絶対に勝てないとは言わないが、対等に戦えるのはとても難しく、そもそもISはアラスカ条約により直接の戦争投入を禁止されているため、普通に考えれば直接戦う状況にはならない。

 世界に現存する量産型PTがISより劣っている面は、主に三つ。
 一、PTは普通は空中戦できない。
 反重力デバイスの小型化技術はまだ不完全で、その値段もかなりのもの。量産兵器に搭載したらコストパフォーマンスが割り合わない。空中戦と陸戦を両方できるパイロットを養成する費用や整備性の悪化など諸々を考えると、普通に戦闘ヘリと連携した方が安い。
 二、PTは実弾兵器しか扱えない。
 ISはその貴重さ故に、コストを無視して高出力の動力機関を搭載するが多く、また新兵器の実験台である側面もあるため、高出力のビーム武装も珍しくない。しかし動力電池で動くPTにそんな余裕はない。故にPTの武器は大体安定性が高くて、エネルギー消耗の低い実弾タイプ。
 三、PTにシールドバリアはない。
 ISはパイロットを守るために常に不可視のエネルギーバリアを張っているが、PTにそれはない。防御力はあくまで装甲の厚さで決まる。そのため、装着状態のPTは基本的に中のパイロットを視認できない。
 なお、以上の三つは、あくまで普通の量産型に限った話。

 しかしながら、その優れた生産性、整備性、戦闘力、そして何より男でも問題なく使える機械としての完成度。PTの完成により、今では戦車の大半は廃棄されることになり、代わりにPTが陸戦の主力となりつつあった。
 現に今、政府軍と反政府武装組織が各自に保有したPT部隊はこの砂漠の戦場で、壮絶な戦いを繰り広げている。
 この国にISはない。先祖から代々伝わってきた教えはそれを許さないし、研究や製造する余裕もない。
 けれどISの技術から生まれたPTや、戦いを維持するための弾薬や医療品などを、彼らは安い価額で購入することが出来た。
 機動力を活かして、バルガン砲やアサルトライフルで標的を掃射する反政府武装組織が投入した軽量型PT「蝙蝠(ベィンフウ)」に、90mm滑腔砲とヘビーマシンガンを轟かせる政府軍主力の重装型PT「カクタス」。

 上半身ごと砲弾に吹き飛ばされたPTの残骸を遮蔽体にして距離を詰め、敵をナックルガードで殴り倒して、爆雷一枚を置いて去っていく。
 蜂の巣にされた友軍から予備のマガジンを拾って、それを装着する前に飛んでくる砲弾がエンジン部に直撃して、脱出する間もなく炎に飲まれる。
 平和に慣れた人間から見れば地獄絵図だろうけど、ここでは一週に最低一回は起きることだ。むしろPTの投入により、戦いそのものが派手に見えるものの、人員の死傷が以前より大分減っている。
 まさに高効率化された、現代的な戦場である。

 「うわっ見ろよヒューゴ。あのパイロット、まだガキじゃねえか。お気の毒に」
 「この国じゃ、子供が八歳から銃を、十歳になったらPTも普通に扱えるって話だからな」
 戦闘中区域から遠く離れた村だった廃墟の中には、人間が言葉を交わす声が聞こえた。
 日が完全に沈んだ今、その薄暗くい闇の中に何が潜んでいるのかは分からないが、会話の声からして、少なくとも二人の若い成人男性がいるはず。
 そしてここから戦場までの距離を鑑みると、少なくとも彼らは肉眼で戦いを観測しているわけでは無さそうだ。

 「……互いに理があると分かっていても、自分の正義を捨て去らない限り互いを容認できない。だからどっちかが力に屈するまで愚行を繰り返す。残念だが、部外者の我々が干渉すべきことではない」
 会話に割り込んだ三人目の声は、先の二人よりずっと年長に聞こえる男の低い声だった。

 「……無駄話はここまでだ。我々の本来の任務を忘れるな」
 「はい! 申し訳ありませんでした」
 「はいはい、分かってますよ。……っと、現れやがった!」
 若い男の慌しい言葉と同時に、遠くにある戦場には、新たな機影が舞い降りた。

 青と白のツートンカラーをした、戦闘中のPTとは全然違う雰囲気を放つ機体だった。
 上空からいきなり砂漠の地面に降下してきて、そのツインアイタイプのセンサーを光らせながら、砂塵の中で動かずに佇んだ。
 その存在に気付いた交戦中の双方は一瞬動きが止まった後、厳重に警戒しながら戦闘を続行しょうとするが、その前所属不明の機体が動き出した。

 カチャと、その肩部に取り付いていた六つの羽根状パーツが分離して、交戦中のPT達へ飛んでいく。
 展開した先端部分から、眩しい光線が飛び出す。
 あれはPTの装甲を容易く貫ける、高熱のビームだった。
 六つの砲口が一斉射撃して、光の網を織り出す。その射線上にいるPTはことごとく装甲を貫通され、爆散していく。
 その間に、所属不明機は光の散弾をばら撒くライフルで近くにいるPTを撃破していく。そしてPTから発射された弾丸は所属不明機に届く前に、見えない壁のような“何か”に当たって弾かれてしまう。

 これではっきりと分かった。
 この機体はPTではなく、ISだ。
 なぜ戦争への投入を禁じられたISがここにあるのは分からんが、現実を事実を受け止めなけねばならない。